はじめての「はぁ……」
魈は深いため息をつかずにはいられなかった。
理由は明白だ。望舒旅館に現れた客人のことである。
ウェンティと胡桃に呼び出され、此度のイベントについての説明を聞かされた。是非来て欲しいと言われたが、是非の部分がどうにも納得できなかった。何故自分が。その場を賑やかすことも出来ず気の利いたことも言える気がしない。そのうえこの二人……なんとも断りにくく、言葉を濁して去ったのもつかの間、今度は旅人が現れたのだ。なんだかんだと断ってみたものの、あの者達の目はちっとも諦めてはいないように見えて、ますます深いため息をついてしまう。凡人の催しに参加するには、まだ心の準備が出来ていない。
「随分と熱烈な誘いだったな。行かないのか?」
1256