傘/雨に唄えば〈U〉で『雨』が実装されたその日、ベルは竜の城に来ていた。城のバルコニーから〈U〉全体をぼんやり見渡しては、思い出したように気ままなメロディを口ずさむ。肌の上に着地した雨は虹色に色づき、さらに細かな水滴となって地面へと落ちていった。
「ベル」
低く唸るような声とともに体に降り注いでいた雨が止んだ。肌を弾いていた水滴の感覚が止まってしまう。少し不満げな顔になるのを止められないままチラリと後ろに視線を向ければ、そこには気まずそうな表情の竜が立っていた。
「ここは濡れるから、中に入ろう」
竜の手には傘が握られていた。雨の実装に伴いAsに配られたものだ。まだ通常のサイズしかバリエーションがないため、竜の体は傘に収まりきっていない。さらにそれをベルに差し出してくるものだから、今濡れてしまっているのは竜の方だ。ベルは自分の顔がさらに険しいものになっていくのを止められずに、竜から目を逸らして前を向いた。
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