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    きたはら/しま

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    きたはら/しま

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    第四回アロルク版深夜の創作60分一本勝負 、お題:【事故チュー】

    モクとルクが二人で飲んでます
    アロは回想でしか出てきていませんがアロルクです
    時間軸はゲーム中、ネタバレはないです

    #アロルク版深夜の創作60分一本勝負

    「僕も、強くなりたいなぁ……」
     
     モクマと一緒にご飯を食べていたルークは、つい零してしまった。ガヤガヤとざわめく楽しそうな人の声に紛れてしまいそうな小さな声だったが、モクマには問題なく届いたらしい。
     
     濁った酒を飲みながら幸せそうに目を細めていたモクマは、そのため息交じりのルークの本音に驚いたのだろう。ぱちぱちと音がしそうなほど、何度も瞬きをしていた。居酒屋らしく薄暗いオレンジ色の明かりが、目の前の料理を照らしていた。
     
     ルークはついこの間まで現役の警察だった。捜査の間にきちんとトレーニングだってこなしていたし、検挙率だってそれなりにあった。つまり、自分は戦える人間なのだ、守る方の人間なのだと自負していたのだ。
     
     だが、その自信もミカグラ島にきて揺らぎつつある。というかはっきり言おう。ぺらっぺらのぺしゃんこになった。
     
     原因は分かりきっている。BONDチームで荒事を得意としているのはアーロンと、モクマだ。恐ろしいほどの身体能力を誇り、ビーストのコードネームを持つアーロンと、本物の忍者であるモクマの戦いぶりを最前列で見ていると、自分がいかに一般人かと思い知らされることになる。
     なお、チェズレイの強さはそういう肉体的なところではないので、ルークはそっと横に置いている。
     
     一度開いた口は止まらない。ぱりぱりと小魚の唐揚げを口に運びながら、つらつらと訴える。まぶされた塩が唇の横に出来た傷にちょっと染みたが、ルークの口は止まらない。
     うんうん、と頷きを返しながらちらりとモクマの目線が自分のグラスに注がれたのが分かったが、別にルークは酔っ払っているわけではない。たまりにたまっていたものが、こぼれ落ちてしまったのだ。モクマと二人きりというのもいけない。この忍者はとても人たらしなので、ついついこうして甘えたくなってしまう。
     
    「まぁ、ルークが得意なのはどっちかっていうと狙撃の方じゃない? おじさん、あの距離でワンホールショットはちょっと無理かな……」
    「モクマさん……!」
    「それに、そう言うけどルークだって普通に戦える方でしょ。潜入するときだって普通にのしてるじゃない」
    「でも、二人を見てるとまだまだだなって思っちゃうんです。それに、この間、二人が屋上で戦ってるの見てたんですけど……」
    「うんうん」
    「正直、目で追うのもやっとでした……」
    「そうだねぇ……」
     
     空になった皿に視線を落として、ルークはしょぼくれた声をだした。困ったように頬をかいているモクマから、その点についてのフォローはないらしい。目で追えただけでもすごいと思うよ、という声がルークの頭上を通り抜けていく。ビール一丁、おまたせしました。店員の威勢の良い声を聞きながら、ルークは目を閉じた。
     
     アーロンがモクマにおっさん戦おうぜとねだっているのを見かけたのは一度や二度のことではない。その誘いをのらりくらりと躱すことが多いモクマだが、数回に一度は仕方ないねぇ、とつきあっていることを知っている。
     ちなみに、ルークは、アーロンからそういうことを言われたことは一度もない。つまりは、ルークの戦闘能力だと鍛錬の相手にはなれないと思われているのだろう。それはその通りなんだが、なんだかそれが、一言で言えば面白くない。
     
     
    「頼られるぐらい、強くなりたいです……」
     
     指で、口の横を撫でながらそう零すと、でもねぇ、と机に行儀悪く肘をついたモクマが、内緒話するように小さな声で笑った。
     
    「チームなんだからさ、得意分野をカバーし合うっていうのも悪くないんじゃない? それにさ、おじさんにとって、ルークは十分頼れる仲間だよ」
    「モクマさん……!」
     
     にっこりと笑うモクマに、ルークの気分はあっけなく上昇した。すっかりご機嫌になってしまい、笑みがこぼれる。そうですかねぇ、そうだよぉと楽しげにニコニコと笑い合う二人をここには居ない二人が見れば、呆れたように笑っただろう。曰く、お花畑かと。
     
     これからも狙撃がんばります! と宣言したルークが、憂いなく天ぷらに手を伸ばす。それを微笑ましそうに眺めながら、モクマは自分の杯に酒を注いだ。トクトク、と、徳利特有の柔らかい音をたてながら、それにしても、とモクマが首を傾げた。
     
    「珍しいね、ルークがそういうこと言うなんて」
    「あー、実は昨日、ちょっと失敗しまして……」
    「へ? そうなの? 何にも聞いてないけど……さっきから触ってる、その傷に関係ある? どっかぶつけたの?」
     
     それ、と指が刺すのはルークの唇に出来ている小さな切り傷だ。モクマは何気なく聞いたのだろう。だが、傷、と呟いた途端にルークは頬を真っ赤にしてしまった。モクマは驚いたようで、杯をカタンと机に置くとルークの肩を掴んだ。
     
    「え、えっ、どったのルーク」
    「こ、これはですね……! 昨日、アーロンと捜査に言ったときに、ですね!」
    「うん、ちょっと落ち着こうかルーク」
    「その、調査対象が暴れまして、いや、ちゃんとそこは切り抜けたんですけど」
     
     
     追いかけているときに、相手が空き缶を投げてきた。前を走っていたアーロンはその射線を見切っていたのだろう、首だけ傾げるという最低限の動作でよけた。だが、そのせいで後ろを走っていたルークには、いきなり目の前に空き缶が飛んできたように見えたのだ。空き缶自体はなんとかよけたが、体勢を崩してしまった先にあったゴミ袋に躓いて結局転んだ。物が乱雑に投げ捨てられている路地裏だったのがいけないと思う、というのがルークの弁だ。いてて、と呻いている間に用事は済んだのだろう。ルークが起き上がろうとしたときには、側にアーロンが呆れた顔で立っていた。

    「どんくせぇな、ドギー?」と笑いながらも手を伸ばしてくれるのが、アーロンの良いところだと思う。ちょっとくらいは君のせいだぞ、と言いながらその手を掴んだところまでは良かった。予想外だったのは、ルークの足下にバナナの皮があったことだ。
     
    「……バナナの、皮」
    「えぇ……」
     
     結論から言おう。アーロンの手を掴んだまま、ルークは転んだ。ちょうど体重をかけたときに足下のバナナの皮が滑ったのだ。鬼のような身体能力を持つアーロンも油断していたのだろう。アーロンも巻き込れる形で、思いっきり転んだ。
     
    「それでアーロンとぶつかっちゃって……助けてくれようとしたのに巻き込んだのも申し訳ないですし、その前に転んだのも情けないですし」
     
     再度の方は早口で叫ぶようになってしまったルークを、モクマが哀れみの目で見つめている。掴んだままだったルークの肩をぽん、と叩くと、困ったように眉を寄せた。
     
    「ねぇルーク、すんごい顔真っ赤だけど、この話題掘り下げた方が良い?」
    「そっとしておいてください……!」
    「そのさ、アーロンもさ、おんなじ場所に傷出来てたよね」
    「掘り下げないでください!!」
     
     ぐいっと半分以上残っていたグラスを掴むと、そのまま飲み干した。これは自分の情けなさにですね、赤くなっているんですと言い訳めいたことを呟く。
     
     ゴミだらけの路地裏で、二人一緒にバナナの皮で転んだだけだ。自分の情けなさについて考えるべきで、だから、かさついた唇の感触とか、とっさにかばうように後頭部に回された大きくて厚い掌の感触とか、乾いた砂とどこか甘くて懐かしいアーロンの体臭だったり、そういう事は考えてはいけないのだと、ルークは唇を噛みしめた。
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    きたはら/しま

    DONEはみ通をよんで我慢できなくて書いた
    部屋ではなく屋上で寝ているアーロンと、なにかものを買ってあげたいルークの話
    アーロンにとって、世の中には嫌いなものばかりだ。餓え、争い、怪我、略奪、銃撃、腐ったパン、泥水。

    いつだったか。「アーロンはどうしていつもそんなに怒っているんだ?」と聞かれたことがある。決まっている、アーロンの世界には許せないことばかり目に入ってきたからだ。怒らなければ、立ち上がらなければとっくの昔に死んでいただろう。

    いつだったか。潜入した国で情報をあさるために図書館で情報収集していたとき。迷子になった子供になぜか懐かれて、絵本を読んでやったことがある。古ぼけた図書館の、これまた古ぼけた木枠ががたついている窓ガラスは、表面があめ玉みたいに波打っていた。そこから入り込む午後の光は揺らめいていて、机にぼんやりとした影を落とす。それがあんまりにも砂漠の日差しと違いすぎて、アーロンの気が迷ったのだ。その子供が、死んでしまった仲間と同じ髪の色をしていたのもいけない。
    アーロンはそのとき読んだ話も大嫌いになった。三兄弟がそれぞれ家を建て、狼が襲いに来るというおとぎ話。わらの家と木の家は吹き飛び、煉瓦の家だけが安全だったという、くだらない夢物語。

    コンクリートとガラスで出来ていた砂漠の家は、 2522

    きたはら/しま

    DONEアーロンのプロフィールにテンション上がって書いた
    ED後、エリントンで二人がご飯食べてる話
    家に帰れば明かりがついているなんていつぶりだろう。

    ミカグラ島のオフィスナデシコでは誰かしら居て、おかえりただいまは当たり前のように降ってきた。チェズレイとモクマは今は居ないけど、アーロンが無愛想に出迎えてくれるだけで一日の疲れが飛んでいくようだ。
    リビングに向かう途中、おいしそうな匂いがルークの鼻をくすぐる。どうやら、アーロンはデリバリーを頼んでいてくれたらしい。テーブルにはLサイズのミートパイにペペロニ、香ばしい匂いのフライドチキンと濃厚なマカロニ&チーズ。そこにちょこんと置いてある一個だけのチョコレートドーナッツにルークの頬は緩みっぱなしだ。

    「へへ、ありがとうアーロン。おいしそうだ」
    「ん」

    ネクタイだけを外すと、急いで椅子に腰を下ろした。ピザにはコーラだよな、と少し悪い顔をしたアーロンがペットボトルを放り投げてきた。もしかして振ってないだろうなこのボトル、とアーロンの方に向けて蓋を開けたが、シュワシュワと小さな音をたてるだけであった。へへ、とごまかすように笑うルークにアーロンは呆れたような顔をすると、ミートパイを口に放り込んだ。
    今日あったこと、アラナの見舞いのこと。昨 1863

    きたはら/しま

    DONE第8回アロルクワンドロ
    お題【童話】

    赤ずきんパロを演じることになった四人が配役決める話。アロルクはほんのり成分
    「BOND諸君。これが新しい台本だ」

    表紙に犬ずきんと書かれた冊子を受け取りながら、ルークは首を傾げた。
    確かにルーク達は一応は一度はバックダンサーとして舞台に立ったし、現在の身分も駆け出しのショーマンではある。だが、あれはあくまで潜入調査のためではなかっただろうか。

    (……そういえば、特訓大変だったよなぁ)

    正真正銘ショーマンであるモクマはともかく、素人のはずのアーロンとチェズレイの動きも美しさの種類こそ違えど夢のようにきれいだった。そもそも、あの二人は立っているだけで魅力的であるし、視線一つで人を引きつけることができる。いつだったか、そんな事を言ったら「あんな詐欺師と一緒にすんじゃねぇよ」と凶悪な舌打ちをいただいたことがあった。

    でも、アーロンの動きってすごいんだよな。こう、歩き方一つ野生動物染みているっていうか、獰猛さがのぞくっていうか……嘘みたいに長い足が、嘘みたいに速く振り抜かれて、ぴたりと静止する。無造作な動作一つ一つがかっこよくて……、うん、僕、よく一緒のステージに立てたな……。

    そんなことをつらつらと思い出していたルークを、不機嫌そうなアーロンの声が現実に引き 2983

    きたはら/しま

    DONE第七回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【噛み付く】

    ED後、恋人関係にある二人でビースト特番を見ながらいちゃいちゃしているお話になります
    カツンカツン、と音をたてて煉瓦道を駆け抜ける。夜のエリントンは外灯やビルの明かりで煌めいていて、眩しいくらいだ。遠くから聞こえるクラクションを背に、ルークは腕時計をそっとのぞき込む。どうやら目的の時間までには家に帰れそうだ。ふふ、と自然に頬が緩まる。

    警察の仕事はある意味体力勝負だ。
    いつ事件が起きるか予想は出来ないし、犯行は待ってくれない。エリントン中を走り回ることもあれば、逮捕のために立ち回ることもある。それでいて書類仕事も大事だ。メールや報告書を作成していると腰や目が痛くなる。それでもこの仕事はルークの夢でもあるので、ちっとも辛くない……いや、それは嘘だ。辛いときだってやるせない思いをすることだってあるが、それでも前に進むと決めた男の足を止める理由にはならない。

    ある意味仕事中毒ともいえるルークが、ほとんど定時で家に急ぐ理由。今日は、テレビで怪盗ビースト特集なる番組が放映されるのだ。



    ぜえぜえと息を切らしながら玄関にたどり着いたルークを迎えたアーロンは、理由を聞いた後空をあおいでぼそりと呟いた。

    「……頭沸いてんじゃねぇか?」
    「何てことを言うんだアーロンっ……げほっ 2923

    きたはら/しま

    DONE第6回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【〇〇しないと出られない部屋】

    ED後、酔っ払いルクに捕まったアロで
    アロ(自覚あり)→←ルク(自覚なし)です
    どうしてこうなった。

    アーロンは、横でキャンキャン騒いでいる金髪をなるべく見ないように目をそらしながらグラスを傾けた。ストレートの蒸留酒。胃を焼くような強いアルコールも、芳醇な樽の芳香も、今のアーロンには何の意味もない。隣から伝わるいつもより高めの体温や、少し薄くなった整髪料の匂い、そんなものに五感を支配されようとしている。

    何の反応も返さないアーロンにじれたのか、ルークの手がアーロンの肩を揺さぶる。好きなようにさせてやりながら、アルコールの所為では頭痛がアーロンを襲う。どうしてこうなった。

    「アーロン、ねぇ君聞いてるのか」
    「聞いてねぇ。酔っ払いの戯言なんざ誰が聞くか」
    「僕は酔ってないぞ!いいか、君が好きだと言ってくれるまで絶対この手を離さないからな!」
    「勘弁してくれ……」

    フィジカルお化けというあだ名をつけられるぐらい人間離れした身体能力を誇るアーロンにとって、酔っ払いの拘束なぞ目を閉じていても抜けられる。肩を少し傾けて、指が浮いたところでさっさと立ち上がれば良い。ついでに腕を引っ張って相手の重心も崩してしまえば、ソファに倒れ込むだろう。これだけ酔っているのだ、そうした 2989

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    DONE #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    【アロルク】28分遅刻しました!すみませんでして!借りたお題は「お酒」の方で、単にアルコール代わりにお酒を吹くアーロンが書きたかっただけ。なお医療行為としては効果はあるけど、正しくはない、みたいな感じらしいし、私自身は医者じゃないので、あくまでファンタジー的に読んでください。あと運営様、お疲れ様でした!最後までよろしくお願いします!
     失敗した。その一言に尽きる。
     「クソッタレ!おいルーク、大丈夫か!」
     「だ、大丈夫だ」
     あまりの激痛に顔が引き攣る。この状態では銃を握ることすらできない。どう考えても戦力外状態だ。痛みが思考の邪魔をする。ただ僕が負傷した現状が、非常にマズイことだけは明白だった。

     時は数日前に遡る。
     「「Discardに関する資料が持ち去られたぁ!?」」
     僕と相棒のアーロンはナデシコさんの一声でミカグラ島の警察本部、警視総監室にいた。
     「正確に言うと、ハスマリー研究の資料が持ち去られた、だ」
     ナデシコさんはいつもの落ち着いた雰囲気からガラリと表情を変え、かなりピリついた態度だった。それだけにこの話の緊急性がうかがえる。
     「今我々が組織の抜本的な改革をしていることは君たちも知っての通りだが、その過程で出てきた資料はすべて紙ベースにした上で資料課が管理をしている。しかし、そこの新人がうっかり鍵を閉め忘れたらしくな。何者かの侵入を許した上に、最重要機密扱いの資料たちを盗んだようなのだ」
     眉間に手を当て、困り果てた顔のナデシコさん。かの研究の悲しくも恐ろしい部分の一端を垣間見てきた彼女だ 3134

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