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    Hana_Sakuhin_

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    Hana_Sakuhin_

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    蘭みつ。お蔵入り作品の続きですが、相変わらず未完結です。ご注意ください!
    「兄ちゃんが男連れてくんの初めてじゃね」

    #蘭みつ
    ranmitu

    そびえ立つ六本木のタワーマンション最上階。数々のトラップ、もといセキュリティを抜けて辿り着いた先。軽快なチャイムの音が鳴り響いた後、ドアの隙間から顔を覗かせたのは灰谷竜胆だった。

    「誰?」
    「三ツ谷だけど。オマエの兄に呼ばれた」
    「・・・・・・うわぁ三ツ谷って、マジであの三ツ谷かよ」

    重厚なドアに腕を組んで気だるげに寄りかかった竜胆は、「オマエさ、気ぃ長いほう?」三ツ谷にそう問うた。気が長いほうか、否か。質問の意図を図り兼ねて顔を顰める。

    「百はくだらねぇかな」突然、竜胆は言った。
    「は?」
    「兄貴に耐えられずに逃げ出した奴」

    絶句する三ツ谷に、竜胆は「ちなみに、兄貴が耐えられずに追い出した奴も百はくだらねぇ」とにんまり口角を上げた。まさにあの兄にして、この弟あり。

    「で、どうする?」

    この話を聞いてなお、それでも入るか、と。

    三ツ谷は一歩、迷いなく足を踏み入れた。容赦ない夏の日差しで火照った身体は、流れてくるきんっとした空気によって一瞬にして冷えてく。竜胆はどことなく呆れたように笑った。

    「ま、オレ的にも三ツ谷に帰られっと困るけど」
    「ここまで来て帰れっかよ」
    「その調子でよろ」

    言うと竜胆はひらりと手を振り、玄関から出て行った。取り残された三ツ谷はひとり、一面ガラス張りの窓に広がる六本木のビル群を見下ろして立ち尽くしていた。



    突然リビング横のドアから姿を現した蘭は、上下グレーのスウェットに身を包んでいた。ふわぁと大袈裟なほど欠伸を零すと、三ツ谷を認めて目を瞬いた。

    「あれ、三ツ谷じゃん」
    「呼び出したのテメェだろ」

    三ツ谷が言うと、にんまり。蘭は先程の竜胆そっくりに口角を上げた。やはりあの弟にして、この兄ありだ。

    「ふぅん。三ツ谷はオレに呼び出されて、ノコノコここまで来ちゃったワケね」
    「はあ?」
    「テキトーに過ごしてて」

    言うと蘭は、そばのドアを開けて姿を消した。すぐにシャワーの音が聞こえてくる。三ツ谷は肩を落として溜め息をつく。前途多難だ。

    とはいえ、背に腹は――お金は変えられぬ。うっし、やるか。三ツ谷はぐっと拳を握る。料理、洗濯、掃除。どれから取りかかるべきか。壁にかかった、やけにオシャレな時計は午後二時。

    「よし、掃除すっか」
    「そんなのいーから」

    拭いていない髪から水滴を垂らしながら、腰にバスタオルを巻いただけの蘭はリビングへとやって来た。三ツ谷は一瞬、その半身に走る禍々しいほどの刺青に目を奪われる。

    ぽたり、真白いフローリングに水たまりができる。三ツ谷はハッと意識を戻して、「おい、髪。乾かせよ」と眉間に皺を寄せた。

    「えー、じゃあ三ツ谷が乾かしてよ」
    「・・・・・・自分でやれ」
    「オレ雇い主なんだけど」

    うぐっと言葉に詰まった時点で三ツ谷の負けだ。はいはいと手を引かれて、ふわふわのカーペットに座った蘭の後ろ、ふかふかのソファーに座らされる。

    渡されたマイナスイオンだが何だかが発生する高級なドライヤー。妹にするように、胸元まである長い髪を乾かしていく。黒と金の混じったそれは意外にもさらさらと指が通る。不思議な感覚がぐるぐると胸を渦巻く。

    「おい、乾いた」

    すると、蘭はぽすりと頭をソファーに預けた。逆さまのその顔は穏やかな微笑みを浮かべており、三ツ谷がなんとなく唇を尖らすと、藤色の瞳を甘く溶かした。

    「じゃ、三つ編みもしてよ。三ツ谷」

    何故か、嫌だなんて言えなかった。
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    Hana_Sakuhin_

    MOURNING『昨夜未明、東京都のとあるアパートで男性の遺体が見つかりました。男性は数日前から連絡がつかないと家族から届けが出されておりました。また、部屋のクローゼットからは複数の女性を盗撮した写真が見つかり、そばにあった遺書にはそれらを悔やむような内容が書かれていたといいます。状況から警察は自殺の可能性が高いと――「三ツ谷ぁ。今日の晩飯、焼肉にしよーぜ。蘭ちゃんが奢ってやるよ」
    死人に口なしどうしてこうなった。なんて、記憶を辿ってみようとしても、果たしてどこまで遡れば良いのか。

    三ツ谷はフライパンの上で油と踊るウインナーをそつなく皿に移しながら、ちらりと視線をダイニングに向ける。そこに広がる光景に、思わずうーんと唸ってしまって慌てて誤魔化すように欠伸を零す。

    「まだねみぃの?」

    朝の光が燦々と降りそそぐ室内で、机に頬杖をついた男はくすりと笑った。藤色の淡い瞳が美しく煌めく。ほんのちょっと揶揄うように細められた目は、ふとしたら勘違いしてしまいそうになるくらい優しい。

    「寝らんなかったか?」

    返事をしなかったからだろう、男はおもむろに首を傾げた。まだセットされていない髪がひとふさ、さらりと額に落ちる。つくづく朝が似合わないヤツ、なんて思いながら三ツ谷は首を横に振った。
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