なぜ、吉郎だったのか「「シキって、パニカさんが初めて付き合う相手なんだって」」
心地良い風が吹き暖かい日差しが眠気を誘う午後の草原
芝生の上に寝転んだコウとソウが何気なく呟いた。
「そ、そそうなのか」
唐突に告げられた言葉に「お前達は?」という疑問をギリギリで喉奥へと押し込み相槌を打つ。
そういえば、コウとソウに過去に恋星が居る可能性について考えた事は無かった。自惚れでは無く、彼等が自分以外の誰かに思慕の念を抱く姿が想像できない程、彼等は惜しみ無く愛情を俺にぶつけてくれていた。
「シキが誰かと付き合うのなんて想像出来なかったよねぇ」
「押しに負けて恋星が居た事はあったけどねぇ、その後ビンタされて別れてたけど」
ごろごろと身を捩りながら、クスクスと笑い混じりに話し続ける声を聞きながら心臓がうるさい程に鳴った。
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