紅に染まるこの世は残酷だ。努力すれば報われるなんて嘘で、大抵の事は儚く散って消える。正直者は馬鹿を見るが、嘘をつき続ければ破綻した。
そういう、わけのわからない世の中なのだ。何が正しいのか、何が間違ってるのか、終わってみるまで分からない。だけど終わった時には遅いのだ。何もかも、手遅れで。
「マイキー、寒くないか? 」
マイキーは話さない。口をつぐんだまま、小さく頷くだけ。だけどその唇は紫色に染まっている。
首に巻いていたマフラーを解いて、車椅子に座ったままのマイキーの膝にかけた。これで少しくらいあったまればいいが。
自らの意思で動かされることがほとんどない手足は、気づけばすぐに冷えきってしまう。これから冬になるって言うのに、もうこいつの身体は冷たく凍りついていた。
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