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    906

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    ちゅきこさんの【Dom/Subユニバース】『COLORS』シリーズ設定の記憶を持つ🍯🌰の本丸軸のお話です(もうこの時点で混乱)
    ちゅきこさん、妄想押しつけすみません💦

    今か今かと待ちながら記憶の海に墜ちていく。
    そこにはあるはずのない優しい手が差し伸べられ、柔らかな声が聞こえる。
    『伽羅ちゃん』

    海から引きずり出されたそこは日本家屋の一室だ。
    大倶利伽羅は深く息を吐いた。

    刀剣の付喪神として顕現したはずの大倶利伽羅には、別の記憶がある。
    こことは別の時間軸で、学生として暮らしていたものだ。

    大倶利伽羅が顕現した時、加州清光は既に三振りいた。
    二振り目の加州清光が、
    「おおくりからぁ…」と涙ぐんで駆け寄ってきたとき、
    「清光、ここは…」
    何の違和感もなく加州の名を呼んだ。そのことに、大倶利伽羅は自分でも驚きが隠せなかった。

    「やあ、大倶利伽羅。君だね」
    清光に連れられて入った一室には、青江がいた。
    「青江…か」
    「そうだね。また編みぐるみでも教えようか。それとも、チョコレートでも作る?」
    共有している記憶の答え合わせのような冗談に、自分の記憶が絵空事や妄想ではなく、現実にあった出来事なのだと確信した。

    鍛刀部屋から出て、青江の部屋に来るまでに、複数の歌仙兼定を見かけたことを思い出し、大倶利伽羅は珍しく話題を提供した。
    「青江」
    呼ばれた青江は、アルカイックスマイルで応える。
    「歌仙は、たくさんいたな」
    ふふ、と笑いながら、そんなにいないよ、と言う。
    「二振りだけだ」
    青江が言葉を続ける。
    「どちらも、僕の兼定ではないんだよ」
    青江は他愛のない話題のように、軽やかに言葉を吐いた。
    泣きそうなのは清光の方だった。大俱利伽羅の少し前に獅子王が顕現し、彼は清光をひと目見るなり、『会いたかったぜ、キヨ――――!!』
    と、抱き着いてきたそうだ。至極らしい行動に、大倶利伽羅は思わず笑ってしまった。

    記憶の中の知古たちに会う。同じ顔をしていながら、彼らは己のことを知らぬ顔をする。元より馴れ合うつもりはない。だが、どこかで違和感を拭えず、腹に澱みが溜まるような感覚になるのだった。
    「光忠がね、まだいないんだ。でもきっと来るよ」
    青江の表情に翳りはない。彼はいつもそうだ。

    それから大倶利伽羅は、出陣がなければ毎日鍛刀部屋の前に通うようになった。
    別に光忠を待っているわけではない。ただ、学生であった己の記憶が、どうしても光忠に会いたいと言っているような気がして、他人事のように思いながらも、無下にできなかった。

    今日は山姥切。
    今日は長谷部。
    今日も長谷部。
    今日は蜂須賀。
    今日は陸奥守。
    今日は歌仙。(また違う歌仙だ)
    今日は………

    大倶利伽羅が顕現してどれくらい経ったのだろうか。
    庭の景趣は、初春から夏の装いに様変わりしていた。

    大倶利伽羅は今日も鍛刀部屋に通う。
    昨日、ついに『青江の』歌仙兼定が顕現した。
    飄々とした青江が静かに涙を流したのを見て、大いに慌てふためく様は、大倶利伽羅のよく知る、『あの』歌仙だった。

    光忠は来ない。そういえば、鶴丸も貞もいない。彼らはどちらの記憶でも大倶利伽羅という存在の傍にいたのに。
    ぽつん、と急に世界に取り残されたような気持ちになった。
    光忠は来ないかもしれない。己の記憶はどれが正しいのか。己は何者だ。
    付喪神、人、刀、魂、体、何を信じればいい。

    ふたつの記憶が巡る。いっそ折れてしまえば楽になれるだろうか。
    『伽羅ちゃん、いいこ』
    蹲る大倶利伽羅の耳元に、柔らかい声が木霊する。

    フッと、大倶利伽羅の頭上に影が差す。
    「だいじょーぶ?」
    影は加州清光だった。
    「鍛刀、終わるみたいだよ」
    声を掛けられ、しっかりと手を握られた。
    付喪神の己なら憤死するであろう状況だが、今は繋いだ手の暖かさに救われた。

    鍛刀部屋が見えてくる。どうやら先客のようだ。
    歌仙と青江、それから二人よりも長身のー
    視覚が脳に情報を伝えきる前に、反射のように体勢が崩れその場に座り込む。
    物音に三人がこちらを振り向く。大俱利伽羅の横で加州が、振り返って驚いた顔の伊達男に、あらん限りの罵声を浴びせている。

    青江と歌仙に連れられ加州が去っても、未だ動けない大倶利伽羅だが声を振り絞って名を呼ぶ。
    「光…忠」
    呼ばれた男はゆっくりと大倶利伽羅の頭の上に手を置き、優しく髪を撫でた。
    「謝らなくちゃいけないね。君をそんなに待たせたなんて。伽羅ちゃん、すごくいいこ。ご褒美は何がいい?」



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    906

    DONEちゅきこさんの【Dom/Subユニバース】『COLORS』シリーズ設定の獅子王×加州SSです。本編メインカプは🍯🌰ですが、こちらは🌰の高校の先輩獅子王くんと🍯さんの同僚加州くんの話。
    チラチラ本編のネタばれアリ。また、D/S初心者の勝手な解釈がてんこ盛りの何でも許せる方向けの極みですので、自衛お願いたします。

    ちゅきこさん、いつもありがとうございます✨
    カサナル、ココロ「痛っ・・・!」
    思わす体がこわばったのは、恋人にも伝わっただろう。
    幾度目になるかわからぬお泊りの夜。
    獅子王は今夜こそは、と内心期待をかけて、加州清光の家へ足を踏み入れた。

    一目惚れから始まった交際はそろそろ半年になる。
    お互い、いい大人だ。もう一段階踏み込んだ関係になっても何も問題はない。そう思っていた。

    何の予定もない週末を控えた金曜日。獅子王は意気揚々と加州のマンションに現れた。手土産にデパ地下のデリでつまみを買ってきた。加州が好きだと言っていたブラッスリーのバゲットは、獅子王の会社からここまでの道のりにあるので、毎週立ち寄ってしまう。
    出迎えた加州が用意した、青江にもらったというチーズをバゲットに合わせ、加州が最近気に入っているという蜂蜜ワインを相伴に預かる。こっくりとした味わいもいいが、やっぱビールが一番だ!と宣うと、呆れたような、それでいて優しさのにじみ出る笑みを浮かべる加州。いつもと変わらない夜だった。
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