賢者の贈り物「ちょっと、しっかり集中してくださいよ」
苛立ちを隠そうともしない声に、晶はびくりと肩を動かした。
「す、すいません」
慌てて握る手に力を込めるが、やはり集中力を欠いているのだろう。導きの力が発動する気配はなく、とうとうミスラは「もういいです」と手を離してしまった。
「ごめんなさい、ミスラ」
謝罪の言葉を口にしたところで、どうにもならないと分かってはいるけれど。気もそぞろな状態で寝かしつけをしている自覚はあったから、どうしても後ろめたさが拭えない。
「……あなた、さっきから何をそわそわしてるんです?」
「え?」
責められる覚悟をしていたのに、ミスラは怪訝な顔をしてそんなことを聞いてきた。
「寝る前もやけにバタバタしてましたし、何か俺に隠し事をしているでしょう」
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