パニシキがAURORAのコンサートへ行った話目を奪われるとは、まさにこの事だった。
深く深く沈むような歌声に、眩く変わりゆく光景に、ただただ呑み込まれていく。
「素晴らしい」とか「美しい」なんて言葉では言い表せない、経験した事の無い輝きに息が詰まった。
一曲、一曲とコンサートが進み、ふと、その手の温もりに気付いたのは、終わりに近付いた時だった
意識が浮上し、周りはステージの中央に立つ彼女ヘ向かって手を振り、思い思いの言葉を叫んでいる。
そんな大歓声の中で、無意識に握りしめていた手が視界に入った。
徐々に視線を上げれば、眩しいものを見るように細められた彼の瞳と目が合う。
声は出せない、歓声すらも
代わりに、少し笑った彼が手を引き、そのまま身体は宙へと舞った。
ーーTill queendom come
星の子達の鮮やかなケープと光が散る
踊っているのか、飛んでいるのか
はたまた何かに流されているだけなのか
そんなのはどうでも良かった
ただただ、固く強く繋がれた手がここにあって、素晴らしい歌声と素晴らしい景色がそこにある。
光と声に身を任せながら、ぐっと手に力を込めて身を寄せる。
驚いた顔がこちらを向いた
「好きです、パニカさん」
ーーTill queendom come
my queendom come‼︎
多分、この日の景色は一生忘れないだろう
そう思うと、熱くなった目から溢れる涙さえも愛おしかった。