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    Sei_Kurage

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    ‪儚華 セイは『武器は薙刀で、コードネームはシレンツィオです。組織の暗殺部隊員で、特技は掃除』です。‬
    https://t.co/Mf66jBd9bN

    電話口の先輩→梅太郎(@u_nddk)

    ##創作DKSS

    《或ル、掃除屋》マフィアパロ「お疲れ様でーす!」

     青年は清掃用のカートを連れ、すれ違う駅員に笑顔で挨拶をする。長い足元を見れば上質そうな程よい光沢のスラックスと、上品な柔らかさのある革靴を見事に着こなしている。
     しかしそこから彼の顔を拝もうと上へ視線を辿っていくと、大きめの淡いグリーンの作業着に、同じ色の帽子を深く被っている。髪は長いのか、帽子の中へねじ込まれていたが、端からは銀糸のような髪が流星の軌跡のようにパラパラとこぼれている。

    「セイくん、おつかれ」
    「駅長さん! 今日もお元気そうで何よりです」
    「はは、いやぁ今日もお客さんが多くてね。あぁ“静寂が恋しいな”」

     駅長が笑うと、セイの顔から表情が消え失せ、引き締まった。“仕事”の時間だ。先程まで笑っていた駅長もネクタイを正す。

    「今日は“どちらまで”」
    「南十五番通り、Ⅲ-F」
    「承知しました! 行ってきます」

     セイは先程の笑顔を顔面に貼り付け、駅長をその場に残してカートを戻すためにロッカールームへ向かった。
     耳の裏に指を添わせると、隠すように取り付けられたイヤホンのボタンを入れる。

    「さて、と。……先輩、聞こえてますか?」
    『うん』
    「こっちに来ますか? 先に行きますか?」
    『近くにいるから、先に行くよ。Ⅲ-Fか……それなりに準備しておく』
    「ありがとう先輩。なるべく急いでいきます」
    『Buona fortuna.』

     先輩と話しながらもあまり難しいミッションでないといいなぁ、とぼんやり考える。その間にロッカールームへたどり着いた。
     黒い柄のモップだけを手元に残し、一通り掃除用具を棚に戻す。そのまま自分のロッカーをカードキーで開け、ジャケットと帽子を放り込む。
     やぼったい作業着を取り払った中に着込まれていたのは、スラックスによく合う白いシャツと黒いベスト、そして黒いネクタイ。これが彼の“仕事着”なのだろう。黒に映える銀色の髪は、鎖骨ほどの長さで毛先が遊んでいる。

    「今日も健やかな一日を! 静寂に祝福あれ!」

     彼は今日も街の喧騒を、足音一つ立てずに往く。
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    recommended works

    ハスミ

    REHABILI2022/12/26
    乱寂のお題さんは晴天の定義にそぐう日、安全性が疑わしい遊具のある公園で考えなしに言ってしまったせりふの話をしてください。
    #さみしいなにかをかく #shindanmaker https://shindanmaker.com/595943
    診断メーカーさんの中にある『さみしいなにかをかく』で出たお題を使用させていただきました。こちらのお題、とても素敵なので時々お借りしています。
    2022/12/26_お題_乱寂SS 雲ひとつないとはいうけれど、冬の青空というものはどこまで広がっているのだろうか。いや、地球が丸いとか大気が覆っているとか、そんなつまらないことをかんがえたいんじゃない。俺の見ている青は、寂雷にとっての白かもしれないし、第三者からしたらあらゆる色がきたならしく混ざったヘドロ色かもしれない。じぶん以外の視点になんか一生かかってもなれないので、こんなことに思い巡らすのは無駄かもしれないけれど、意思/思考をもった一個体としてそのくらいはゆるされるべきだろう。
     シブヤ区ショウトウ方面におおきめの公園があると寂雷がSNSで知って、俺がここへ案内するまで三十分。きっかり、三十分だった。公園内にはシートを張られている砂場や、無害そうにスプリングでゆらゆらと揺れる動物の乗り物、チェーン部分を支柱にぐるぐると巻きつけられているブランコなどがあった。『危険!乗らないで!撤去予定日XX/XX』と張り紙をされているスプリング遊具をまじまじと見ると、それは犬とパンダと象と魚で、およそなんの特徴もなく作られてしまった水色の魚がなんとなくかわいそうになる。魚の遊具はそこそこ人気だったのか、あちこちの塗料が剥がれて部分的に黒くなってしまっていた。
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