こぼれるハート「あの、キバナさん」
「んー? なぁにユウリ」
「好きです」
一生懸命見上げながら、そう言い始めたのは15歳の頃だろうか。
キバナさんはしゃがみ込みながら困ったようにはにかんで、『ありがと。でもごめんなぁ、オレさまユウリが大事なんだけど、その気持ちには応えられんのよ』 と眉を下げて笑い、私を抱きしめた。「わかって、な?」 と言葉を添えて。
「……はい」と私は声を絞り出して、その後はとぼとぼと家に歩いて帰った気がする。
最初から上手くいくだなんて思ってなかったし、勇気を出して伝えたことに悔いは無い。でも本当は怖かった。これからのキバナさんとの関係が変わってしまうことが。
(やだなぁ)
けれどその予想に反して、それからもキバナさんは出会う度に私のことを撫でて、「ユウリは可愛いな~」 と大好きな声で甘やかしてくれ続けた。
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