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蝋燭に照らされた手元の、試し書きのメモ紙にコツコツとペン先を馴染ませる。
「すき、か」
真っ直ぐな好意と、心からの謝罪を一度に聞いたのは初めてだった。――まるで、自分の思いを“良くないもの”のように。
“役割”を辞めたいと言った。
付き合って欲しいとは言われなかった。
「フーーー」
ペンを戻して背もたれに深く寄り掛かり、暗い天井を仰ぐ。
どういう心情だったのか。一刻も早く問いたいのに、状況が許してくれない。――あぁ、魔法陣を敷く為の人員をカルドに申請しなければ。
別の申請用紙を取り出し、必要な人員を書き出す。
あと二日で配置を終え、三日のうちに成果の取りまとめと報告を上げなければ。
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「第二収得隊は?」
「もうすぐ配置につきます」
「では魔法陣の展開を」
「はい!」
……事業は計画通りに進んだ。
あとは書類を揃えて提出するのみ。
「……フー」
カチャリと眼鏡を外し、疲労の溜まる瞼をマッサージする。――レインを抱き締めて眠りたい
鍛えているからか重なっているうちに温かくなってくる、しっかりとした撓やかな体。
「あぁそうだった、好きと言われたな」
男なんてものは大体下半身に直結している。
が、レインにそういう素振りが見受けられなかったという事は、愛欲が伴うほどではないという事か?
「……」
しかしただの親愛であるなら、温もりを共有し眠るだけの共寝に難色を示す理由が分からない。
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