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    きたはら/しま

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    きたはら/しま

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    第七回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【噛み付く】

    ED後、恋人関係にある二人でビースト特番を見ながらいちゃいちゃしているお話になります

    #アロルク版深夜の創作60分一本勝負

    カツンカツン、と音をたてて煉瓦道を駆け抜ける。夜のエリントンは外灯やビルの明かりで煌めいていて、眩しいくらいだ。遠くから聞こえるクラクションを背に、ルークは腕時計をそっとのぞき込む。どうやら目的の時間までには家に帰れそうだ。ふふ、と自然に頬が緩まる。

    警察の仕事はある意味体力勝負だ。
    いつ事件が起きるか予想は出来ないし、犯行は待ってくれない。エリントン中を走り回ることもあれば、逮捕のために立ち回ることもある。それでいて書類仕事も大事だ。メールや報告書を作成していると腰や目が痛くなる。それでもこの仕事はルークの夢でもあるので、ちっとも辛くない……いや、それは嘘だ。辛いときだってやるせない思いをすることだってあるが、それでも前に進むと決めた男の足を止める理由にはならない。

    ある意味仕事中毒ともいえるルークが、ほとんど定時で家に急ぐ理由。今日は、テレビで怪盗ビースト特集なる番組が放映されるのだ。



    ぜえぜえと息を切らしながら玄関にたどり着いたルークを迎えたアーロンは、理由を聞いた後空をあおいでぼそりと呟いた。

    「……頭沸いてんじゃねぇか?」
    「何てことを言うんだアーロンっ……げほっ!」

    急ぎすぎたせいか咳き込んでしまったルークを哀れむような目で見ていたが、アーロンはふいっとダイニングの方へ消えた。後を追うようにルークも向かうと、ん、と水がたっぷりとはいったコップを渡された。


    「まぁ水でも飲んで落ち着けや」
    「うん……ありがとう」

    少しほてった体によく冷えたミネラルウォーターが染みこむようだ。ふぅっと一息ついたルークを、アーロンがからかうようにのぞき込む。緑色の瞳が、少しばかり意地悪な光をたたえた。

    「明日の晩飯、肉1キロ追加な」
    「コップ一杯の水と引き換えにしては高すぎやしませんか!?」
    「安いもんだろ、ビーストが注いだ水だぜ?」
    「うぅ……希少価値……」

    君が来てからどれからステーキ三昧だと思っているんだ、僕はもうノーモアステーキだぞ、と抗議をしても、アーロンはひらひらと大きな手を振るばかりだ。今日こそは君に野菜を食わせてやるんだと顔を上げて、目に入った時計の針にはっと息をのんだ。

    「もうこんな時間だ!悪いけどアーロン、今日の晩ご飯はデリバリーのピザだ!」
    「あぁ?」
    「ほら、ビースト特集が始まっちゃう!」
    「……なぁ、今更オレがいえた話じゃねーけどよ、お前はそれでいいのかよ」

    戸惑うように頭を抱えたアーロンをよそに、ビースト君人形を抱え込んでソファの特等席に勢いよく座る。タブレットを操作し、出前対応しているピザ屋のサイトを開くとアーロンの方へ放り投げた。

    「適当に二人分頼んでくれ! ピザも良いけどサラダも頼むんだぞ、あ、あとその店はデザートのプリンが最高なんだ……始まったぞアーロン、君も一緒に見よう!」
    「オレがその番組楽しみにしてると思ってんのかよ……」

    隣をぼふぼふと叩くと、呆れたようにぶつぶつ言いながらもアーロンはどかりと腰を下ろした。テレビには、監視カメラから切り取ったのであろう、荒い画質のアーロンの姿が映されている。テレビの向こうで監視員を蹴り飛ばしたいっそ芸術的なほどに長い足が、惜しげもなく投げ出されていた。

    シンプルなマルゲリータやほのかに辛いディアボラ、定番のペパロニ。サラダはついていなかったが、プリンが一人前。ビールで流し込みながら、ルークは幸せに浸っていた。
    ビーストの盗みの軌跡から、各地でのビーストの噂。なにしろ隣にいるのは本物のビーストなので、噂に対して本当、嘘、盛りすぎ、などの解説してくれるのである。最高である。しかも、新作グッズの紹介に、なんととある国ではファンクラブまでできたらしい。ファンクラブ。良い響きである。ニンジャジャンファンクラブには勿論入っているが、エリントンにはその支部はないものだろうか。

    時折挟む広告の間に、ビースト君の頭に置いたタブレットで、新作グッズを購入し、ファンクラブを検索する。結局なんだかんだツッコミながらも隣にいたアーロンは、ルークのつむじを見下ろしながらため息をついた。

    「なぁ、お前のそのビーストに対する情熱なんなんだ?」
    「だって、アーロン、君のことだぞ?」
    「それで答えになると思ってんなら逆に尊敬するわ」

    そう呟いたアーロンの声は、どこか穏やかですらあった。ふふ、とアルコールが回り始めたルークは上機嫌に体を揺らしはじめた。尻尾じゃなくて体ゆれてんぞ、マジでドギーかテメェなんて憎まれ口も気にならない。アーロンの口が悪いのは今に始まったことではないのだ。

    楽しくて、疲れていて、アルコールも入っていて。いつの間にかアーロンにもたれかかるようにしながらテレビを見ていたルークは少しばかり心が緩んでいたのかもしれない。テレビの向こうで、アーロンファンであるという女の子のインタビューに、思わず突っ込んでしまった。

    ビーストってすごくスタイル良いし、ワイルドだし、激しいエッチしそうだ、噛み痕とかすごそうと笑う、奔放そうで美しい女性の少しばかり過激な答えに、ルークは少しばかりそれは違うよと主張したくなったのだ。

    「でも、君は結構優しく抱いてくれるよな……え、僕に噛みつきたいと思うこととかあるのか?」

    ミカグラ島で相棒になって、エリントンで恋人になった男は普段はワイルドすぎるくらいワイルドだが、優しい男なのだ。すぐに足は出るし、肉ばかり要求する男だが、情が深くて困っている人を放っておけない人。なお、この主張についてチェズレイはあぁ……ボス、ボスの優しさは知っていますが怪盗殿にはもったいないくらいですと悲しげに呟き、モクマは双だよねぇ、アーロン優しいよねぇと笑って同意してくれた。
    もしかしてアーロンに我慢させていたんじゃないかと慌てたルークへの返答は、沈黙であった。不思議に思って顔を見上げると、アーロンは顔をその大きな手で覆っていた。ギリギリと聞こえだした音は、歯ぎしりでもしているのだろうか。

    「……どうしたんだよ、アーロン」
    「おっまえ……マジで、マジか……」
    「?」

    信じられねぇ、と呟く声はどこか弱って聞こえた。ルークは、その観察眼でもってアーロンのとげとげした髪からのぞく耳が赤くなっているのを見抜いてしまった。いつの間にかルークの肩に回された掌が、熱い。

    「なんだ、照れてるのかアーロン!」

    答えを見つけた子供のように、誇らしげにそう叫ぶ。アーロンはギロりと普段のルークなら震え上がりそうなほどの眼光で睨み付けてきた。肩に置かれた手も無意識なのか力が込められて少しばかり痛いが、酔っ払いに怖いものなどない。ふふ、アーロンかわいいところあるよなぁとむしろほのぼのした気持ちで一杯になった。


    「噛みたいならそう言ってくれたらおいのに、君にされて嫌なことなんてないよ!」


    調子に乗った犬がどうなったか。
    次の日、ルークは頭を抱え込んだ。肩に残された歯形は血が滲むほどでじくじくと痛む。タブレットからはチェズレイからの呼び出し音がずっと鳴り響いていた。
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    Replies from the creator

    きたはら/しま

    DONEはみ通をよんで我慢できなくて書いた
    部屋ではなく屋上で寝ているアーロンと、なにかものを買ってあげたいルークの話
    アーロンにとって、世の中には嫌いなものばかりだ。餓え、争い、怪我、略奪、銃撃、腐ったパン、泥水。

    いつだったか。「アーロンはどうしていつもそんなに怒っているんだ?」と聞かれたことがある。決まっている、アーロンの世界には許せないことばかり目に入ってきたからだ。怒らなければ、立ち上がらなければとっくの昔に死んでいただろう。

    いつだったか。潜入した国で情報をあさるために図書館で情報収集していたとき。迷子になった子供になぜか懐かれて、絵本を読んでやったことがある。古ぼけた図書館の、これまた古ぼけた木枠ががたついている窓ガラスは、表面があめ玉みたいに波打っていた。そこから入り込む午後の光は揺らめいていて、机にぼんやりとした影を落とす。それがあんまりにも砂漠の日差しと違いすぎて、アーロンの気が迷ったのだ。その子供が、死んでしまった仲間と同じ髪の色をしていたのもいけない。
    アーロンはそのとき読んだ話も大嫌いになった。三兄弟がそれぞれ家を建て、狼が襲いに来るというおとぎ話。わらの家と木の家は吹き飛び、煉瓦の家だけが安全だったという、くだらない夢物語。

    コンクリートとガラスで出来ていた砂漠の家は、 2522

    きたはら/しま

    DONEアーロンのプロフィールにテンション上がって書いた
    ED後、エリントンで二人がご飯食べてる話
    家に帰れば明かりがついているなんていつぶりだろう。

    ミカグラ島のオフィスナデシコでは誰かしら居て、おかえりただいまは当たり前のように降ってきた。チェズレイとモクマは今は居ないけど、アーロンが無愛想に出迎えてくれるだけで一日の疲れが飛んでいくようだ。
    リビングに向かう途中、おいしそうな匂いがルークの鼻をくすぐる。どうやら、アーロンはデリバリーを頼んでいてくれたらしい。テーブルにはLサイズのミートパイにペペロニ、香ばしい匂いのフライドチキンと濃厚なマカロニ&チーズ。そこにちょこんと置いてある一個だけのチョコレートドーナッツにルークの頬は緩みっぱなしだ。

    「へへ、ありがとうアーロン。おいしそうだ」
    「ん」

    ネクタイだけを外すと、急いで椅子に腰を下ろした。ピザにはコーラだよな、と少し悪い顔をしたアーロンがペットボトルを放り投げてきた。もしかして振ってないだろうなこのボトル、とアーロンの方に向けて蓋を開けたが、シュワシュワと小さな音をたてるだけであった。へへ、とごまかすように笑うルークにアーロンは呆れたような顔をすると、ミートパイを口に放り込んだ。
    今日あったこと、アラナの見舞いのこと。昨 1863

    きたはら/しま

    DONE第8回アロルクワンドロ
    お題【童話】

    赤ずきんパロを演じることになった四人が配役決める話。アロルクはほんのり成分
    「BOND諸君。これが新しい台本だ」

    表紙に犬ずきんと書かれた冊子を受け取りながら、ルークは首を傾げた。
    確かにルーク達は一応は一度はバックダンサーとして舞台に立ったし、現在の身分も駆け出しのショーマンではある。だが、あれはあくまで潜入調査のためではなかっただろうか。

    (……そういえば、特訓大変だったよなぁ)

    正真正銘ショーマンであるモクマはともかく、素人のはずのアーロンとチェズレイの動きも美しさの種類こそ違えど夢のようにきれいだった。そもそも、あの二人は立っているだけで魅力的であるし、視線一つで人を引きつけることができる。いつだったか、そんな事を言ったら「あんな詐欺師と一緒にすんじゃねぇよ」と凶悪な舌打ちをいただいたことがあった。

    でも、アーロンの動きってすごいんだよな。こう、歩き方一つ野生動物染みているっていうか、獰猛さがのぞくっていうか……嘘みたいに長い足が、嘘みたいに速く振り抜かれて、ぴたりと静止する。無造作な動作一つ一つがかっこよくて……、うん、僕、よく一緒のステージに立てたな……。

    そんなことをつらつらと思い出していたルークを、不機嫌そうなアーロンの声が現実に引き 2983

    きたはら/しま

    DONE第七回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【噛み付く】

    ED後、恋人関係にある二人でビースト特番を見ながらいちゃいちゃしているお話になります
    カツンカツン、と音をたてて煉瓦道を駆け抜ける。夜のエリントンは外灯やビルの明かりで煌めいていて、眩しいくらいだ。遠くから聞こえるクラクションを背に、ルークは腕時計をそっとのぞき込む。どうやら目的の時間までには家に帰れそうだ。ふふ、と自然に頬が緩まる。

    警察の仕事はある意味体力勝負だ。
    いつ事件が起きるか予想は出来ないし、犯行は待ってくれない。エリントン中を走り回ることもあれば、逮捕のために立ち回ることもある。それでいて書類仕事も大事だ。メールや報告書を作成していると腰や目が痛くなる。それでもこの仕事はルークの夢でもあるので、ちっとも辛くない……いや、それは嘘だ。辛いときだってやるせない思いをすることだってあるが、それでも前に進むと決めた男の足を止める理由にはならない。

    ある意味仕事中毒ともいえるルークが、ほとんど定時で家に急ぐ理由。今日は、テレビで怪盗ビースト特集なる番組が放映されるのだ。



    ぜえぜえと息を切らしながら玄関にたどり着いたルークを迎えたアーロンは、理由を聞いた後空をあおいでぼそりと呟いた。

    「……頭沸いてんじゃねぇか?」
    「何てことを言うんだアーロンっ……げほっ 2923

    きたはら/しま

    DONE第6回アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    お題:【〇〇しないと出られない部屋】

    ED後、酔っ払いルクに捕まったアロで
    アロ(自覚あり)→←ルク(自覚なし)です
    どうしてこうなった。

    アーロンは、横でキャンキャン騒いでいる金髪をなるべく見ないように目をそらしながらグラスを傾けた。ストレートの蒸留酒。胃を焼くような強いアルコールも、芳醇な樽の芳香も、今のアーロンには何の意味もない。隣から伝わるいつもより高めの体温や、少し薄くなった整髪料の匂い、そんなものに五感を支配されようとしている。

    何の反応も返さないアーロンにじれたのか、ルークの手がアーロンの肩を揺さぶる。好きなようにさせてやりながら、アルコールの所為では頭痛がアーロンを襲う。どうしてこうなった。

    「アーロン、ねぇ君聞いてるのか」
    「聞いてねぇ。酔っ払いの戯言なんざ誰が聞くか」
    「僕は酔ってないぞ!いいか、君が好きだと言ってくれるまで絶対この手を離さないからな!」
    「勘弁してくれ……」

    フィジカルお化けというあだ名をつけられるぐらい人間離れした身体能力を誇るアーロンにとって、酔っ払いの拘束なぞ目を閉じていても抜けられる。肩を少し傾けて、指が浮いたところでさっさと立ち上がれば良い。ついでに腕を引っ張って相手の重心も崩してしまえば、ソファに倒れ込むだろう。これだけ酔っているのだ、そうした 2989

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    DONE #アロルク版深夜の創作60分一本勝負
    【アロルク】28分遅刻しました!すみませんでして!借りたお題は「お酒」の方で、単にアルコール代わりにお酒を吹くアーロンが書きたかっただけ。なお医療行為としては効果はあるけど、正しくはない、みたいな感じらしいし、私自身は医者じゃないので、あくまでファンタジー的に読んでください。あと運営様、お疲れ様でした!最後までよろしくお願いします!
     失敗した。その一言に尽きる。
     「クソッタレ!おいルーク、大丈夫か!」
     「だ、大丈夫だ」
     あまりの激痛に顔が引き攣る。この状態では銃を握ることすらできない。どう考えても戦力外状態だ。痛みが思考の邪魔をする。ただ僕が負傷した現状が、非常にマズイことだけは明白だった。

     時は数日前に遡る。
     「「Discardに関する資料が持ち去られたぁ!?」」
     僕と相棒のアーロンはナデシコさんの一声でミカグラ島の警察本部、警視総監室にいた。
     「正確に言うと、ハスマリー研究の資料が持ち去られた、だ」
     ナデシコさんはいつもの落ち着いた雰囲気からガラリと表情を変え、かなりピリついた態度だった。それだけにこの話の緊急性がうかがえる。
     「今我々が組織の抜本的な改革をしていることは君たちも知っての通りだが、その過程で出てきた資料はすべて紙ベースにした上で資料課が管理をしている。しかし、そこの新人がうっかり鍵を閉め忘れたらしくな。何者かの侵入を許した上に、最重要機密扱いの資料たちを盗んだようなのだ」
     眉間に手を当て、困り果てた顔のナデシコさん。かの研究の悲しくも恐ろしい部分の一端を垣間見てきた彼女だ 3134

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