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    七海紗綾

    @minana0730

    とっくの昔に成人済。
    何十年かぶりにお絵描きとか物書きしています。
    どちらも今でも勉強中。

    この世界に私を呼び戻した戻したツイステすごい。(何目線?)

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    七海紗綾

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    ※ラギ監、NRC時代
    ※04のユウ(監督生)視点+α

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    ##ツイステ
    ##ラギ監

    一緒にお風呂に入りたいラギ監シリーズ05お昼休みも半分過ぎたころ。
    私はいつもの木陰へと足を運ぶ。
    待ち合わせ、というわけではないのだけど…。
    ここに来ると、彼女に会える。

    チリン…

    鈴の音とともに、茂みが揺れて。
    そこから現れたのは、一匹の真っ白な猫。

    『こんにちは、ユウさん。』

    猫の言葉で話しかけてくる、彼女。
    私の動物言語学の第二の師匠でもあり…恋の相談役でもある。

    『こんにちは、リリィさん。』

    NRCは男子校なので、彼女は貴重な女子トーク相手だ。
    始めはなんてことない雑談だったと思う。
    それがいつの頃からか、恋愛相談に変わっていって。

    『ふふっ、あなたの好きな人って…いつもドーナツを渡している彼、かしら?』
    『えっ?!あ…は、はい…。」

    私の好きな人というのは…ラギー先輩だ。
    壊滅的だった私の動物言語に呆れつつも、優しくていねいに根気強く教えてくれて、今ではこうやってリリィさんや他の猫とも話せるレベルになった。
    とはいえ、このリリィさんとは、まだたどたどしく話すことしかできなかった頃からの付き合いだけれども。



    私はこの世界の人間ではない。
    魔力もないから、魔法も使えない。
    この世界の常識も分からず、右も左も分からない…。

    NRCの勉強なんて、始めはひとつも分からなかった。
    それでも何とかついていくために、まずは教科書が読めるように文字を覚えて…。
    やっと読めるようになった頃、再び壁にぶち当たった。

    動物言語学なんて…さっぱり分からない…。

    新たな言語の登場に、私は絶望していた。
    そんな時だった。

    「オレで良ければ、特別友情価格で教えてあげてもいいッスよ。」

    天の助けかと思った。
    いや、気になることはいっぱいあって。
    特別友情価格って何?いくら?とか。
    この…ラギーって人は、連続傷害事件の犯人じゃなかったか?とか。
    でも教えてくれるという、その申し出が嬉しくて。
    お願いします!と勢いよく頭を下げていた。

    ラギー先輩の教え方はすごく分かりやすい。
    それに何度失敗したり間違えたりしても、ちゃんと分かるまで教えてくれる。
    時おり、ラギー先輩のユニーク魔法を交えながら、口の動きはこうとか、舌の位置はこことか、ていねいに教えてくれて。
    すごい…あの悪事に使われた魔法と同じとは思えない。
    …なんて言ったら失礼かなと思って、自分の心の中だけに留めている。
    でも、なんだかラギー先輩の魔法はきれいで…あったかくて、まるで。

    「ラギー先輩は優しいですね。」

    ラギー先輩そのものだって思った。
    だって、ラギー先輩にとっては私が動物言語学が出来ようが出来まいが、何の利益もないのに、見放すことなく教えてくれる。
    小さい頃から近所の子どもたちの面倒を見ていた、と言っていたけど。
    いい子いい子、と頭をなでられることもあったし。
    その時に見せてくれる笑顔がすごく優しくて。

    それに特別友情価格って言いながら、一度もお金なんてとられなかった。
    私に持ち合わせがなかっただけ、とも言えるけれど…。
    渡そうとしても、いつものらりくらりとかわされてしまうのだ。

    そんなラギー先輩にせめて何かお礼をしたいなと思って。
    ジャックからラギー先輩の好物だと聞いたドーナツを作ることにした。

    どんな味が好きかは分からなかったし…口に合うかも分からなかったから…シンプルに砂糖をまぶしただけのものを作って袋につめて…。

    「あの…いつも教えていただいているお礼に、ドーナツ、作ってきました。」

    私の料理の腕は、人並みだと思う。
    だから、自信があるとも言えない。
    でも、気持ちはたっぷり込めたつもりだ。
    とはいえ…なんだか緊張して、ちょっとだけ袋を持つ手が震えていたと思う。

    「良かったら…どうぞ!」
    「…ありがと。」

    ラギー先輩はぴるぴるっと耳を動かすと、お礼を言って受け取ってくれた。
    まずは受け取ってくれたことにほっとする。
    その時にちらっと見えたしっぽが揺れていて、嫌いなものではなかったと安心した。
    ラギー先輩はそのまま1つ取り出して口にする。

    「うまっ…!!」
    「!!良かった…!」

    効果音をつけるなら、ぱぁああっ!と表情が明るくなって。
    なんだかお花もとんでいるような…幸せそうな顔をして。
    そのままラギー先輩は次から次へとドーナツを食べていく。
    多めに作ったし誰も横取りなんてしないのに、ほっぺたいっぱいにほおばって食べてくれて。

    かわいい…。

    今までお兄さんな面ばかり見てきたけど…今のラギー先輩は何だかちっちゃい子みたいで、かわいくて。
    口をもぐもぐさせながら「何スか?」って聞いてくるラギー先輩に

    「そんなに勢いよく食べていただけるなんて…作った甲斐があります。」

    なんて思わず笑みがこぼれて…胸がきゅっとなった。
    この時にはもう、ラギー先輩のことが好きになっていたと思う。
    優しくて、面倒見がよくて…かわいいなんて、ずるい。


    それからもラギー先輩は勉強を教えてくれて。
    私はお礼にドーナツを作っていく。
    お礼…は実は半分で、もう半分はかわいいラギー先輩が見たいから、というのは内緒だ。


    ある日、図書館で調べ物をしていた時、ふと目に入ったのが。

    「ハイエナはネコ科の動物…。」

    ラギー先輩はハイエナの獣人。
    あの大きなお耳がとってもかわいい。
    しっぽだって、短めだけどたまに揺れているのが見えて…これもかわいい。
    ネコ科ということは…故郷とかでは猫の言葉を話すのかな?

    「ラギー先輩、猫の言葉を教えてください!」
    「…?何で?」

    いつもの木陰。
    一休みしたところで、私は思い切ってラギー先輩にお願いしてみた。
    ラギー先輩は少し考えると、理由をきいてきて…。
    し、しまった。理由…なんて…。

    「あっ、あの…よくここに猫が来るんで…えっと、話せたら、いいなぁって…。それに…。」
    「それに?」

    先輩にもっと近づきたいから…。
    なんて、言えない…。

    「…っ!な、何でもない…です。」

    危ない…。もう少しで、言ってしまいそうだった。
    ラギー先輩のことが、大好きだって。




    『ねぇ、ユウさん。どうしてその彼には、気持ちを伝えないの?』

    ラギー先輩との思い出にひたっていると、リリィさんに尋ねられる。
    リリィさんが首をかしげるとチリンっと胸元にある鈴がなる。
    私はラギー先輩のことが好き。
    でも、気持ちを伝えることはしない。その理由は…。

    『私は…この世界の人間じゃないから。』

    そう。私はある日、突然ここへ、偶然たどり着いただけ。
    いつまでここにいられるかなんて分からない。
    そんな、不安定な存在だから。

    『本当は伝えたいけど…私はいつかいなくなるかもしれない。』

    もしかしたら明日…ううん、今日この後、元の世界に帰ってしまうかもしれない。
    そうなれば、もうラギー先輩には会えなくなってしまう。

    『そうなったら…辛いから…。だから、この気持ちはしまっておくの。』

    気持ちを伝えて、結ばれなかったとしたら。
    それなら、自分が傷つくだけで済む。
    でも…もし結ばれたとしたら?
    その後、突然元の世界に戻ってしまったら?
    私は元の世界でラギー先輩のことを思い出して、毎日毎日泣いてしまう。
    それに、ラギー先輩は優しいからきっと…。
    想像しただけで、じんわりと目頭が熱くなる。
    だから、この気持ちは伝えずにいよう、そう決めた。

    『でもね。彼のことを思うだけで…すごく、幸せな気持ちになれるの。』

    もし元の世界に戻ることになった時、ひとつだけ持ち帰れるものがあるとするならば。
    私は、迷わずこの気持ちを、感情を持ち帰りたいと思う。
    あったかくて、ふわふわして…なんだか強くなれるような気がするから。

    『それに、少しでも伝えちゃったら、あふれちゃいそうだから。』

    自分が今、どんな表情をしているのか分からないけど。
    うまく笑えてはいない気がする…。
    でもリリィさんはそんな私ににっこりと優しく笑いかけて、にゃーお、と鳴いた。

    『そんなに彼のことが大好きなら…がんばって、伝えて。』
    『ふふっ、だから…』

    チリンっという音を立てて立ち上がると、リリィさんは急に去っていった。
    あ、あれ?もう時間、かな?なんて思っていると、後ろから声をかけられる。

    「ユウくん。」
    「えっ…?」

    振り向くと同時に抱きしめられた。
    誰に、なんて分かりきっている。
    …好きな人の声を、聞き間違えるはずなんてない。

    「ラギー…先輩…。」

    いつからここに?とか。
    いつもならもう少し後で来るはず?とか。
    今の話、聞いてた?…とか。
    いろんな疑問が湧いてきて、何から聞けばいいのか分からなくて。

    混乱している私に追いうちをかけるように、ラギー先輩は目線をあわせて言う。

    「オレ、ユウくんのこと…好き。」
    「??!」

    言われたことがよく分からなくて、信じられなくて。
    何も言葉が出てこなくて、ただただ何度もまばたきをしてしまう。
    その間も、ラギー先輩は視線をそらすことはなくて。
    あぁ…なんて吸い込まれそうなほどキレイな青い色なんだろう…なんて違うことを考えてしまう。
    すると、ラギー先輩はにこっと笑ってもう一度言う。

    「ユウくん、だぁーい好きッスよ。」

    もしかして私は今、夢を見ているんだろうか…。
    そんなことをぼんやりと考えていると、ラギー先輩にもう一度、さっきよりも強く抱きしめられた。
    胸がきゅっとしめつけられて、とくんとくんっと鼓動が速くなっていく。

    「ね、ユウくんの気持ち、聞かせて?」

    私の大好きな、優しくてあったかい声で名前を呼ばれる。
    じわりじわりと視界がにじんでいって。
    いろんな感情があふれて、止まらなくなる。

    「わ…私っ、も…ラギー先輩のことが…好き…。」

    涙が…好きって気持ちが、次から次へとあふれて止まらない。
    嬉しい…。でも…。

    「…大好きっ…なのに、私っ…この世界の、人間じゃ、ないし…。いなくなっちゃう、かもしれない、から…。」

    だめ…。

    ちゃんと言葉になっていただろうか。
    いつの間にかラギー先輩の服をぎゅっとつかんでいて。
    離して欲しい気持ちと、離れたくない気持ちがぶつかって、よく分からなくて。
    そんな私の頭をラギー先輩はぽんぽんっとあやすようになで、苦しいくらいにぎゅーっと抱きしめられる。

    「勝手にはいなくならないで欲しいけど…。」

    ラギー先輩はそっとつぶやくと、体を離す。
    反射的に上を向けば、そのままこつんっと額を合わせられた。
    目元を指先でなぞられれば、少し視界が鮮明になって。
    そこにあったのは、今まで見た中で一番優しくて、一番甘い目線。

    「もしそうなったとしても、必ず見つけだすッスよ。」

    …もう逃げられない、と直感的に思った。
    捕まってしまった、と。

    「それに、オレはユウくんを好きになったんス。ユウくんがどこの世界の人間でも、大好きッスよ。」

    一度止まった涙がまたぽろぽろとこぼれ出し、ひどい顔をしている自分を見られたくなくて、ぐっと体を押して離れる。
    両手で顔を覆って涙をぬぐっても全然追いつかない。
    どうしよう…すごく、すごく嬉しい。
    なのに、私の口からは最後の抵抗とばかりに正反対の言葉が出てくる。

    「私…ラギー先輩が思ってるほど…いい子じゃないですよ…。」
    「ユウくんが悪い子なら、みーんな悪い子ッスね。」
    「私っ…かわいくも、ないし…。」
    「ユウくんはかわいい。」
    「っ!わっ、ワガママだし…。」
    「…それは大歓迎。たくさんワガママ言って。」

    だめ…何を言ってもすぐに捕まってしまう。
    優しい笑顔に、優しい声に、甘く捕らわれて。
    胸のあたりがきゅうっとなる。

    「っ…泣き虫だし。」
    「シシシッ、それは今分かったッス。」
    「そっ…それに…」
    「ユウくん。」

    そっと制止するように、ラギー先輩に名前を呼ばれる。
    見つめると、少し困ったように笑って。

    「ユウくんこそ。オレみたいな…ハイエナが彼氏で本当にいいんスか?」

    どういう意味なのか、最初は分からなかったけど。

    ーお前は、ゴミ溜め育ちのハイエナで。

    レオナ先輩がオーバーブロットした時のことを思い出す。
    ハイエナだから、なんて…考えたこともなかった。
    それに…私が好きなのは。

    「私は…ラギー先輩を好きになったんですよ。ハイエナでも、ライオンでも、オオカミでも…ウサギだったとしても、ラギー先輩のことが、大好きです。」

    ラギー先輩は目をぱちくりさせて、ウサギは勘弁ッスと言った。
    それからどちらともなく笑いだして。

    「ユウくん…好き。」
    「私も、ラギー先輩のこと大好きです。」

    そっと目を閉じると、ラギー先輩に引き寄せられて唇が重なる。
    初めてのキスはちょっぴり涙の味がした。
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