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    満ツ雪

    @32_yu_u

    相出しか書けません

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    満ツ雪

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    俳優パロ相出です。モブ視点です。何か色々とアレです。何でも許せる方向け。

    #相出
    phaseOut

    俳優パロ俳優、緑谷出久(20)
    八歳の頃、ご長寿ドラマの主人公の少年時代を演じ、そのあまりの可愛らしさに一時期お茶の間を席巻した過去がある。しかしその一役だけで芸能界から姿を消し、幻の天才子役と呼ばれていた。
    その彼が芸能界に復帰したのは彼が高校を卒業した年のこと。大物映画監督の新作映画主役抜擢という鮮烈な再デビューだった。ブランクを感じさせない演技力と成長して身に付いた大人の魅力、人当たりも良く飾らない性格で誰からも好かれる今注目度ナンバーワンの若手俳優だ。
    浮いた話のひとつも出てこないが、隠しているというよりまだ恋愛に興味が薄いように見える。SNSにアップされる写真は同年代の俳優仲間である轟焦凍やプロスポーツ選手の爆豪勝己とのものばかりだ。そういった点もまた女性ファンの獲得に繋がっているのだろう。
    ひとつ、最近の変化として挙げるとすれば相澤消太との写真や記述が増えたことくらい、か。

    俳優、相澤消太(35)
    二十歳の時に芸能界に突如現れた新進気鋭の俳優である。どういった経緯で芸能界入りしどういった経緯で処女作が月9の主役という華々しいデビューになったのかはいまだに謎に包まれている。
    曰くある女性社長のお気に入りだとか、
    曰くある芸能界関係者の隠し子だとか、
    そういった噂が数多く紙面を賑わせたが真偽の程は定かではない。ウラの取れている確かな情報としては、過去無名の劇団に短期間所属していたという記事ただひとつだけだ。
    正統派な演技力を見せたかと思えば別人のような癖のある役もこなしてしまう多才さに彼をテレビで見ない日は無い。特にドロドロの不倫を描いた昼ドラに出演した時にはお茶の間のご婦人たちのハートを射貫きまくり、『不倫相手にしたい男』ナンバーワンに選ばれたこともある。
    こちらも浮いた話のひとつも出てこないが、清廉潔白というよりは金の力で揉み消している、……という噂だ。
    交遊関係は狭く、MCのプレゼントマイクや俳優仲間の白雲朧以外に友人と呼べるような近しい存在はいないものと思われる。
    そんな彼が何故一回り以上年下の新人と仲良くしているのかは甚だ不思議だ。緑谷出久が尊敬する大好きな俳優として相澤の名前を挙げ、その魅力について熱く語っている最中に相澤本人が登場するというドッキリテレビで二人は初対面した。そこから交遊関係が始まったのは間違いないだろう。純粋に慕ってくれる後輩は可愛いものだろうが、相澤を慕う後輩なら他に幾らでもいるだろう。

    「はあ……」

    自己紹介が遅れたけれど、私は大手出版社勤務のモブシタです。
    ジャーナリストに憧れて上京してきたのに、何故かもう五年も芸能人の背中ばかり追いかけている。ひたむきに頑張っていればいつかは配置換えしてもらえると信じてきたけど、そろそろ頑張るのにも疲れてきたアラサー女。セクハラパワハラモラハラ三拍子揃った上司の下で汗水垂らして働いて、何度も辞めてやろうと転職活動もしたけど採用されなくてここまで来てしまった。心が折れそうな時に実家から母の体調が良くないから戻って来て欲しいと連絡があり、しかも地元紙の採用枠まで斡旋してもらえるとかいう好条件付きで私の心は絶賛揺れていた。東京で大きな仕事がしたいと思って来たけれど、地方のほうが理想の仕事が出来るかもしれない。私の心は折れかけていた。
    今だってダサい社有車の中一人、朝食のあんぱんを齧りながら相澤消太の高級マンションを徹夜で見張っている。私はこんなことをするために身一つで上京した訳では無いのだ。
    周りからは相澤担当なんて羨ましいと言われたが、私はどちらかと言えば緑谷出久派だ。年下の弟キャラのほうが可愛がりがある。
    相澤消太は……隙が無い。本音が見えない。底が知れない。私生活が見えない。だから怖い。そう言うと「そういうミステリアスなところが良いんじゃない!」と言われるが、一切解明できないミステリアスなんてホラーでしか無い。
    ひとつでも相澤からスクープを取れれば栄転させてやると言われて早五年。五年だ。五年もの間、相澤消太はゴシップのひとつも出さない。
    聖人君子か?
    あの顔で?
    あり得ない。
    絶対にカネと権力で握り潰しているだけだ。

    「はあ、」

    もはや溜め息しか出て来ない。
    昨日も昼過ぎ頃から相澤のマンションには緑谷出久が訪れていて、その後動きが見られない。先に用意されていた車で出て行ったりしていなければ今もまだ緑谷出久はこのマンションにいるということになる。
    これが大物女優やグラビアアイドルであればお泊まりデートですっぱ抜けるというものの、先輩後輩が仲良く休日を楽しんでいるだけなのだから三面記事にもならない。二人が頻繁に休日を共にしていることはお互いのSNSでも知れ渡っている事実なのだ。

    「帰っても良いかな……」

    ハンドルに頭を預けながら紙パックの野菜ジュースを啜る。野菜摂れってよく母さんに言われたな、でも野菜ジュースは糖分が高いからあんまり飲み過ぎると良くないって言ってた気がする。
    そんなことを思いながら街路樹越しに相澤消太のマンションを眺めていると、エントランスロビーに見飽きた相澤消太の姿が現れた。

    「と、緑谷出久」

    キャップを被っているけど黒に肩のところだけ緑色になっているパーカーを着ている姿は間違いなく本人だ。トレードマークの赤いスニーカーもここからはよく見える。やはり一晩泊まっていたのか。二人は何かを話しながらこちらに背を向けて窓際の角のソファーに並んで腰掛けた。程無くしてマンションのコンシェルジュらしき男性がカップを二つ銀色のトレイに乗せて運んで来る。
    珍しい。
    いや、こんなことは初めてだ。
    コンシェルジュともにこやかに会話する緑谷出久の笑顔が眩しい。徹夜明けのお姉さんの淀みきった気持ちも浄化されるというものだ。
    コンシェルジュが丁寧にお辞儀をして去っていくと、二人はまた親密そうに会話を始めた。一晩一緒にいても話は尽きないのだなと感心する。何より相澤消太にこんな穏やかな顔をさせるなんて緑谷出久とは一体何者なのだろうか。さっきも言ったが、何が彼をそうさせるのか。緑谷出久の魅力は誰しもが知っていることだが、それにしても──。

    「はっ!カメラ!!」

    珍しい光景についぼんやりと眺めてしまっていたが、こんなチャンス滅多に無い。スクープとはいかないだろうが相澤消太の珍しい表情を収めることができれば、まあネット記事にはなるだろう。マンションのロビーで歓談を楽しむ相澤消太。何を飲んだのかくらいコンシェルジュから聞き出せないだろうか。
    そう思いながら重たい望遠レンズのついたカメラを構える。二人にピントを合わせシャッターを切り、今撮った画像を確認して明るさを調整していく。両方が笑っている絵が欲しいな、と何回もシャッターを切っていくうちに何十枚という画像が保存されていった。やはり芸能人、オフショットでも写真映りが良くて羨ましいな等と撮影した写真を見ながら思う。そしてもう一度カメラを二人に向けたところで、

    「え、」

    私はファインダーから目を離してしまった。緑谷出久の肩に回された相澤消太の手。引き寄せられた緑谷出久が上向いたところに、相澤消太が身を屈めて。
    それはほんの一秒にも満たない「接触」だったと思う。正直緑谷出久が前を向いたままだったから本当にそういう接触があったのかは定かでは無い。けれど、いや、でも、確実にあれは、勘違いでも無ければ寸止めでも無かったと思う。何故なら解放された緑谷出久が現在両手で顔を覆っているからだ。

    「う、そ」

    大物俳優の相澤消太(35)
    新人俳優の緑谷出久(20)
    共に浮いた話のひとつも無く、お茶の間の人気を博しているふたり。尊敬する先輩。可愛い後輩。休日をよく共にする微笑ましいふたり。

    「──では無かっただって?!」

    私はカメラを放り出し両手で握り締めたハンドルに向かって勢いよく頭を打ちつけた。
    嘘だ、嘘でしょ、誰か嘘だと言って。
    そういう可能性を全く考えなかった。そういう素振りを一切見せなかった。そんなふたりが見せた「隙」を──一世一代の大スクープを私は見事に撮り逃した。だってそんなことが起きるだなんて思わないでしょう?!

    「あああああ」

    ぐしゃぐしゃと髪を掻き回す。
    私は何を見たんだ私は何を見せられたんだ私は一体何を見てきたんだ。
    混乱と自己嫌悪にどれくらいの時間のたうち回っていたのか分からない。私が再びハンドルで頭を強打したところで、唐突にガチャリと助手席のドアが開いた。

    「ロックを外しているなんて、感心しませんね」

    心臓が止まるかと思った。
    当然のように助手席に乗り込んで来たのは、さっきまでエントランスロビーで緑谷出久と談笑していたはずの、相澤消太ご本人だった。

    「は、」

    なん、でここにいる、の。

    こんなに近くで本人を見るのは初めてだ。身長が高い。スタイルが良い。足が長い。喉仏と鎖骨がヤバイ。適当にハーフアップにした髪型が異様に様になっていて、何と言ってもオーラが凄い。存在感に圧倒される。これが芸能人か。
    視線だけで私は息も出来なくなる。
    こんなのを緑谷出久は相手にしているのか?
    無理でしょ、無理だろ、無理。
    肺が幾つあっても足りない。相澤消太にいまいち惹かれないなんて思っていた今までの私をぶん殴りたい。恐ろしい。今この男に「死ね」と言われたら私は喜んでハンドルに頭を打ち付けて死のうとするかもしれない。そんな有無を言わさぬカリスマ性を相澤消太は兼ね備えていた。

    「事務所には口止めされていて、でも誰も知らないのもつまらないでしょう」

    ニッコリ。と、浮かべられた笑顔に心臓を一突きされた気分だった。心を奪われたって意味じゃない。命の危険を感じた。

    「は、」

    いやそれより。
    今何て言った?
    誰も知らないのも?
    つまらない?
    何を?
    何が?

    「ひとりくらい、誰かに知っておいて欲しいなと思いまして」

    相澤消太と緑谷出久がそういう関係であるということを誰も知らないから?
    わざとやってのけたっていうことか?
    そしてそのひとりくらいに、
    私が選ばれたって言うことか?
    事務所から口止めされている交際の事実を
    私ひとりが抱えることになるのか?

    「A社のモブシタさんですよね」
    「なん、で」

    ヒュッと私の喉が鳴る。

    「以前名刺、頂きましたよ」

    五年前、担当についた時に一度挨拶した。
    それきりだ。
    それきり、会話すらしていない。

    「本当は社会部に転属したいのに叶わないなんて大変ですね。しかもご家族から実家に戻るよう言われているとか……地元紙でもあなたなら十分活躍出来ると思いますよ、五年も私についてきたあなたなら」
    「は……」

    何で知ってる何で知ってる何で知ってる何で知ってる。

    「先程の口止め料を後で個人的にお支払いしたいと思っています。事務所には内緒にしてくださいよ。怒られてしまいますので、」
    「あ、あの、あの、」
    「何でしょう」

    私は馬鹿みたいに口をパクパクさせてばかりいた。目の前の相澤消太に張り付いた笑顔から目が離せない。離したら死ぬ。殺される。社会的に抹消される。そんな妄想に取り付かれていた。震えが止まらない。怖い。恐ろしい。逃げ出したい。帰りたい。母さん。
    どうして。どうして。
    今事務所NGのスクープを握っているのは私で、私のほうで、相澤消太を脅迫できる立場にあるのは私のはずなのに、私はどうして今相澤消太に脅されている。どうして、何で、何で私が。

    「わた、私、さっき、さっきの、写真、と、撮ってませ、ません、私、何も、何も見てません、から、あの、許してくださ、許して、」
    「さっきの、と言うのは?」
    「やっ、ち、違うんです!違うんです!私は何も、何も!」
    「そんなに怯えないでください。何もしませんよ。地元でやり直せるだけの金額は、お支払いしますから」
    「は、はい。か、帰ります、帰ります帰ります帰ります」
    「良かった。ご家族のこと、大事にしてくださいね」

    そう言って相澤消太は車を降りて行った。
    見慣れたはずの背中がマンションのエントランスに消えて行くまで私は魔法にでもかかったかのように動けないまま茫然とその後ろ姿を見つめ続けた。それからようやく我に返って今更なが車にロックをかける。
    心臓がバクバク言っている。僅かに車内に残った相澤消太の香りだけが、彼がここに先程までいたという現実を突き付けてくる。

    (帰ろう)

    「帰ろう、」

    震える手でエンジンをかける。
    相澤消太の言う通り地元に帰ろう。家族は大事にしなきゃいけない。私が守らないといけない。地元紙ならきっと理想の仕事が出来る。すぐ、すぐに実行に移さないと。

    相澤消太から桁を間違えたのかと思う小切手が私の住むアパートに送られてきて本気で私が泣いたのは、この三日後のことだった。
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    満ツ雪

    DONE♀️装♂子な🥦くんは👀先生のことが大好き。今日も元気に猛烈アタック!
    普通のコーコーの普通のきょーしとせーとな👀🥦の話。👀の担当きょーかとか決めてません。自由に想像してほしい🙆
    がんばれ女装男子🥦くんあいざわせんせい。


    僕の担任の先生。

    僕の大切なひと。


    僕の大好きなひと。



    「失礼します!一年A組緑谷出久です!相澤先生!来ましたっ!」

    昼休み。
    職員室の入口でそう僕が声を上げると、先生方の視線が一斉に相澤先生に注がれた。呆れや羨望の入り交じったその視線を面倒そうな顔で受け止めながら、相澤先生が立ち上がる。

    「良いなあ愛妻弁当」
    「山田そういうこと言うとコイツが調子に乗る」
    「ふふ、相澤先生の愛妻でーす」

    そう言って先生の腕に絡み付くと、こらって軽く頭を叩かれる。優しいからちっとも痛くない。むしろ撫でられてるみたいで嬉しい。

    「良いわねえ相澤くん、かわい~い幼妻がいて」
    「やめてくださいよ香山先生」

    心底辟易した様子で相澤先生が睨みを効かせても、香山先生にはちっとも通用しない。「アオハルいいわ~頑張りなさい」って僕の背中をぐいぐい押してくれる。相澤先生とぴったりくっつく形になって、ぎゅうってその腰に抱き着こうとしたらさすがに相澤先生に本気で押し返された。
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