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    konohako*

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    konohako*

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    2025.5.24 『抱擁』設定のその後のリヴァミカ。未満ですが、少し近づいてきた感じの雰囲気です。
    二人の服装は、例の鉄道のコラボのです(現在、あに〇るさんで予約中のやつです)

    ちょっと説明的な部分が多いかなと思いましたが、とりあえず出来たので投稿します!

    #リヴァミカ
    rivamika
    #リヴァイ
    levi.
    #ミカサ

    もとめる ぬくもり「良い風ですね~」
    「・・・・・」

    もとめる ぬくもり

    本日は日曜日、疲れは土曜のうちに取り、早朝にお散歩コースで有名な場所を歩いていた。都会に人工的に作られた木々、芽吹いたばかりで青々とした葉は付けていない。でも急激に暖かくなってきたし、夏を前に生い茂るかもしれない。
    そうして一本一本の木を見ながら歩いていると、目の前に大きめの荷物を持った人の姿が目に入った。
    中学生くらい? 部活にしては私服のようだし、旅にでも出るのだろうか。

    いいな、あのくらいって、時間を気にせず、少ないお金と興味だけで、行きたいところに行ってみようと思えた時期。大人になると、お金も手に入るし、どういう経路で行ったらいいかもすぐ分かる。のに、時間を気にし、贅沢しようと考え、簡単に「ちょっとした旅」に出られない。
    彼に触発された私もは、電車に乗って、どこかに行ってみようかと思い始めていた。
    そんな時、駅に向かうため方向を変えた彼が、私の視線に気づいたようにこちらを向いた。
    帽子を被っていてすぐには気付かなかったが、その人物は。

    「・・・・・ミカサ?」
    「リヴァイ部長?」

    緑色の薄手のコートに濃紺のスリムパンツ。早朝で肌寒いのか、中にはニットを着ていた。
    「どこかに行く…のですか?ずいぶんと荷物が大きいようですが」
    「あぁ。カラネスの方に」
    「カラネス?」
    「そこから巨大樹の森を見てこようと思う」
    巨大樹の森、そこは人の手が入らず、自然がそのまま残っている危険な場所。完全装備でチームを組んでいくべき場所、だからこそ、険しい顔になってしまうのは自然なことで。
    「行くと言っても手前までだ。俺とて一人であそこに突っ込もうとは思わねぇよ」
    「本当ですか?」
    「信用がねえな。明日、サンプルを持って無事出社するのを確認しとけ」
    サンプル、ということは仕事の一環で行くのか。日曜日にさすがというか、なんというか。
    青信号になり、じゃあなと歩み出そうとした部長の袖を咄嗟に掴んでしまっていた。
    「なんだ」
    「・・・なんでしょう」
    なぜ掴んだのか分からない、が、胸がとくんとくんと小さく動いている。
    これは・・・・・・興味だ。自然と口角が上がり、それを抑えようと頬に変な力が入って、おかしな表情かおになっているだろう。
    「部長」
    「ダメだ」
    「何も言っていない」
    「俺は急いでいる」
    「すぐ着替えてきます」
    「置いてくぞ」
    「駅で待っててください」

    「おい!こら!」という声を無視し、来た道をダッシュで引き返す。
    リヴァイ部長は必ず待っている、そういう人だから。
    家に着くなり、散らかるのも気にせず、バッグに服に次々とクローゼットから引き出し、出かける準備をした。



    共に電車に乗っての少しの長旅。普段、なかなかカラネスには行かない。自分がシガンシナ出身だから、どちらかと言えば、トロスト方面に行く方が多い。
    「ミカサ・・・お前な、何しに付いてきた」
    「・・・興味が。駅前で散策しようかと」
    「なんだ、そのガイドブックは」
    「さっき売店で購入しました。スマホを見るより、こういう方がいい。電波の問題もある」
    「つまり、遊びに来たと」
    「今日は日曜日」
    私の装いは部長とはちょっと違う。ピンクのロングワンピースに赤の軽いジャケットとお揃いのマフラー。さすがに足元はブーツにした。部長と違って仕事で行くわけではない、ので、バッグにはいつもの必需品だけを。もちろん、仕事用とは違う、薄いピンク色のショルダーバッグ。


    途中で電車を乗り換え、ボックス席がいいと言うと、リヴァイ部長が進行方向を私に譲ってくれた。流れる車窓、だんだんと、田畑が多くなってくる。
    シガンシナも地方都市で、中心市街地から離れれば田舎だ。田舎がイヤだと言う人も多いけど、私は田舎が好き。家の中からも外の自然が眺められる。風も、雨も、雪も、草を刈る音も、車の音も、人々の声も、虫や鳥の鳴き声も。仕事が忙しいせいか、どれも癒される。そしてこの地にひとりじゃないことに気付かされる。
    ミットラスはキレイだし、人工的な自然も多い。けど、気密性の高い家は音を遮り、街には知らない人がほとんど。季節を告げる鳥の声も虫の声も分からない。
    今は仕事で首都にいるけれど、いずれはシガンシナに戻ろうかと考えている。シガンシナでなくても、自然の多い場所へ。


    車窓からチラッと目だけ部長に移すと、彼も車窓を眺めていた。
    リヴァイ部長とは上司と部下の関係。
    部長はどう思っているか分からないけど、私は不思議と居心地の悪さがない。
    普通なら「何か話さなきゃ」と思うところだが、互いに何も話さなくても、自然で居られるこの感じは、エレンやアルミンと居るときに似ている。ユミルやヒストリアはおしゃべりが好きだし、ジャンは気をつかって話しかけてくる。サシャの食べ物の話は尽きることなく、コニーは緩すぎてたまにする会話が合わないことも。私のようにコミュニケーション能力の低い人は「合う人」って少ないけれど、リヴァイ部長はその希少な一人なのかもしれない。

    このままこの人と居られたら

    そこまで思って、ハッと自分は何を考えているのかと頭を振る。

    「どうした」
    「いえ、なにも」
    「頭振ってたようだが」
    「・・・部長、私といて居心地悪くないかな、と」
    「ずいぶんと今更だな」
    「自分でもそう思います…」
    やはり部長はひとりが良かったか。そうでないにしても、仲の良いエルヴィン企画部長とか、エルド課長とかの方が気が楽なはずだ。ここまで来てちょっと落ち込む。
    「はぁ~、気にしてねえよ。お前と組まされることは多いから、今は慣れた」
    「・・・昔は慣れなかったと?」
    「食ってかかってきていたのは誰だ?」
    そう言われればそうだ。一時は周りに犬猿の仲だと噂されていた。噂じゃなくて事実だが。

    「お話ついでに、お聞きしても?」
    「なんだ」
    「リヴァイ部長って彼女、いるんですか?」

    先日の「お母さん事件」の時、クシェルさん(って呼ぶよう部長に怒られた)に訊かれたこと。
    結果はクシェルさんから聞いているんだけど、部長本人にも確かめてみよう。それによっては、自分の行動を改めないといけないから。
    睨んでくる部長に、「あ、いないな」と悟ったけど。

    「突然なんだ」
    「先日、おかあ…クシェルさんに聞かれまして。全然帰ってこないから彼女が出来たと思ったと」


    それはクシェルさんが自宅に戻る直前、お店の場所を案内してくれたお礼がしたと、会社最寄りの駅前、喫茶店に呼び出された。
    仕事中だったけど、疲れた顔をした部長から「悪いが、行ってこい」と言われれば、行くしかない。

    『もう!聞いてよミカサちゃん!』
    『はい…』
    『あの子の部屋ったら、女の気配がまったくないのよ!』
    『はあ』
    『どこかに歯ブラシとか着替えとかシャンプーとか隠してないかしらって思ったのに』
    『・・・探したんですか』
    『そりゃあ、ちょっとね』
    まったく悪気なくいうクシェルさんに、ちょっとリヴァイ部長が不憫になる。リヴァイ部長の性格はお父さん似なのだろうか。お母さん似ではなさそうだ。
    『そうですか…』
    『あの子ももう30超えてるのよ?お嫁さん来なかったらどうしようかと』
    机に伏せて泣き真似をするお母さんになんとも声がかけられない。あの部長のお嫁さん・・・。
    『部長』としては良い上司だと思う、けど、『彼氏』『夫』としてはどうだろう。あの仏頂面と生活する・・・無理だ。
    彼が甘い言葉を囁くとか、奥さんを労わり大事にするとか、考えられない。奥さんなんて居ても居なくてもどうでもいいようで、「離婚よ!」と言われるのが目に見えている。


    どのくらい心の声がもれていたのか、突然不機嫌な部長の声が降ってきた。
    「ずいぶんな言いようじゃねぇか、ミカサよ」
    「そのくらい、お母さん、心配してるんです」
    「てめえに関係ねぇだろ。人のことより自分の心配しろ。お前だってそろそろ見つけねぇと俺の歳に間に合わねえぞ」
    「ご心配なく」
    特に焦ってはいない。自慢じゃないが、それなりに声はかかっている。ただ、私が今はその時期じゃない。仕事も順調で、「ひとり」の生活も悪くなくて、趣味もあるし。満タンな生活に恋愛や恋人を入れる隙はない。
    それに、なんとなく、幼馴染のエレンが心配で離れられない。エレンと恋人になって、結婚して、とは考えていない。だからこの感情が何なのか分からない。たぶん、エレンも私に同じ想いを抱いている。恋人にしたいわけじゃないのに、互いが相手を見つけて幸せになるのを見届けなければ離れられないと。私は、先はエレンがいいと思っている。

    「なんだ、相手いたのか」
    思考から現実に戻したのは部長の声。何の話をしていたんだっけ。
    「相手?」
    「お前の」
    「?」
    「てめえ、俺の話聞いていたか」
    「何の話でしたっけ?」
    「・・・・・」
    「あぁ、そんなことより」
    「そんなこと。」
    「部長って前は頻繁に帰っていたんですか?」
    「は~・・・、毎週な。金曜にクロルバ行きに乗って、月曜に実家から出勤していた」
    まさかの真実。それではクシェルさんが心配するのも期待するのも無理はない。住まいはクロルバの手前、ヤルケル市内にあるという。中心市街地からは少し離れ、自然が豊かな地区だと聞く。
    「そこまでして実家に帰りたいです?」
    「知らず知らず、疲れてたんだろうな。金曜は実家に帰れることが嬉しかったし、クロルバ行きの終電に間に合うよう仕事を終わらせてた。土日は何をするでもなく、寝て、その辺散歩して、好きなもん食って」
    たまに地元の友人と飲んで、と話す部長が新鮮で。私の知らない、部長の故郷、生活。私にも仕事以外の生活があるように、部長にも職場では分からない生活がある。
    「どうして最近は帰らないのですか?」
    「忙しすぎて帰る余裕も気力もないってのが大きい」
    歳かなと窓枠に肘を付きながら、外に向かって呟く部長の目元には薄っすらと隈が出来ている。皺が増えたのも気のせいではない。
    「リヴァイ部長、美味しいご飯を作ってくれる奥さん、見つけた方がいい」
    部長は体調管理も仕事のうちだと、自身の管理もちゃんとしているけど、栄養不足に睡眠不足。ここのところ、一気に老けたように見える。そこまでの歳じゃないし、ちゃんとすれば顔色も良く、肌のハリも出てくるし、もう少し太ってもいいと思う。
    そんな風に部長の体を心配していると、ずっとこちらを向いていたのか、こめかみを引きつらせた部長が「余計なお世話だ」と文句を言ってきた。




    『カラネス~、カラネス~、お降りの際は・・・』

    時刻は11時過ぎ、早朝に会って、7時台の電車に乗り始めたから、結構時間がかかっている。これは、ここを夕方4時に出発しても夜8時着。明日は月曜だから早く休みたいけど、付いてきた自分が悪い。
    「15時台の電車に乗るぞ。それまで自由行動だ」
    じゃあなと、巨大樹の森方面に向かうリヴァイ部長に、どうしようかと、ガイドブックを開いた。






    「リヴァイ部長!」
    「ん?」
    巨大樹の森よりだいぶ手前、そこは小さな坂になっていて、その下に小川がひとつ流れている。部長はバッグにサンプルを集めては入れていた。
    「何のサンプルですか?」
    「ハンジに頼まれていたものだ」
    「ハンジ…部長?」
    ハンジ研究部部長。私たちは企画部から依頼された場所を調査するけど、研究部はその場所になにか問題がないか調べることが主な業務。ただ、ハンジ部長はその範囲にとどまらず、この国の様々な自然界の研究をしている。仕事半分、趣味半分といった性格で。
    「なら、今日ハンジ部長と一緒に来たらよかったのでは?」
    ハンジ部長はリヴァイ部長の二期上で、仲も良い。本人は否定するけど。
    「そうする予定だったんだが、過労で倒れた」
    「え」
    「昨夜、モブリットから連絡があった」
    モブリット研究部部長代理。と言っても、ハンジさんの側近のような立場の人。まあ、過労で倒れるのはハンジ部長にはよくあることだし、なによりモブリット代理がついているなら大丈夫だ。

    ・・・なんだろう、ちょっと気分が悪い。

    今日、この長い時間をハンジ部長と一緒に過ごす予定だったんだ。


    ギュッと紙袋を握りしめると、ひとつ深呼吸をして、リヴァイ部長の横に腰を下ろす。
    「ご飯、食べてないですよね。どうぞ」
    ガイドブックに載っていた、駅から一番近いお店で買ったパニーノと紅茶。まさか買ってくるとは思わなかったのか、部長は三白眼を大きく開いた。
    「栄養調整食品、水分補給用飲料、バッグの中に入っているのは見ましたけど、それだけではいけない」
    下手したら、この人はそんな食事ばかりしているのか、と疑問に思った。確かに大手医薬品メーカーから出ているそれらは素晴らしモノだけど、健康なのにそれだけを食べるのは良くないと思う。
    草むらの上にそのまま座り込んでいるリヴァイ部長に、紙袋テーブルクロス替わりにしようと準備する。
    「おい、待て。ここで食うならシートを出す」
    「なんだ、持ってきていたんですか。早く出してください」
    「お前、俺が上司だという認識はあるのか?そもそも一人で来る用だから今日は小さいのしか持ってきてねえぞ」
    「なぜ使わなかったのですか」
    「ここの草むらはきれいだし、面倒になった」
    確かに、誰も足を踏み入れていないようなふさふさとした草むら。芝に近いだろうか。そのまま座り込んでも地面には遠く、服も汚れない。強く踏みすぎると草の汁が出てしまうけど、座るだけならそんな問題もなさそう。
    リヴァイ部長が出した一人半用くらいのシートに食事を広げ、二人、お尻だけシートに入るように座る。
    それでもちょっと、いつもより近い距離。




    「良い風ですね~」
    「・・・・・」


    冬は終わり、春も終盤、暑くなく寒くなく、ちょうどいい風が通る。ミットラスより南方だから、木々も薄い緑色の葉をつけていて、小さくさわさわと優しい音がする。そして春を告げる鳥の声も。
    「求愛、頑張ってますね」
    「てめえな、もうちょっと考えてしゃべれ」
    「? 本当のことですよね?」
    この鳥が高い声で鳴くときは、メスへの呼びかけだと聞く。そう聞いてからは、夏になってもこの声を耳にすると、「大丈夫?」と私が心配してしまう。お相手はまだ見つからないのかと。鳥も人間と同じでそのあたりは大変なのかもしれない。リヴァイ部長が言ったとおり、私も他人事ではないのかも。

    「お前の相手はどんな奴だ?」
    「はい?」
    「彼氏だ」
    「彼氏?いないですよ、そんな人」
    「は?さっき電車で言ってただろ。相手いるから心配ないと」

    言っただろうか?そんな事実ないのに。なら部長の勝手な勘違いだ。

    「いたらに抱き着きませんよ」

    私だって貞操観念はある。自分に恋人がいたら、さすがに疲れていても、試したくても、彼氏以外の男性に抱き着かない。そんなことがあるとすれば、病的に倒れた時とかだろう。
    アルミンにもエレンにも抱きつける。でもそれ以外と聞かれれば・・・否だ。
    ならどうしてリヴァイ部長には抱きつけるのか。


    それ以降、黙り込んでしまったリヴァイ部長。私ももう一つ食べたいし、ちょうどいいと、さっき食べたのとは違う具材のパニーノを手に取った。
    「おまえ、これ何人分買ってきた?」
    「5人分」
    「誰が食うんだ」
    「部長はこのくらい食べた方がいい。よく噛んでたくさん食べて」
    「・・・・・」
    紅茶も2種類、2杯分。帰ることを考えると、いつ食事が摂れるか分からないから、ちゃんと食べた方がいい。

    再び、会話もなく、目の前の雄大な自然を眺めながらもくもくと食す。ミットラスではなかなか味わえない。
    私がいた故郷、シガンシナは都市化すると共に環境が破壊された。土壌も川も汚染され、昔は夏に毎日見られた蛍も、今は一匹も見られなくなった。当たり前に咲いていた草花も。皆が気付いたときには遅かった。それがこの仕事に就いた理由。
    さすがにここは住みづらいけど、出来る限りは自然と共存できるよう考えていきたい。

    「?部長?」
    黙々と食べていたリヴァイ部長の手は止まっていて、なぜか眉間に皺が寄っている。嫌いなものでも入っていただろうか。
    「・・・ねみい」
    「は?」
    「食いすぎた」
    と言っても、このシートでは寝るスペースもない。
    「膝枕でも無理ですね」
    「してもらおうなんざ思ってねえ」
    「そうですか」
    膝枕なら、少しはスペースの確保ができるけど、脚を曲げてもリヴァイ部長の脚は確実にはみ出す。座ったそのままの体勢でうたた寝してもらうしかないんじゃないかと考えていた中、何かに気付いたように部長が私に声をかけた。

    「あぁ、そうか。おい、ミカサ、こっち向いて座れ」
    「はい?」
    言われた通り、リヴァイ部長の方を向いて割座した。すると、部長は正面から私を囲むように座り直し、あろうことか、そのまま倒れてきた。
    「ちょ、ちょっと!?」

    やんわりと強く、この体勢では立ち上がることが出来ない。違う、これは上から抑え込まれている。立ち上がろうとすると腕の力が増し、抗えない。
    仕方なく、無言のままその状態を保つと、部長がやっと口を開いた。

    「確かにこれは安らぐな」
    「・・・そう、ですか」
    「あったけえな」
    温かい、それは私も同じだ。だってい上着は来ているものの、互いに接している胸元は薄手の生地。リヴァイ部長もここに着いてニットを脱いだのか、上着の中は薄手のシャツのみ。そこから伝わる体温に、意識が集中してしまう。
    しかも、倒れ込んだカタチだった状態が、今はしっかりと引き寄せられ、抱きしめられている。

    「やべえな、本気で眠い」

    と言われても、ここは安心して眠れる環境ではなく、近くにお店も何もない。困った。
    どうしようか悩んでいると、ひとつ大きく呼吸をした部長が一際強く抱きしめ、直後、離れた。

    急激に冷える胸元に、こちらから抱き着きに行きたくなってしまう。部長は無言でバッグの中に広げていたものを仕舞っていく。
    「リヴァイ部長?」
    「帰る」
    「え」
    「昼寝でもしたら、帰りが何時になるか分からん。お前はどうする?」
    どうすると言われても、ここを一人で散策・・・するのも悪くない。子どもじゃないから帰り方も分かるし。けど。
    「一緒に帰ります」

    シートを仕舞い、ゴミは小さくまとめて部長のバッグに入れてもらい、巨大樹の森を後にする。
    数歩、歩いたところで、リヴァイ部長が後方を歩く私を振り返った。

    「・・・・・」
    「なんですか?」
    「・・・・・もし、嫌じゃなかったら」
    「はい」
    「・・・手、繋いでもいいか?」
    「は?」

    大の大人が何を言い出すかと思えば。
    ぽかんとしていると、恥ずかしそうに前に向き直るも歩を進めないリヴァイ部長。

    イヤ、ではない。
    リヴァイ部長に触れるのはとても安心するし、落ち着くし。
    そういえば、もう何度も抱きしめ合っている。正確には私が無理やり抱きついているんだけど。
    手だけなんて、それこそ、今更。

    「いいですよ?手くらい」
    「・・・そうか」



    抱きしめても、手を繋ぐのは初めて。背が小さくてもリヴァイ部長の手は男の人の手だった。
    そんなことにうろたえながらも、やはりどこか安心する。




    この温もりは、駅についても離されることはなく、私たちの住むミットラスの駅まで繋がれたままだった。


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