外出届「失礼します」
職員室に澄んだ声が響く。
よく知った声に顔を上げれば、キラキラの大きな目でこちらに向かってくる緑谷少年の姿があった。ヒラヒラと手を振ると小さく手を振り返してくれる。可愛い。
けれど緑谷少年の足は私のところへ向いているわけではなくて、大抵いつもその手前で止まる。
そこには彼の担任である相澤くんがいた。緑谷少年は相澤くんに懐いている。
懐いている、というかそれ以上というか。
私の口からは上手く説明できないが絶大な信頼を寄せているように見える。教師と生徒として良き関係を築いているのだろう。
うんうん、とてもナイスなことだ。
小テストの採点をしていた相澤くんが手を止めて緑谷少年を見上げた。
「どうした」
んー、素っ気ない。
1983