月下の跳躍 没にしたやつ今回、ノリと勢いと友達の助言で、吸血鬼パロを書きました。なんか色々ライン超えてないか心配になっちゃった。そんな話を書くなと言う話なんですが。
シャドバコラボでマルゼンスキーがヴァンパイアに割り当てられたのがきっかけだったわけですが、本編では当然コラボストーリーとかはなく、全て自分自身の妄想です。多分色だけで選ばれてるわ。
一応読後を想定してますが、読んでない人もこんな感じなんだ〜感は伝わるかもしれん。ヴァンパイアになっちゃったマルゼンスキーとルドルフが夜に出会って、色々話します。
没シーン①
ルドルフとマルゼンスキーが最初に出会うところ
「あら、ルナちゃん。こんばんは。今夜はいい月ね?」
「……君にその名で呼ばれること、甚だ不愉快だ。訂正してもらえるかい?」
「ふふっ、めんごめんご!……でも親友にそんな言葉遣いをするなんて、酷くないかしら?」
「ほう、良く言う。勿論、君が私の愛するマルゼンスキーであれば、言わなかっただろう」
あたしをじっと射抜く彼女の視線。大抵の人間なら、思わず後ずさってしまうほどの威圧感に――自然と口角が上がっていた。
「君は、誰だ?」
「マルゼンスキーよ。昔から変わらず、あたしはあたし」
「戯言を」
「……そう。分かるのね、やっぱり」
どこか嬉しくて、けれど、認めたくなかった現実を、突きつけられたようで。
「ねえルドルフ。あたしが、本当の怪物になっちゃったって言ったら、どうする?」
没理由:マルゼンがヴァンパイアになって、何か変わってしまったような感じを書きたかった→月もでているし、ルナちゃん呼び、えっちじゃん……となっていたけど、なんか後ろの展開に繋がらんし呼び捨てじゃないルドマルを自分で許せなくなったので普通に没にした。最後の台詞はお気に入りなのでそのまま。
没シーン②
マルゼンスキーが行方不明になった日の回想、ルドルフ視点(思い付かなかったとこはそのまま)
いつか、君が何も言わずに消えてしまうのではないかと、そんな予感はあったのだ。根拠のないその日を、私はずっと恐れていて、覚悟もしていたはずなのに。いざそれが現実のこととなると、存外感情を揺さぶられるものだ。
マルゼンスキーが行方不明になったのは、新学期が始まってすぐ、何の変哲もない、春の暖かい日だった。
新歓行事も一段落し、放課後には彼女とドライブの約束を取り付けていた。私は密かにそれを楽しみにしていて、今日くらいは職員用の駐車場への無断駐車も目を瞑ってやるかと、考えたりしていたのを覚えている。
けれど、予鈴の鐘が鳴っても、授業が始まっても、約束の放課後になっても。彼女は、学校に訪れなかった。一つの連絡もせず、シービーが冷やかしのつもりでかけた電話にも、応答はなく。
その夜、少しの不安と共に訪れた彼女の部屋には、そこに誰もいないのが不思議なほど、何もかもがそのまま残っていた。台所には夕食の余りに、つけ置きされた食器が、机の上には今日締切だった課題が、枕元には、幾つもの通知が表示される携帯電話が。家主が消えて、この空間だけが、昨夜のまま切り取られているようだった。
「荒らされた様子は無さそうですが……かと言って、家出、というふうにも見えませんね」
共に訪れたたづなさんは、
「そうですね。……たづなさん。彼女の家族に、もう一度連絡をして貰ってもいいでしょうか?そして可能であれば、早めに警察に届けを」
「やはりシンボリルドルフさんも、何か事件に巻き込まれたとお考えですか?」
「ええ、その可能性は高いかと。彼女が自分の意思でいなくなるなら、もっと上手くやるはずですから。……誰も傷つけないよう、心配させないよう。一人で、全て決めてしまうんです」
まるで根拠のない持論に、たづなさんは
「ですが、この状況だけでは、事件性があると判断される可能性は低いでしょう。警察が動いてくれるかは分かりません」
「はい、私たちは私たちで、マルゼンスキーさんを捜索しましょう」
あれから、1週間が経った。世間的にも大々的なニュースになったが、結局マルゼンスキーに関する情報は、今日まで何も得られていない。
「行方不明者の生存確率は、1週間を境に大幅に低下する」――飽きるほど繰り返し読んだ記事のその記述が、日に日に重みを増していく。それでも、頭を動かし、手を尽くし、脚を運ぶことを止める気はなかった。
そんな日々が、続いたからだろうか。暖かい西日の差し込む生徒会室で、つい居眠ってしまった。まるで薄氷の上を漂うかのような、浅い眠り。扉が開く音程度で、簡単にその氷は砕けて、いなくなった日と同じように、まるで突然、彼女は私の前に現れた。
「……マルゼン、スキー」
無意識の内に声に出して、自らの耳を疑った。ついに質の悪い幻覚さえ見るようになったか、と。
「ルドルフ」
それが夢の続きでないと気付いたのは、彼女の声が、私の記憶よりも随分と悲しげで、静かだったからだ。
「……マルゼンスキー!!君は、今まで一体、どこへ!」
「……ルドルフ。ごめんなさい、あたし」
「良かった、戻ってきて、くれて……!」
抱いていた不安をぶつけるわけにも、言葉にし難い衝動のまま、私は彼女の体を、強く抱き締めていた。
「そう、あたし……約束してたのに。……あなたと、ドライブに」
「そんなこと、もういい。何があったんだ、この1週間。……どこに行っていた」
「――っ、はな、れて。ルドルフ」
不意に、身体を強く突き飛ばされる感覚。
「……ごめんなさい、心配をかけて。でも……ごめんね。ルドルフには、話せないの」
話せない、話したくない事情もあるだろう。けれど、その口ぶりは。私ではそれを語るに足りないと、言われているのと同じだった。
「私には、か。……私は、君の、ことを」
どれだけ、心配したと思っている?どれだけ、君を見つけるために力を尽くしたか?
「ねぇ……ルドルフ」
指の隙間から覗いた眼に、背筋が凍った。沸騰していた思考は、一瞬で停止する。
違う、彼女は今までの彼女では、マルゼンスキーではない。そう直感するには十分すぎるほどの威圧感は、正に怪物と喩えるに相応しかった。
何だ、この胸の高鳴りは。沸き上がる意気衝天の想いは。ピークを過ぎたと告白し、自らレースの道から退こうとしていた彼女の闘志を、これほど感じたのはいつぶりだ。
私が彼女の走りに最初に抱いた恐怖と、高揚と同じだ。私が求めていた怪物が、ついに、戻ってきたのだ。
彼女はまた、小さく謝罪の言葉を呟くと、背を向けて、立ち去ろうとする。それを追おうと、無意識の内に左脚を踏み出して、二歩目は、続かない。
「今更、私に何が出来る。この脚も、言葉でも。……もう何もかも、私には」
また、離れていく。結局その背中に追いつくことも、共に走ることも叶わないまま。
没理由:長いし時系列分かりにくくなっちゃったから思い切って全部没にした。説明文ぽい小説を書かないと決めたのに、死ぬほど説明文。
没にしたせいでこの後のルドルフの選択の理由が伝わっているのかちょい不安。
現実に戻ってきた後、マルゼンスキーはルドルフの血を求めて生徒会室に→曖昧な記憶のまま、途中で自我が戻ってルドルフを突き飛ばす→ルドルフはこの時、自分がマルゼンスキーに否定され、拒絶されたと勘違いして思い悩む
みたいな流れです
没シーン③
吸血シーン(前限定でポイピクに上げてるからみたことあるかも)
「私はもう、これまでのように走れなくなってしまった」
「……ルド、ルフ」
彼女は、縋るようにあたしの制服の襟元を掴む。
「初めは、海外遠征後の怪我の影響かと思っていた。決して簡単に治る怪我ではない、元のように走れなくなることも、覚悟していた。……けれど、違う。この脚は完治しているのだ、間違いなく」
「それなのに」と、あまりにも弱々しい声があたしの耳を掠めて、また消えた。幾つもの涙がその頬を伝って、彼女は、またやっと口を開く。
「私を、助けてくれ、マルゼンスキー。……脚が、思うように動かなっていく。日に日に食事が喉を通らなくなっていく。感覚だけではない、結果にももう表れている。私は、私は……怖いんだ」
「……自分が自分でなくなっていくような気がして、怖いんでしょう?」
「ほんと、大抵の理由なら吹っ飛ばそうと思ってんだけど。……そう。あなたも、来ちゃったのね」
「困るのよ。……そんな顔されたら。そんなこと言われたら。どうしようもなく、分かっちゃうんだもの」
「心の整理はできたはずだった。テッペンを過ぎても、前のように走れなくても。あたしはあたしだから、それでも努力していこうって。……でもね、分かっちゃったの。そんなの全部、無理やり納得してただけだって」
あの時感じていた風が、見えていた景色が戻ってきた。いくらでも走れる、もっとギアを上げられる。
「ねぇ、でもいいの?こっちに来るってことは、あなたはもう……競技者には、戻れないのよ」
「あなたも知ってるでしょうけど、ヴァンパイアは太陽の下では力が弱まるの。日常生活には問題ないけれど、もう、レースには――」
「構わないよ。このまま走り続けても、辿る道は同じだ」
「……っ、それに、あたしとずっと一緒にいるってことよ!長い寿命を、あたしと」
「マルゼンスキー、君は、怖いのか?」
「私の人生を奪うことが。それに責任を持つことが、か?」
「……それは」
「構わない。全て、受け入れる覚悟はできている。……だから」
狂気に満ちた瞳が、あたしを魅了して離さない。
「……そうだったわね。あたしたちはずっと」
柔らかい首筋に、顔を埋める。いっぱいに広がる彼女の香りも、ほのかな体温も、ずっと前から変わらない。そこに初めて、牙を立てた。ヴァンパイアの吸血は快楽を伴うという。獲物を前に溢れ出る涎が、神経毒となり痛覚を鈍らせるのだ。
「安心して、すぐ楽にしてあげるから」
変わり果てた牙は、簡単に柔らかい皮膚を貫く。じわりと溶け出てくる熱は、これまで口にした何よりも甘美で、脳髄に響くような衝撃をもたらす。体の奥から湧き上がる熱は、瞬時に末端まで行き渡って、あたしを書き換えて。
腕の中で何度も啼きながら、身を捩る彼女を抑えつけて、あたしはそれを啜り続けた。
「マルゼン、スキー」
「……あら、いい顔になったじゃない?ルドルフ」
没理由:最初の頃に書き殴ってたんだけど、書いてくうちに方向性が変わった。冷静に、これよりえっっになるとか自分でも予想してなかった。
いくら理性が残っているからといって、会長に頼まれてこんなに冷静に話し続けられなくない?というのが大きな理由。あと、どうやって吸血に持ってくかめちゃくちゃ悩んでたんだけど、友人からこの状況で吸わないのはルドルフのことナメてない?って言われて確かにってなったのでさっさと吸わせました。
ここまで読んでくれた人(いる?)ありがとう。最後に書いてる間に脳内Twitterで呟いてたツイート置いときます
・無意識に思考が正常でなくなっていくやつめちゃくちゃ好きなので、ヴァンプマルゼンさんはそういうところが滲み出るようになっている。走りたいからといって学園のグラウンドに来る(誰に見つかっても、必ずルドルフに話がいく)ところとか、自分の体が弱った時のことを想像できていないところとか、ルドルフに言いくるめられちゃうところとかです。かわいそうでかわいいね……
・ルドルフもヴァンパイアとしてのマルゼンスキーに魅入られて血を差し出したのか、それとも最初から彼女に取り憑かれていたのか。うーんどっちもいいわね
・ルドルフの方がヴァンパイアとしての血は薄まっているので早く死ぬと思っているんですが、一人になって血の味も覚えてしまったマルゼンスキーさんが果たしてそれまでと同じように誰の血も吸わないでいられるのか、やっぱり悲しいから寿命同じにしていい?
・ルドルフをヴァンパイアにしたところで、ルドルフが血を求めて苦しむのは変わらないのでは?→互いの血を飲み合って自給自足するので大丈夫です(?)
・最初の吸血がアレだったばっかりにアレでしか吸血しても満足できない体になってほしい。学園でやっちゃうと傷はすぐ塞がるけど血塗れになっちゃうので誤魔化せないやつやってほしい
・自分はルドマル付き合っても長くは続かないだろうなと思ってるところがあるけど、それは走りがあれば別なので走り続けられる限り二人は無敵で仲良しです