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    きたはら/しま

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    きたはら/しま

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    第6回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【〇〇しないと出られない部屋】

    ED後、酔っ払いルクに捕まったアロで
    アロ(自覚あり)→←ルク(自覚なし)です

    #アロルク版深夜の創作60分一本勝負

    どうしてこうなった。

    アーロンは、横でキャンキャン騒いでいる金髪をなるべく見ないように目をそらしながらグラスを傾けた。ストレートの蒸留酒。胃を焼くような強いアルコールも、芳醇な樽の芳香も、今のアーロンには何の意味もない。隣から伝わるいつもより高めの体温や、少し薄くなった整髪料の匂い、そんなものに五感を支配されようとしている。

    何の反応も返さないアーロンにじれたのか、ルークの手がアーロンの肩を揺さぶる。好きなようにさせてやりながら、アルコールの所為では頭痛がアーロンを襲う。どうしてこうなった。

    「アーロン、ねぇ君聞いてるのか」
    「聞いてねぇ。酔っ払いの戯言なんざ誰が聞くか」
    「僕は酔ってないぞ!いいか、君が好きだと言ってくれるまで絶対この手を離さないからな!」
    「勘弁してくれ……」

    フィジカルお化けというあだ名をつけられるぐらい人間離れした身体能力を誇るアーロンにとって、酔っ払いの拘束なぞ目を閉じていても抜けられる。肩を少し傾けて、指が浮いたところでさっさと立ち上がれば良い。ついでに腕を引っ張って相手の重心も崩してしまえば、ソファに倒れ込むだろう。これだけ酔っているのだ、そうしたらしばらくは起き上がれまい。

    息をするように簡単だ。簡単だと分かっているのだが、今のアーロンは手負いの獣のように用心深く息を潜めていた。立ち上がることすら出来そうにない。





    出られない部屋





    アラナの状態が安定するまで。
    そんな条件でルークの家に転がり込んできて幾日かたった頃。アーロンは今までないくらい安定した毎日を過ごしていた。爆撃を心配しないで良い寝床。清潔で、安全な食事。追うことも追われることもない日常。ルークに焼かせたステーキに齧り付きながら、鈍りそうだわ、と眉をしかめたことは何度もあった。

    眉をしかめたくなることは、他にもいくつかあった。詐欺師から届いた「獣の文明圏での過ごし方」と書かれた謎の本は両手で引き裂いて燃やした。アーロンがルークの家に転がり込んだことがどうにも心配だったらしい、とモクマからメールが来ていた。なんでも自作の本だったらしい。

    リカルド共和国の享楽的な喧噪も気にくわない。その気になれば石壁の向こうにいる人間のささやき声を聞くことが出来るアーロンだ。真夜中で鳴り響くサイレンはどうしたって気に触る。

    だが、一番気にくわないのは、ルークが時折浮かべる表情だ。家の中の今は住人がいない部屋の扉、少し古ぼけて使われていないマグカップ、家から近い公園に設置されたバスケットゴール。ひたりと、静かに湖に沈むかのような目で迷子のような顔をする。

    (思慕と、罪悪感か)

    ルークが誰のことを思い出しているのかなんて、アーロンじゃなくたって分かるだろう。気にくわないのは、ルークが義父のことを思い出しているからではない。アーロンが見ていることに気づくと、ルークはその目をさっと隠して下手くそに笑うことこそ、気に入らない。

    ファントムについて、アーロンが思うことはいくつもある。人の父親の研究を悪用したり銃で撃たれたり拷問されたり爆破するビルに置いていかれたりと散々な目にあわせてくれた張本人でもあるし、何よりアラナにされたことを許す日はこないだろう。

    それでも。
    あの呆れるほどにまっすぐで善良であろうとするあの男にとって、今なお大事な人間だというのなら。あの男が、ルークが自分を見て顔を曇らせるぐらいなら。


    「別にいいんじゃねーの、お前にとっては、父親なんだろ」


    のんきに笑ってろ、人の顔見て悪いことしてますみたいな顔すんな。
    週末の夜に、アルコール片手にそんな慣れない慰めの言葉を言うくらいには、アーロンにとってルークは大事な人間だった。



    それを聞いたルークの目がしばらくしてひたひたと潤むのを、「泣かねーんじゃなかったのかぁ?」とからかう。「君が……君のせいだぞ」と子供のような反論したルークに、アーロンはそっと安堵の息を吐いた。ルークの顔に広がるのは安堵ばかりで、罪悪感はなかった。

    しばらくの間、ぽつりぽつりと落とされるエドワード・ウィリアムズの思い出話を聞き流しながすところまではよかった。
    アーロンにとって予想外だったのは、安心したらしいルークが週末ということもあって飲み過ぎてしまったことだ。もしかしたら、君が飲んでいるやつもおいしそうだなぁと氷で薄めてすらいない蒸留酒を飲ませてしまったのが行けなかったのかもしれない。

    できあがったのは、たちの悪い酔っ払いだった。

    「アーロン、本当に君はいいやつだ!」
    「うるせぇよ」
    「かっこいいし、強いし、本当はとっても優しいしさ……」
    「もうお前水飲んで寝ちまえそれ以上喋るな」


    もともと、ルークは信じられないくらい臭いセリフを臆面もなく垂れ流せる人間だ。手ひどく裏切った相手に対して手を伸ばせるような眩しさは、酔っ払ったくらいでは陰らないらしい。唐突に始まった、子供のような単純で純粋な賛辞に照れくさい気持ちになるが、悪い気はしないとのんびりと呆れながら眺めていた。

    今となっては、そんな自分をぶん殴りたい。わかってんのか、お前の目の前にいるのはルーク・ウィリアムズだぞ、と。子供の頃からいつだって、アーロンが築いた壁を壊すのは、それを許すのはこいつだけだとアーロンは知っていたのに。

    適当な態度のアーロンに、酔っ払いは酔っ払いなりに憤慨したらしい。いきなりアーロンの肩を掴むと、ルークはきっぱりとよく通る声で宣言した。

    「アーロン、僕は君のこと大好きだ!」
    「……」

    突然の告白にフリーズしたアーロンを誰が責められよう。
    分かっている、ルークのそれは人間として相棒として好きだという話だろう。その証拠に、きらきらと煌めく目は、アルコールで少し緩んでいるが色めいたものはどこにもない。どんな宝石よりもアーロンを魅了するその緑に見惚れそうになって、アーロンは息を止める。

    そこに色めいたものがないことを悟って、残念に思ってしまった自分の思考に、アーロンの血の気がひく。

    アーロンの中には、研究所が燃えたときから捩れて捻くれて淀んでしまってそれでもなお捨てられなかったヒーローへの、ルークへの思慕が眠っている。死んだと思っていたそれは生きていて、ただ単純で綺麗なものでもなくなってしまっていた。アーロンは獣のようなそれを胸に沈めて自分の気が済むまで付き合うつもりではいるが、外に出す気はないのだ。


    ――勘弁してくれ。


    モクマなら同情するだろう。アラナはあらあらと微笑ましいものを見る目をするかもしれない。脳内にチェズレイが浮かんだ瞬間アーロンは思考をそらした。あの詐欺師が言いそうなことなど想像するだけで血管がちぎれそうになる。

    そんなアーロンの哀れな葛藤など知りもしないルークは、不満そうに頬を膨らませていた。どうしてこうなったと自問自答する間もルークは止まらない。


    「なぁ、君も僕のこと好きだろう? そうだって認めるまでこの手を離さないからな!」


    アーロンは、天井を仰いだ。
    やめろ、おこすな、言葉にさせるな。

    ルークの手を外させて部屋から出て行くのは簡単なはずなのに、アーロンは何も出来ないまま目を閉じた。
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    Replies from the creator

    きたはら/しま

    DONEはみ通をよんで我慢できなくて書いた
    部屋ではなく屋上で寝ているアーロンと、なにかものを買ってあげたいルークの話
    アーロンにとって、世の中には嫌いなものばかりだ。餓え、争い、怪我、略奪、銃撃、腐ったパン、泥水。

    いつだったか。「アーロンはどうしていつもそんなに怒っているんだ?」と聞かれたことがある。決まっている、アーロンの世界には許せないことばかり目に入ってきたからだ。怒らなければ、立ち上がらなければとっくの昔に死んでいただろう。

    いつだったか。潜入した国で情報をあさるために図書館で情報収集していたとき。迷子になった子供になぜか懐かれて、絵本を読んでやったことがある。古ぼけた図書館の、これまた古ぼけた木枠ががたついている窓ガラスは、表面があめ玉みたいに波打っていた。そこから入り込む午後の光は揺らめいていて、机にぼんやりとした影を落とす。それがあんまりにも砂漠の日差しと違いすぎて、アーロンの気が迷ったのだ。その子供が、死んでしまった仲間と同じ髪の色をしていたのもいけない。
    アーロンはそのとき読んだ話も大嫌いになった。三兄弟がそれぞれ家を建て、狼が襲いに来るというおとぎ話。わらの家と木の家は吹き飛び、煉瓦の家だけが安全だったという、くだらない夢物語。

    コンクリートとガラスで出来ていた砂漠の家は、 2522

    きたはら/しま

    DONEアーロンのプロフィールにテンション上がって書いた
    ED後、エリントンで二人がご飯食べてる話
    家に帰れば明かりがついているなんていつぶりだろう。

    ミカグラ島のオフィスナデシコでは誰かしら居て、おかえりただいまは当たり前のように降ってきた。チェズレイとモクマは今は居ないけど、アーロンが無愛想に出迎えてくれるだけで一日の疲れが飛んでいくようだ。
    リビングに向かう途中、おいしそうな匂いがルークの鼻をくすぐる。どうやら、アーロンはデリバリーを頼んでいてくれたらしい。テーブルにはLサイズのミートパイにペペロニ、香ばしい匂いのフライドチキンと濃厚なマカロニ&チーズ。そこにちょこんと置いてある一個だけのチョコレートドーナッツにルークの頬は緩みっぱなしだ。

    「へへ、ありがとうアーロン。おいしそうだ」
    「ん」

    ネクタイだけを外すと、急いで椅子に腰を下ろした。ピザにはコーラだよな、と少し悪い顔をしたアーロンがペットボトルを放り投げてきた。もしかして振ってないだろうなこのボトル、とアーロンの方に向けて蓋を開けたが、シュワシュワと小さな音をたてるだけであった。へへ、とごまかすように笑うルークにアーロンは呆れたような顔をすると、ミートパイを口に放り込んだ。
    今日あったこと、アラナの見舞いのこと。昨 1863

    きたはら/しま

    DONE第8回アロルクワンドロ
    お題【童話】

    赤ずきんパロを演じることになった四人が配役決める話。アロルクはほんのり成分
    「BOND諸君。これが新しい台本だ」

    表紙に犬ずきんと書かれた冊子を受け取りながら、ルークは首を傾げた。
    確かにルーク達は一応は一度はバックダンサーとして舞台に立ったし、現在の身分も駆け出しのショーマンではある。だが、あれはあくまで潜入調査のためではなかっただろうか。

    (……そういえば、特訓大変だったよなぁ)

    正真正銘ショーマンであるモクマはともかく、素人のはずのアーロンとチェズレイの動きも美しさの種類こそ違えど夢のようにきれいだった。そもそも、あの二人は立っているだけで魅力的であるし、視線一つで人を引きつけることができる。いつだったか、そんな事を言ったら「あんな詐欺師と一緒にすんじゃねぇよ」と凶悪な舌打ちをいただいたことがあった。

    でも、アーロンの動きってすごいんだよな。こう、歩き方一つ野生動物染みているっていうか、獰猛さがのぞくっていうか……嘘みたいに長い足が、嘘みたいに速く振り抜かれて、ぴたりと静止する。無造作な動作一つ一つがかっこよくて……、うん、僕、よく一緒のステージに立てたな……。

    そんなことをつらつらと思い出していたルークを、不機嫌そうなアーロンの声が現実に引き 2983

    きたはら/しま

    DONE第七回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【噛み付く】

    ED後、恋人関係にある二人でビースト特番を見ながらいちゃいちゃしているお話になります
    カツンカツン、と音をたてて煉瓦道を駆け抜ける。夜のエリントンは外灯やビルの明かりで煌めいていて、眩しいくらいだ。遠くから聞こえるクラクションを背に、ルークは腕時計をそっとのぞき込む。どうやら目的の時間までには家に帰れそうだ。ふふ、と自然に頬が緩まる。

    警察の仕事はある意味体力勝負だ。
    いつ事件が起きるか予想は出来ないし、犯行は待ってくれない。エリントン中を走り回ることもあれば、逮捕のために立ち回ることもある。それでいて書類仕事も大事だ。メールや報告書を作成していると腰や目が痛くなる。それでもこの仕事はルークの夢でもあるので、ちっとも辛くない……いや、それは嘘だ。辛いときだってやるせない思いをすることだってあるが、それでも前に進むと決めた男の足を止める理由にはならない。

    ある意味仕事中毒ともいえるルークが、ほとんど定時で家に急ぐ理由。今日は、テレビで怪盗ビースト特集なる番組が放映されるのだ。



    ぜえぜえと息を切らしながら玄関にたどり着いたルークを迎えたアーロンは、理由を聞いた後空をあおいでぼそりと呟いた。

    「……頭沸いてんじゃねぇか?」
    「何てことを言うんだアーロンっ……げほっ 2923

    きたはら/しま

    DONE第6回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【〇〇しないと出られない部屋】

    ED後、酔っ払いルクに捕まったアロで
    アロ(自覚あり)→←ルク(自覚なし)です
    どうしてこうなった。

    アーロンは、横でキャンキャン騒いでいる金髪をなるべく見ないように目をそらしながらグラスを傾けた。ストレートの蒸留酒。胃を焼くような強いアルコールも、芳醇な樽の芳香も、今のアーロンには何の意味もない。隣から伝わるいつもより高めの体温や、少し薄くなった整髪料の匂い、そんなものに五感を支配されようとしている。

    何の反応も返さないアーロンにじれたのか、ルークの手がアーロンの肩を揺さぶる。好きなようにさせてやりながら、アルコールの所為では頭痛がアーロンを襲う。どうしてこうなった。

    「アーロン、ねぇ君聞いてるのか」
    「聞いてねぇ。酔っ払いの戯言なんざ誰が聞くか」
    「僕は酔ってないぞ!いいか、君が好きだと言ってくれるまで絶対この手を離さないからな!」
    「勘弁してくれ……」

    フィジカルお化けというあだ名をつけられるぐらい人間離れした身体能力を誇るアーロンにとって、酔っ払いの拘束なぞ目を閉じていても抜けられる。肩を少し傾けて、指が浮いたところでさっさと立ち上がれば良い。ついでに腕を引っ張って相手の重心も崩してしまえば、ソファに倒れ込むだろう。これだけ酔っているのだ、そうした 2989

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    NEIA_AINE

    DONE #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    【アロルク】28分遅刻しました!すみませんでして!借りたお題は「お酒」の方で、単にアルコール代わりにお酒を吹くアーロンが書きたかっただけ。なお医療行為としては効果はあるけど、正しくはない、みたいな感じらしいし、私自身は医者じゃないので、あくまでファンタジー的に読んでください。あと運営様、お疲れ様でした!最後までよろしくお願いします!
     失敗した。その一言に尽きる。
     「クソッタレ!おいルーク、大丈夫か!」
     「だ、大丈夫だ」
     あまりの激痛に顔が引き攣る。この状態では銃を握ることすらできない。どう考えても戦力外状態だ。痛みが思考の邪魔をする。ただ僕が負傷した現状が、非常にマズイことだけは明白だった。

     時は数日前に遡る。
     「「Discardに関する資料が持ち去られたぁ!?」」
     僕と相棒のアーロンはナデシコさんの一声でミカグラ島の警察本部、警視総監室にいた。
     「正確に言うと、ハスマリー研究の資料が持ち去られた、だ」
     ナデシコさんはいつもの落ち着いた雰囲気からガラリと表情を変え、かなりピリついた態度だった。それだけにこの話の緊急性がうかがえる。
     「今我々が組織の抜本的な改革をしていることは君たちも知っての通りだが、その過程で出てきた資料はすべて紙ベースにした上で資料課が管理をしている。しかし、そこの新人がうっかり鍵を閉め忘れたらしくな。何者かの侵入を許した上に、最重要機密扱いの資料たちを盗んだようなのだ」
     眉間に手を当て、困り果てた顔のナデシコさん。かの研究の悲しくも恐ろしい部分の一端を垣間見てきた彼女だ 3134

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