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    906

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    ただの性癖です。その2。
    自分の中の中二病が炸裂したネタ。何でも許せる方にだけ。
    みかつる&🍯🌰の異世界パロ。死にネタ。
    違う名前で呼ばれたりするので、苦手な方はご注意ください。
    急に湧いてきて、とにかく書きなぐってしまった本人だけが楽しい小話です。
    推しの死にネタが好きすぎる気がして反省。
    そんでもってこの話に🍯🌰の登場はない。(またもや)
    続きが書けたら登場予定です。

    fairy tale 1コツコツと靴音が響く。

    昨日まで研究所だったはずの建物は、すべてが瓦礫と化していた。
    ところどころに煙が燻る中、三日月は歌声を聞いた。紡がれる音に曲名を思い出す。
    『歓喜の歌』ーいいや『喜びの歌』だったか。
    ジャリ。と警戒して踏みしめた足が音を鳴らした。
    「誰?」
    ふいに声をかけられる。三日月はこの瓦礫の中に生存者がいたことに別段驚いた様子もなく、声の方に視線をやった。煤けた襤褸をまとった少年がいる。
    「上手に歌うなぁ。お前はここの子か?」
    襤褸の中から金色の目だけが煌々と光る。
    「ああ。でも残念ながら、もう、みんないないぜ。」

    ザァ、と風が吹く。少年のまとっていた襤褸が風で舞う。外れた襤褸からは肌はもちろん、先ほどの印象的な目以外は真っ白な少年だった。アルビノかーーー三日月はこの研究所の目的を思い出しながら少年を見た。
    「俺みたいのがいて驚いたか?ここにいたやつらはみんな似たり寄ったりだった。」
    真っ白な少年は三日月から目を逸らしながら自嘲気味に笑った。
    「お前、名は?」
    「〈ヴァイス〉って呼ばれてるぜ。」
    ほう。やはりこれが件のーー

    昨夜、特殊区域で大きなガス爆発があった。
    報道で表向きはそう伝えられている。だが、実情は異なる。
    現場は特殊な能力を持つ者たちを秘密裏に育てていた研究所だ。それが昨夜、何者かの攻撃により壊滅したのだった。

    容疑者はその研究所出身の軍人だ。名は燭台切光忠。
    所内の研究対象を1人攫った上に、研究所を『素手で』破壊した。
    生存者はいない。ということになっている。

    三日月の今回の任務は、攫われた子どもと兄弟のように仲の良かったとみられる、この〈ヴァイス〉という少年の生存確認だ。
    攫われた子どもには龍の力を具現化する能力があるとされる。そちらはその見目から、〈シュヴァルツ〉と呼ばれている。

    「なぁ、その服。きみあの男のお仲間かい?」
    「あの男、とな。」
    「俺の弟を連れていったあいつ。」
    少年の瞳が真っ直ぐに自分に向けられる様を、三日月は柄にもなく美しいと思った。
    「燭台切光忠、光坊のだよ。」
    「『光坊』とは。またあやつに似合わん可愛らしい呼び名だな。」
    警戒心を解かない少年の前で、三日月は殊更ゆっくりを笑みを浮かべて答えた。
    「昔馴染みさ。こんなナリだが、ここに住んで長いもんでね。」
    「ふむ。燭台切もここ出身であったかの。」
    それ以上近づくな、と少年の目が無言の圧をかけてくる。
    「急に軍人になるなんて言ってな。出てってそれきりさ。それがいきなりこんな風に里帰りなんて。全く驚きだぜ。」
    会話を重ねるごとに警戒心も解けるかと思ったが、十分ではないな。そう三日月は判断し、変わらぬ笑みで会話を続ける。
    「して、お前の弟が攫われたとな。」
    ピリリと空気が刺すように張りつめる。少年の纏う空気に殺気がこもる。
    「ああ。光坊のやつ、俺に内緒で弟に会いに来てたんだ。全くコソコソと。男の風上にも置けないぜ。」
    少年の怒りの理由は三日月には測りかねたが、燭台切の動向がなんとなく見えた。
    あの伊達男が、研究所に足繁く通っているのは把握していた。あくまで研究対象の彼らと懇意にすることは褒められたものではない。見かねた周囲に何度か咎められてもいた。
    『ここで育ったからこそ、後進の育成も気になるんだよ。』とのらりくらり言い訳していた姿は三日月の記憶にもある。
    昨夜の襲撃も、地の利は燭台切にあっただろう。
    「弟はどうやって連れて行かれたのだ。」
    三日月は燭台切の足跡を辿る手がかりはないかと、少年に問うた。
    「頭からバリバリ食べられちまった。」
    それは例えなのか。三日月は少年の言葉の裏を探るが、そこには何も見えなかった。
    「〈シュヴァルツ〉は、あいつは光坊が好きだったんだよ。抵抗なんてしないさ。俺は、俺は知ってたのに……!」
    ギリ、と奥歯を噛み締める
    三日月は会話をしながら〈ヴァイス〉について分析する。
    研究所内でも一目置かれている存在だと聞いていたが、理解できる。
    儚げな見た目と異なりその内面は苛烈だ。そしておそらく恐ろしく賢い。
    次の一手をどうするか。こちらと会話を続けながら絶えず思考している。

    これ以上近づいたらどう出るだろうか。好奇心が顔を出し、三日月は一歩前に進んだ。
    「っ‥‥‥!近づくな!きみもそうやって俺をそそのかすんだろ!」
    〈ヴァイス〉の背後から一陣の風が巻き起こる。それを難なく躱し、三日月はもう一歩近づいた。
    そう、〈ヴァイス〉は風を『起こす』。軍事機密だが、この研究所を知る人間ならば知っている。ここはそういった能力を持つ存在を創り、育ててきた場所だ。
    起こす風も、そよ風なんて生易しいものではない。下手をすれば突風だ。
    研究所の大破は、何も燭台切の力だけではないだろう。三日月はそう推測していた。
    そして、三日月は舞い散る白を目にした。
    雪。いや季節は夏に差し掛かるところだ。舞い散るのは白い羽毛だ。
    風を起こした少年の背中には、人にはあり得ないものが飛び出ていた。真っ白な『翼』だ。
    研究所に暮らしていた子どもたちの年齢は、赤ん坊からこの国でいう成年になる14歳まで、そこそこの人数が暮らしていた。翼を持つのはこの〈ヴァイス〉だけだと資料にあった。
    「ふむ。『御使い』か。」
    「そんな立派なもんじゃない。ただの『寄せ集め』さ。」
    吐き捨てるように〈ヴァイス〉が言う。彼の本心はうかがい知れない。だが、三日月はこの少年を好ましく思う自分に気付いた。
    おもしろい。本部に引き渡すのも惜しいな。捕縛した場合の〈ヴァイス〉の扱われれ方は手に取るようにわかる。ゆえに三日月はこの任務にどう始末をつけるか思案したくなった。

    『三日月さんも、そうは思いませんか。』
    ふと、燭台切の言葉が蘇る。感傷に浸っている場合ではないが、三日月にはあの心優しい隻眼の青年の狂気がわからないでもなかった。
    「なぁお前。俺と一緒に弟を取り返したくはないか?」
    「信用ならないな。きみは俺を知りすぎてる。」
    「まあ、大抵のことは俺たちを通さないと動かないようにできておるからなぁ。研究所のことにも詳しくなろうな。」
    三日月の言葉の意味を、取り違えることなく〈ヴァイス〉は理解した。
    「きみ、『五家』か…」
    面倒なことになった、と〈ヴァイス〉の顔にありありと感情が浮かび、三日月は可笑しくなった。
    「名乗るのが遅れたな。三日月宗近と申す。」
    「して、お前は?」
    三日月は当然のごとく、名を訊ねる。
    「だから〈ヴァイス〉だって。」
    「名は何と申す?」有無を言わせない語気の強さだった。
    〈ヴァイス〉は観念したようにため息をつき、
    「…国永。鶴丸国永、だ。」
    そう、小さく呟いた。
    三日月は満足そうに口角を上げ、「鶴丸国永……鶴だな。」とその名前を口の中で反芻した。
    「……ったく、モルモットに名前を聞くなんて。きみ、変わってるな。」
    「あなや。その言葉、何故か昔からよう言われるな。」
    三日月の様子にすっかり毒気を抜かれた〈ヴァイス〉、もとい鶴丸は今度こそ大きなため息をついた。

    「さて給料分は仕事をするか。」
    〈ヴァイス〉の消息不明について、手短に本部に連絡を取ると、自らは別行動をとる旨を了承させた。
    「鶴や。燭台切とお前の弟を追うぞ。」
    「きみが来なくたってそのつもりだったさ。まずは着替えだ。いつまでもこんな格好じゃあ……様にならないだろ。」
    「なかなかに見えるがな。まあ、目立つのも本意でないしな。あいわかった。」
    「いや、きみな。軍人がこんな襤褸来た美少年連れてたらしょっ引かれるぜ。」
    真剣な顔でそんなこと言う鶴丸に、三日月は声をあげて笑った。



    燭台切光忠、〈シュヴァルツ〉をなんらかの方法で取り込み逃走。
    三日月宗近は〈ヴァイス〉を手元に置き、かつての部下を追うこととなる。
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    906

    DONEちゅきこさんの【Dom/Subユニバース】『COLORS』シリーズ設定の獅子王×加州SSです。本編メインカプは🍯🌰ですが、こちらは🌰の高校の先輩獅子王くんと🍯さんの同僚加州くんの話。
    チラチラ本編のネタばれアリ。また、D/S初心者の勝手な解釈がてんこ盛りの何でも許せる方向けの極みですので、自衛お願いたします。

    ちゅきこさん、いつもありがとうございます✨
    カサナル、ココロ「痛っ・・・!」
    思わす体がこわばったのは、恋人にも伝わっただろう。
    幾度目になるかわからぬお泊りの夜。
    獅子王は今夜こそは、と内心期待をかけて、加州清光の家へ足を踏み入れた。

    一目惚れから始まった交際はそろそろ半年になる。
    お互い、いい大人だ。もう一段階踏み込んだ関係になっても何も問題はない。そう思っていた。

    何の予定もない週末を控えた金曜日。獅子王は意気揚々と加州のマンションに現れた。手土産にデパ地下のデリでつまみを買ってきた。加州が好きだと言っていたブラッスリーのバゲットは、獅子王の会社からここまでの道のりにあるので、毎週立ち寄ってしまう。
    出迎えた加州が用意した、青江にもらったというチーズをバゲットに合わせ、加州が最近気に入っているという蜂蜜ワインを相伴に預かる。こっくりとした味わいもいいが、やっぱビールが一番だ!と宣うと、呆れたような、それでいて優しさのにじみ出る笑みを浮かべる加州。いつもと変わらない夜だった。
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