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    満ツ雪

    @32_yu_u

    相出しか書けません

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    満ツ雪

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    俳優澤×ドル出勝手に書きました。すみません。え、ドル出が鈍すぎて俳優澤はいつまでも出くんとくっつくことができないんですか?ごめんなさい、もうくっつけちゃいました…ごめんなさい。

    #相出
    phaseOut

    俳優澤とドル出のお話『テレビ局の地下駐車場にいるよ』

    そんなメッセージをもらって僕は私物のパーカーを引っ掴んで慌てて走り出した。派手なステージ衣装のままだし、髪も瞼もキラキラしたままだけど、とにかく時間が惜しくて全力で走った。でもテレビ局は騒々しいから誰も僕のことなんか気にも留めない。おはようございます、お疲れ様ですって笑って挨拶しながら人の波をくぐり抜ける。もう1ヶ月も会っていないあの人の元へ急ぐため。

    ハア、ハアって息が上がる。
    さすがに駐車場だと真っ青な衣装の僕は悪目立ちする。荷物を搬入しようとしているスタッフさんたちがチラチラとこっちを見てくるから、パーカーの前を掻き合わせながら足早にその場を後にした。
    相澤さんの車は、柱の影になって一段と暗い一角に停まっていた。黒い二人乗りの、車種に詳しくない僕でも名前を聞いたことがある車。壁に向かって前向きに駐車されているから車内が見えなくて、何度もナンバープレートを確認してから助手席の窓をそっと覗き込んだ。

    「あ、」

    暗い車内に相澤さんの影。
    窓硝子越しに目が合って、バチって頭の中で何かが弾けたような音がした。僕を見上げるまっすぐな黒い瞳。助手席のドアが内側から開けられて、惚けて立ち尽くしていた僕の手首を相澤さんが掴んだ。
    あ、と思った時にはもう倒されたシートの上で、バタンと閉められたドアの音に心臓が跳ねる。僕の上に跨がった相澤さんの影の中に閉じ込められて息が出来ない。
    プロの誘拐犯のようだ。相澤さんが前クールのドラマで演じていた犯人役みたい。白昼堂々人を拐っては解体する猟奇殺人犯の役だ。これがドラマなら、僕はこの後相澤さんに殺されてしまうのだろう。ろくな抵抗も出来ないままに。

    「悪い、時間が無い」

    相澤さんの親指が僕の唇に触れる。上唇と下唇を順番になぞった指が、口紅の赤い色に染まった。

    「んっ、」

    性急に求めてくる相澤さんに口を開けて応えれば、最初から舌が絡み合う。相澤さんの頭を両腕で抱えて、至近距離で見つめ合って。
    相澤さんがいる。
    ここにいる。
    僕の腕の中にいる。
    触れた唇の柔らかさとか温かさとか、口内を好き勝手に這い回る舌のねちっこさとか、頬を包む大きな手の平とか、僕のこめかみを無意識になぞる親指とか、そういったものひとつひとつが愛しくてたまらない。絡め取られた舌先を甘噛みされたら腰のあたりがゾクゾクしてしまう。思わず相澤さんの足に太腿を擦り付けたら、一瞬瞳に剣呑な色を乗せた相澤さんに「こら」と叱られた。

    「まだ仕事中だろ」
    「そう言うんだったらこんなことしないでください」
    「嫌だった?」
    「またそういう聞き方する……」

    嫌なわけが無いのに。
    時間が無いって余裕無く唇を塞がれて嬉しくないわけないじゃないか。一秒一秒を惜しむように深く求め合う。唾液が溢れそうになる度に口の端を吸う相澤さんが舌舐めずりをする。呼吸さえも奪われてこのままこの手にかかるのも悪くないかななんて蕩けた思考で考えた。それだけ相澤さんのキスは気持ちが良い。百戦錬磨なのかなって考えて胸がモヤモヤする。そういえばドラマでキスシーンがあった時、喧嘩したっけ。
    最後にわざとちゅ、と音を立てて相澤さんの唇が離れていった。でも僕の上から退いてくれる気は無いみたいだ。僕の顔の両脇に手をついて見下ろしてくる相澤さんを僕だって離す気は無くて、相澤さんの首の後ろで緩く両手を組んで拘束する。そうするとちょっと嬉しそうに相澤さんは目を細めた。

    「新しい衣装?よく見せて」
    「う、」

    絶対言われると思った。
    ステージ衣装は広いステージと明るい照明の下でも映えるように派手に作られているから、こんな至近距離で見られると思うと恥ずかしい。しかも今回は夏をテーマにした曲だから露出も多めになっている。けど緑谷出久の一ファンを公言してくれている恋人に頼まれたら断る選択肢なんか無くて、横になったまま身を捩って何とかパーカーを脱いだ。まだスプリングコートが必要なこの時期にさすがに肩まで露出した衣装だと寒い。足は膝上まであるブーツだから良いけど。

    「青と黒のチェックのリボン、似合うな」
    「ほ、ほどこうとしないでくださいっ!」

    首に巻いたリボンをつう、と撫でていく指先。そのままリボンを引っ張られて慌てて止めようとしたら、先端に相澤さんの唇が触れた。

    「悪い虫がつかないように唾つけとかないと」
    「もっ、もうつけてますよね……っ!」
    「身体中に?」
    「……もうっ!!相澤さんっ!」

    苦し紛れに言った言葉をあっさり返されて二の句が継げない。あんなことやそんなことまで思い出してしまい、ごまかしたい一心で僕は頬を膨らませた。

    「名前で呼んでくれないのか」
    「だってここ相澤さんのおうちじゃないです」
    「俺の車の中だけど」
    「おうちじゃないです」
    「出久、」

    狡い。
    こういう時ばかり優しい声で呼ぶんだから。
    期待をこめた眼差しでじっと見つめられて僕は観念するしか無かった。

    「……消太さん、」
    「ん、ありがとね」

    わしゃわしゃと頭を撫でてくれた相澤さんが、ようやく僕を解放してくれた。助手席のシートを上げてくれた相澤さんは運転席に座ってふと笑う。僕が名残惜しいって顔してるのなんて相澤さんにはお見通しなんだろう。

    「……明日から、映画の長期ロケですよね」
    「そう。北海道で1ヶ月」
    「見学しに行きます」

    パーカーに腕を通しながらそう言ったら、相澤さんがちょっと目を丸くした。

    「地理的に日帰りできない場所だぞ」
    「泊めてください、消太さんのとこ」
    「……古い旅館なんだが、」
    「セキュリティーが、とか心配してます?」
    「いや、防音的に」
    「は、」

    我慢できるわけねぇだろ、なんて相澤さんが情けない顔をするから僕はつい笑ってしまった。いたたまれなくなったらしい相澤さんは僕のパーカーのファスナーを一番上までしっかり上げて、おまけにフードまで被せて「覚悟しとけよ」と不貞腐れたように言う。
    もう時間だ、と言わんばかりにかけられたエンジン音に紛れてそっと「覚悟しておきますね」と僕は呟いた。
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    満ツ雪

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    俳優澤とドル出のお話『テレビ局の地下駐車場にいるよ』

    そんなメッセージをもらって僕は私物のパーカーを引っ掴んで慌てて走り出した。派手なステージ衣装のままだし、髪も瞼もキラキラしたままだけど、とにかく時間が惜しくて全力で走った。でもテレビ局は騒々しいから誰も僕のことなんか気にも留めない。おはようございます、お疲れ様ですって笑って挨拶しながら人の波をくぐり抜ける。もう1ヶ月も会っていないあの人の元へ急ぐため。

    ハア、ハアって息が上がる。
    さすがに駐車場だと真っ青な衣装の僕は悪目立ちする。荷物を搬入しようとしているスタッフさんたちがチラチラとこっちを見てくるから、パーカーの前を掻き合わせながら足早にその場を後にした。
    相澤さんの車は、柱の影になって一段と暗い一角に停まっていた。黒い二人乗りの、車種に詳しくない僕でも名前を聞いたことがある車。壁に向かって前向きに駐車されているから車内が見えなくて、何度もナンバープレートを確認してから助手席の窓をそっと覗き込んだ。
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