そびえ立つ六本木のタワーマンション最上階。数々のトラップ、もといセキュリティを抜けて辿り着いた先。軽快なチャイムの音が鳴り響いた後、ドアの隙間から顔を覗かせたのは灰谷竜胆だった。
「誰?」
「三ツ谷だけど。オマエの兄に呼ばれた」
「・・・・・・うわぁ三ツ谷って、マジであの三ツ谷かよ」
重厚なドアに腕を組んで気だるげに寄りかかった竜胆は、「オマエさ、気ぃ長いほう?」三ツ谷にそう問うた。気が長いほうか、否か。質問の意図を図り兼ねて顔を顰める。
「百はくだらねぇかな」突然、竜胆は言った。
「は?」
「兄貴に耐えられずに逃げ出した奴」
絶句する三ツ谷に、竜胆は「ちなみに、兄貴が耐えられずに追い出した奴も百はくだらねぇ」とにんまり口角を上げた。まさにあの兄にして、この弟あり。
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