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    konohako*

    下手でも書きたい!
    完結しなくても書きたい!
    書いたらアップしたい!

    そんな部屋です。

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    konohako*

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    最終話からだいぶ前に考えていた進撃リヴァミカの妄想話。原作の最終話とは違う未来の話で、兵団はそのまま残っています。
    これは長くならないのですぐ完結させたい(出来上がったら久々に支部に移動したい)

    #リヴァミカ
    rivamika
    #進撃の巨人
    theTitansOfProgress
    #ミカサ
    #リヴァイ
    levi.

    繋がれる手(仮)前編空気に混じる砂埃。
    昼夜止まない荷車の音。
    寝る暇があるなら寝られる場所をと、人々が建設や修繕を急いでいる。

    すべてが終わり、リヴァイたちはパラディ島に戻った。
    大陸ほどではないものの、壁にいた巨人どもに踏みつぶされた街は瓦礫だらけ。この光景を想像していたわけでも、していなかったわけでもない。だが、想像していた巨人のいない戦後の爽快感からは程遠かった。

    馬車で中央へ送られ、報告を終えるとリヴァイはすぐに三兵団直属の病院送りとなった。調査兵団の医務室でどうこう出来るレベルではない―――当然だが。それから二月ふたつき、容体が安定すると、ようやく調査兵団の医務室へ移された。


    ―――そして今、ベッドに括りつけになっているのはミカサの方だった。



    「ミカサ、入るぞ」
    「へ...ちょ......ぅ」
    覇気のない声。だが、会話を望んでいないわけではなく、何とか声を絞り出そうとしている。

    最初にこの個室を宛がわれたのはリヴァイだ。中央から移っても万全に回復するのには更に二月かかった。そんなリヴァイとほぼ入れ違いでこの医務室の主となったのは、まさかのミカサ。

    久しぶりに見た部下は別人のようで、初めミカサと認識できなかった。
    艶がなく不揃いに伸びた髪、痩せこけた頬、色のない唇に、痩せてぶかぶかの服。二人の医務官になかば引きずられるかたちで連れられて来た。

    『・・・お前、まさか、ミカサか?』

    そう問いかけても返事はなく、その目は虚ろで俺だと分かっていない。




    すべてを自身の手で終わらせたミカサ。
    自分の心にケリを付け納得したその表情は愛に満ちていた。どれほどエレンを愛していたのか、本当の愛を知らない奴らでも理解した。道中、不憫な奴だと思わざるを得なかったが、ミカサはしっかりと自分の足で立ちここに戻ってきた。
    だが中央への報告後、そんなミカサの正気はどんどん失われていく。

    医務官の話によると、調査兵団の存続か解散かで議論がなされる中、ひとり調査兵団の残務処理をしていたミカサは、ひとりという哀しみから日に日に窶れていったという。異変に気付いた他の兵士が医務官に相談し、診察と薬剤の投与をしていたが、心の病とは厄介なもので、ミカサは望んだように回復せず、食欲も失い、現在に至るという。
    今では痩せ細り、ベッドに横たわって過ごす日々。
    生き残ったは生き残ったが、部下をそんな状況にさせた自分の不甲斐なさにチッと舌打ちがでる。

    「いい、無理するな」
    「...みま、せ...」
    ベッド横にある椅子に腰を下ろし、ミカサに顔を向ける。申し訳なさそうな目をしているものの、その表情は動かない。表情筋を動かす事さえ今のミカサには難しいらしい。


    罪滅ぼしという訳ではないが、近い存在であったミカサを案じるのは当然のことで、兵務後、ミカサを見舞ってから私室に戻らなければ落ち着けなくなっていた。
    そして俺のその行動は無駄ではなかった。長期の療養と、エレンたちを知る者との会話がミカサには何よりの栄養になったようだ。
    遠慮なく誰かと話が出来るのが嬉しいのだろう。体は動かせないが、俺が来れば目を向け、声を絞り出そうとする。
    「どうだ、気分は」
    「昨日...ぉ、同じで...す」
    「そうか」
    昨日と同じと言うことは良いことだ。悪くなっていなければそれに越したことはない。



    俺には家族がいない。そしてミカサにも家族はいなくなった。
    エルヴィンも、ハンジもいなく、ミカサも同様にエレンもアルミンもいない生活だ。だからなのか、俺はミカサに親近感を持っていた。それは、エルヴィンのようではなく、昔懐かしい、ファーランとイザベルと居た時のような。
    ―――お前の言う「家族」って、こういう存在なのか?
    傷が完全に癒えたら訊いてみたい、知りたいと思う。が、今はまだ早い。

    郷愁の念と、初めて感じる希望。
    新しい人生、新しい兵団員との関係、初めて感じる未知の満ちるような感情。

    ―――それなのに。
    その日、俺はそれをすべて壊すほど疲れていた。



    兵務後、いつものようにミカサの様子を見に医務室に入ったが、会話も出来ず、ミカサの横たわるベッドに腰を下ろし、はぁっと深いため息を漏らした。
    「兵...ちょ?どうし...のですか。...にか、ありましたか?」
    横たわったままでも俺を気遣う。
    そんな気遣いの言葉をかけてくれるのは、もうミカサしかいなかった。
    調査兵団は維持の方向へ向かっている。志願者は多いが、ほとんどが新兵。俺はエルヴィンのように人をまとめる力は長けていない。どうしろって言うんだ、と書類と戦いながらひとり頭を悩ませていた。

    「・・・・・」
    「・・・・・」
    何も考えられず、何の会話もできず、ただ時間が過ぎ、いつの間にか辺りは暗くなっていた。カーテンの引かれていない窓から月明りが覗く。今、何時だ?

    「...長、そのままじゃ、疲れる」
    ふと、声をかけたミカサを振り向く。
    俺は今なぜここにいるのだろう。自室に帰ればいいものを。俺がいつまでもここにいたらミカサが休めないだろうが。
    ―――ミカサ。
    少しは、本当に少しだが肉付いた頬、だが、顔色は悪いまま。相変わらずの痩せた首元。布団の下の体も痩せ細ったままだろう。少しは口から食事が出来るようになったと聞いたが、ベッドから降りることもままならない。

    ―――それでも―――

    月に照らされた青白い顔、伸びた黒髪。俺を呼ぶ声は低音だが、男のそれではない。
    手が自然と伸びる。
    じっと俺の行動を見つめるミカサ。
    まだ痩せている頬に指先が触れる。

    「―――ミカサ、抱いていいか?」

    ほとんど無意識。どこかで俺は何を言ってるんだと思うものの、体は自然とミカサに向かい、発言を撤回しようとも思わない。

    今では懐かしい、昔の世界を知る二人。
    エルヴィンがいた。ハンジが、モブリットが、いた。俺の先鋭部隊、信頼できる部下がいた。
    そこにエレンを始めとする104期生が加わり、壁の世界は大きく動き出した。
    希望が見えた、あの時代―――。
    その結果の現在。
    共有できるのは―――たった、二人。

    横たわる壊れた人形のようなミカサの目が、数ヵ月ぶりに大きく見開かれた。

    その目を見た瞬間、ハッと我に返る。

    「悪い」
    顔を背けその言葉だけで終わらせようとすぐに立ち上がり、ドアへ向かう。
    が、俺のシャツの裾を引く何かが。
    「待っ...て、へ...ちょぅ」
    ミカサの手が動いたことに喜びを感じるべきだが、それ以上の自分の失態にそんなことを思っている場合じゃなかった。
    「悪かった。どうかしてた」
    「・・・・・」
    それでも離さないミカサの指。
    今は、その手に触れることさえ恐ろしい。
    そっと外してやれないなら、力づくで振り切ればいいだけ、なのだが。
    「あ、の...兵長が良ければ......その」
    抱いていいと? 脳ミソに栄養がいって・・・ねぇだろうが、そこは違うだろ。
    「忘れろ。疲れて頭回ってねぇんだ。見逃せ」
    都合のいいことを言っている自覚はある。だが真実だ。今の俺は本当にどうかしている。早くミカサの前を離れなければ、取り返しのつかないことになる。

    それなのに、こいつは。ん、んん、と喉の調子を無理やり整え馬鹿な言葉を返してきた。
    「兵長、私は、今、何も出来ない。調査兵団は、継続されることになった...けど、今の私ではあなたの助けにはならない。あなたひとりに...すべてを負わせてしまっている」
    「そんなこと気にするな。俺の仕事だ」
    「だから、もし、こんな私でも...あなたを癒すことが出来るなら―――」
    「黙れ」

    自分で招いておきながら、信じられないくらい冷酷な声が出た。
    馬鹿は俺だ。
    本能に任せ、誰かを抱こうと考えた。疲れ切った脳が病弱なミカサを女として見ようとした。
    そんな自分自身に呆れると同時に、ミカサに怒りが沸いた。こいつがこんな台詞を吐くとは。
    エレンを愛していたんだろ? 
    お前のその愛は恐いほどの執着に見えたが、最後は澄んだ想いだと思った。底まで透きとおった湖の水面、こんな戦いがなければ波など立たなかっただろう、そんな想い。

    「で、も!」
    「そういうのは、自分の足で立ち上がれるようになってから言え」

    ミカサが悪いわけじゃない。この状況をつくり言わせたのは上官である俺だ。

    それから俺は医務室に足を踏み入れることはなかった。
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