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    穂山野

    @hoyamano015

    読んでくれてありがとう。
    幻覚を文字で書くタイプのオタク。とうの昔に成人済。

    スタンプ押してくださる方もありがとう。嬉しいです。

    置いてある作品のCP等
    金荒 / マッキャリ/ 新中/リョ三

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    穂山野

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    【洋南】『富士山が見えてきた』
    スペアバイク9巻のファミレスで解散したあと静岡に帰る車の中の幻覚。

    二年くらいなにも書いてないのでリハビリです。
    書いている人間が金荒の人間なのでどうやっても若干金荒みがあります。

    #洋南
    oceanSouth

    富士山が見えてきた下りの一般道路はこの時間はもうさほど渋滞しておらず、順調に流れていた。
    交通情報を聴くためにつけておいたFMラジオからは穏やかな声のDJが現在進行系でメールを募集している。休日の夜はまだ終わらない、そう思うとちょっと気が楽になるから不思議だ。

    街宮はだいぶ前に寝た。後部座席で腕を組み難しい顔をして寝ている。
    バックミラー越しにそれを見た金城が「どっかの武将みたいだ」といって笑った。
    「あいつ寝てても怖え顔してンな」
    夢の中でもなにかと戦ってそうだ。
    「荒北も眠いなら寝るといい」と金城はいうがそれもなんだか申し訳がない。
    「オレは全ン然平気ヨ。金城こそ眠いならいつでも運転代わるからサァ」
    「いや、それはいい」
    「即答!」
    「この前の心の傷がまだ生々しいからな。街宮にも荒北が運転するようなことになったらワシを起こしてくれっていわれてる」
    ちぇっ、つまんねえの。そうボソっと口にすると金城がワハハと声を出して笑った。
    たまにこんな感じの笑い方をすることをこの一ヶ月くらいの間に知った。
    最初すごく意外な感じがした。金城はどっかの山に籠もって修行してきたみたいな顔してるし、言動なんかもときどき腹立つくらい落ち着いてるから、そういう年相応なとこを初めて見た気がして。
    それぞれがそれぞれを一ヶ月分知った。当たり前だけどそれでもまだ知らないことのほうが多いんだろう。入学してからこの約一ヶ月、あっという間だった。よく走ったしよく笑ったかもしれない。入学前は一人で暮らすってもうちょっと寂しかったりするんじゃないかって思っていた。

    「練習でもうすうす感じていたが今日初めて荒北の嗅覚と勝負勘の凄さを知ったな」
    前方を走る車との車間距離がいつも一定。安定のブレーキングにコイツやっぱりどっかで修行とかしてたんじゃ……?とぼんやり考えていると伸びをしながらそんなことをいう。
    「ハハッ、あんなモン序の口ヨ!」
    「それはこれからが楽しみだな」
    金城の目は本気だった。ワクワクした表情と伝わってくる熱量。ああそうか、コイツもロードレースが好きなんだ。自分と同じように際限なく。後部座席の怖い顔した武将もそう。
    ヘトヘトに疲れたレースのあともう次のレースのことを話すくらいにはお互い楽しくてたまらないのだ。
    「荒北は下りもものすごい踏むよな。オレもあまりダウンヒルを怖いと思ったことはないんだが今日は少し肝が冷えた」
    「オレ、ダウンヒルすげえ好きなんだヨ」
    それは知ってる、流れ出した車の波に乗りながら当たり前のようにそういった。
    「インターハイのときからそう思ってた。一緒に走ることがあったら面白いだろうと思ったからよく憶えてる」
    たぶんすごくポカンとした表情をしていただろうと思う。ハッ、と笑うしかなかった。
    「こっからは暫く一緒だ。ダウンヒルだってクソ面白いと思うほど引いてやンヨ!」
    よろしく頼む、と妙に真面目にいうからなんだか急に照れ臭くもなる。
    「付いてこれねえなら千切ってくかんなァ」
    「わかってるさ。だが荒北が逃げ切って一番最初にゴールラインを踏むならそれでもいい。街宮だって構わない。それはどれも洋南の勝利だからな」
    まだ一年のオレ達には戦略的にほぼ権限はないだろうがいずれ近い未来、そんなレースもあるだろう、と楽しみでたまらないという口調でいうからそれが伝播して心がわき立つ。
    「ハッ、ロードレースは実力の世界だ。金城が見原さんより速く走ればいいだけのこった」
    「そうだな。オレはオレで出来る努力するさ」

    初めての土地でまた自転車に乗り、自転車を介してお互いを知っていく。
    レースは正直だ。自分の欲も他人の欲も剥き出しになる。
    レースは物語でもある。ひとつひとつ紡がれていく。今日のレースはまた次のレースに繋がっていく。
    この短い期間に金城を信頼している自分がいて、その『嗅覚』をあまり疑ったことがなかったことを今更不思議に思う。信用に値するとそう思ったのはなぜなのか。
    その理由はまだわからない。ただそう遠くない未来にわかるような気がしてる。
    街宮にしてみてもそれは同じだ。
    「夏に呉にいくの楽しみだな」
    「そうだナァ。喫茶店行かねえとな、駅前の」
    「荒北は甘いもの好きだな」
    「甘味の世界は金城が思ってるよか深いンだヨ」
    「そうなのか……?」
    「今度さァ、地元で隠れた名店ってとこ行ってみようぜ」
    「全部甘いのか?」
    「コーヒーはあるダロ」

    「ありゃ富士山か?」と後部座席から嗄れた声がした。
    街宮はひと月経ってもこの光景には圧倒される、といっていたことがあった。そのうち慣れてしまうのだろうとも。
    「なんか帰ってきたなって感じすンネ」
    「そうだな。まだ山梨県との県境あたりだが」
    「運転代わるヨォ?」
    「いや、いい」
    「だから即答やめて?」
    それを聞いていた街宮が荒北はげに諦め悪いのぅ、と呆れたように笑う。
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    Replies from the creator

    穂山野

    DONE【リョ三】Sign

    インターハイが終わり、新学期が始まったころの幻覚です。
    二人がゆっくり距離を詰めていったらいいな、という幻覚をずっと見ていたので。
    二人で幸せを作っていってくれ…
    相変わらず拙い文章ですが、似たような性癖の方に届いたら嬉しいなあと思います…
    Signもう殆ど人がいなくなったロッカールームの小さな机で部誌を書いているとどこからか「宮城ィ」ともうすっかり聞き慣れてしまったデカい声がする。
    「なんすか?!」とこちらもデカい声で応じると「おー、今日一緒帰らね?」と毎回こっちがびっくりするくらいの素直な誘い方をするのが三井寿だ。
    最初はその理由がよくわからなかった。自分が部長になったことでなにか言いたいことがあるとかそういうやつ?と若干の警戒心を持って精神的に距離を取りながら帰った。でも三井にはそんなものまったくなく、ただ部活終わりの帰り道をどうでもいいような話をしたり、それこそバスケットの話なんかをしたいだけだった。
    最初は本当にポツポツとした会話量だった。家に着いてドアを閉め「あの人なにが面白えんだ?」っていうくらいの。そのうち誘わなくなるだろう、と思っていた。しかし三井はまったく気にしていないようで当たり前のように隣を歩いた。
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    穂山野

    REHABILI【リョ三】『ふたりにしかわからない』
    リョ三になる手前くらいのリョ+三。うっかり観に行ったザファで様子がおかしくなり2週間で4回観た結果すごく久しぶりに書きました。薄目で読んでください。誤字脱字あったらすいません。久しぶりに書いていてとても楽しかった。リョ三すごくいいCPだと思っています。大好き。
    木暮先輩誤字本当にごめんなさい。5.29修正しました
    ふたりにしかわからない9月半ばだというのに今日もまだ夏が居座っていて暑い。
    あの夏の日々と同じ匂いの空気が体育館に充ちている。その熱い空気を吸い込むとまだ少し胸苦しかった。いろいろなことがゆっくり変わっていく。
    自分は変わらずここにいるのに季節だけが勝手に進んでいくような変な焦りもある。でもその胸苦しさが今はただ嫌なものではなかった。

    木暮が久しぶりに部に顔を出した。
    後輩たちが先輩、先輩と声をかける。あの宮城ですら木暮に気付くと「あっ」って顔をして5分間の休憩になった。
    部の屋台骨だった人間が誰か皆知っている。誰よりも穏やかで優しくて厳しい木暮は人の話をよく聞いて真摯に答えてくれるヤツだ。
    後輩たちの挨拶がひと段落したあと宮城も木暮に話を聞いている。
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