【旗主】それは駅までの恋人繋ぎ.
昔から物事を順序立てて説明したり、思考を言語化することが得意じゃなかった。言葉にして纏めるくらいなら行動した方が断然早いし、例え相手に俺の意思が伝わらなくても特別困りはしなかったから、今まで必要だとも重要だとも思わなかった。
つまり、なにが言いたいのかというと、……俺はレポートが苦手なのだ。
「……ね、眠い」
長時間パソコン画面を睨んでいた所為で、いい加減視界がぼんやりと霞む。ごしごしと目元を擦りながら欠伸を噛み殺し、眠気覚ましに用意していた珈琲を喉に流し込んだ。咥内に広がるのは、未だに慣れない苦味と酸味。あの人のように、これを美味しいと感じる日がいつか来るんだろうか。
こんな切羽詰まった状況でも思い浮かべてしまうくらい、俺の中はあの人でいっぱいで。彼を思い浮かべるだけで胸の中がぽかぽかして、萎んだ気力が復活するのだから、俺も大概単純だ。
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