日々是好日〔卯の刻〕
夏を過ぎ、秋の気配が漂う明朝、藍忘机は腕の中にある体温を心地良く思いながら微睡から目覚めた。
静室に魏嬰が住むようになって、彼のための臥床を一つ入れようかと提案したが素気無く却下されたことは記憶に新しい。そもそも静室にある臥床は、高身長の藍忘机が横たわってもあと一人大人が寝るだけの余裕のある造りなのだから、二人で共有すればいいと魏嬰は何でもないことのように言ってその日から共に寝るようになった。彼がこの世に舞い戻った際、共に就寝することが何度かあった。この部屋然り、宿を取った際も臥牀が二つあるのに、彼は藍忘机と共寝したがった。悪戯心が疼いての発言なのかと疑いはしたが、藍忘机と離れ難かったからだと後から聞き、胸の奥のざわつきを鎮めるために何度雅正集を誦じたことか。
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