「辻ちゃん」
ボーダー本部の廊下。今日は防衛任務もなく適当に個人戦をしようとラウンジへ向かっている時、後ろから耳慣れた声が聞こえた。
「……犬飼先輩。どうしましたか」
**ここからAI**
「いやあ、ちょっと辻ちゃんと話したくてさ」
「そうですか……」
相変わらず何を考えているのか分からない笑みを浮かべている。
この人は苦手だ。何か裏があるような気がしてならない。
しかしそんなことより、俺は今、猛烈に眠かった。
昨日は深夜までランク戦をしていたし、そのあとも課題をして寝たのは午前2時過ぎだった。
いつもならまだ起きている時間だが、今は少しでも眠りたい気分なのだ。
「すみません、俺これから用事があるんで失礼しますね」
「えー!つれないなあ。ちょっとだけ付き合ってよ」
「…………まあいいですけど」
仕方なくついていくと、そこには見覚えのある顔があった。
「あれ?二宮さん?」
「ん?ああ、辻か」
そこにいたのは二宮隊の隊長である二宮匡貴だった。
「珍しいですね、こんなところで会うなんて」
「お前こそ」
「俺は犬飼先輩に連行されました」
「なるほど。そういう事か」
二宮さんは納得したようにうなずいた。
「あの、なんでここに?」
「鳩原について話があってな」
「!」
鳩原、という言葉を聞いて思わず身構える。
まさか、また何かやったのか!?
「別に何もしていないぞ。ただ少し気になることがあってな」
「……そうなんですか」
なんだ、驚かせないで欲しい。
「それで、二宮さんは何を話しに来たんですか?」
「辻、お前は鳩原のことをどう思っているんだ?」
いきなり核心を突かれて動揺する。
「それはどういう意味ですかね」
「そのままの意味だ。鳩原はボーダーを辞めたがっていただろう。それなのに何故あいつを引き留めたんだ?」
「引き留めてなんかいませんよ。ただ辞めないでくれって言っただけです」
「ほう、それだけか?」
「はい、それだけですよ」
「ふむ、そうか」
二宮さんは考え込む仕草をした。
「じゃあ質問を変えよう。どうして鳩原は辞めなかったと思う?」
「分かりませんよ、そんなの」
「分からなくてもいいから考えてみろ」
「………………」
なぜ鳩原が辞めなかったのか。
そもそも、なぜ彼女は辞めたがっていたのか。
確かに彼女の行動には不可解な点が多かった。
彼女が近界民だと分かった時は驚いたし、あんなことをしていた理由を知りたいとも思った。でもそれが何だというのだ。彼女だって人間だし、俺たちと同じように生きていて、同じように生活していて、そして同じように考えているはずだ。
「…………分かりませんね」
「本当に分からないのか?」
「はい」
正直に答えると、二宮さんは少し意外そうな顔をした。
「辻にしては随分と弱気じゃないか」
「弱気になんかなっていませんよ」
「ではこうしよう。もし辻が答えを見つけられなかったら、俺が鳩原をクビにする」
「なっ……」
「それが嫌なら精々頑張ることだな」
それだけ言い残して、二宮さんは去っていった。
「くそっ、なんなんだ一体」
二宮さんの後ろ姿を睨みつける。
二宮さんが何を考えているのか全く理解できない。
「辻ちゃん、二宮さんと話してるみたいだけど大丈夫?何か言われた?」
「いえ、別に。それより早く行きましょう」
「うん」
犬飼先輩に促され、歩き出す。……結局、答えを見つけることはできなかった。
***
それから数日たったある日のこと。
「辻くん、ちょっといいかな」
突然話しかけてきたのは城戸司令だった。
「はい」
緊張しながら返事をする。「君に頼みたいことがあるのだが、頼めるだろうか」
「はい、なんでしょうか」
「実はある人物の護衛をしてもらいたいと思っている」
「護衛ですか」
「そうだ。その人物は今遠征部隊に所属している。そのため、常に危険に晒されていると言っても過言ではない」「なるほど」
「そこで辻くんにはその人物を護衛してほしい」
「分かりました」
「引き受けてくれるか」
「もちろんです」
「助かるよ。詳細は後ほど連絡する」
「了解しました」
こうして俺はその人物の護衛をすることになった。
しかしこの時の俺は知る由もなかった。
その人物が俺の幼馴染であり、ボーダーを辞めたがっていたこと。
そして俺と彼女が再会するのは、もう少し先の話である。
辻新之助 幼馴染が行方不明になり、ボーダーに入隊した。
幼馴染を探すためにボーダーに入隊し、A級を目指す。
辻と鳩原は幼なじみであるが、辻が一方的に鳩原のことを好きである。
辻は鳩原に対して恋愛感情を抱いているが、鳩原は辻の好意に気づいていない。
鳩原未来(17)
近界民の密航者だったがボーダーに保護された。
辻とは幼なじみ。辻のことは好きだが、辻の気持ちには気づいていない。
二宮匡貴(21)
鳩原をクビにした人。鳩原は嫌いだが、辻と鳩原の関係が気になっている。
【番外編】鳩原未来の失踪
「…………え?」
「だから、鳩原さんは近界民と接触して、そのまま向こう側に行っちゃったって言ってるんだよ」
「そんな、馬鹿な」
俺は目の前にいる二宮隊のオペレーターである氷見亜季の言葉が信じられなかった。
「……ありえない」
鳩原さんは、あの日、確かに、俺と一緒にいたんだ。
一緒に本部に行って、訓練をして、そして別れたんだ。
「ありえないって、辻くんがそう言ったんじゃない」
「でも、だって、鳩原さんは俺の隣にいたんだ!それなのに、どうして…………」
「辻くん落ち着いて!」
**この先、辻クンの解釈がブレてきたのでここまで**
途中で急に登場人物紹介と番外編が始まった上に🦕🕊バイアスと二宮サンへの風当たりめちゃくちゃ強くて草です 犬飼サンもハブられてるねごめん(というかそもそも私が書いた時点ではぬつじの2人しか出してないのよ)