かげろうでも愛して(DK審神者と肥前) 西日の照りつける庭先で蝉がひっくり返って悲鳴を上げている。もう命の終わりかけなのだと知りながら、俺は庭に出て、暴れる蝉の両側を掴んで陽のあたる場所から木の根元に連れて行ってやった。
部屋に戻ると、一部始終を見ていた近侍兼恋人の肥前が呟いた。
「もう数時間で死ぬだろうに、わざわざお優しいこって」
「セミファイナル見ると、夏も終わりだなーって思って……。すぐ死んじゃうにしても、少しでも快適なところで死なせてやりたいじゃん。知ってる? 蝉って7日くらいで死んじゃうんだって、儚いよなぁ」
まぁ俗説らしくて、もうちょっと生きられるみたいだけど。
俺の発言に、肥前は黒いタンクトップ一枚で団扇で自らを扇ぎながら仏頂面で言った。
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