その朝、蓮花塢の気温はぐっと下がった。
秋の深まりを思わせる朝もやの中を藍曦臣は朔月に乗って空に上がった。
江澄はそれを自室の露台から見送った。家僕が卯の刻になるや否や起こしに来てくれなければ、その姿も見られなかっただろう。
別れのあいさつはできなかったがきっとこれでよかったのだ。
どういう顔をして会えばよいのか、今になってもわからない。もし、藍曦臣の目が江澄をあきらめてしまっていたら、まともに立っていられるかどうか。
江澄は牀榻に戻ることなく、再び家僕が様子を見に来るまで露台で空を見上げていた。
そのあとはいつもどおり、支度を整えて政務についた。周囲の者は何かを察して遠巻きにしていたが、江澄は努めて平常通りにふるまった。昼を越えるころにはすっかりいつも通りに戻っていた。
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