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    満ツ雪

    @32_yu_u

    相出しか書けません

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    満ツ雪

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    人外さんの嫁パロ相出。勢いだけで書いた。続く。

    #相出
    phaseOut

    人外さんの嫁パロ「緑谷くん、突然だけどあなたの夫が決まったわ♡」

    ………………。

    「はい……。……はい?」

    校内放送で突然担任のミッドナイト先生に呼び出されて応接室に来てみたら、いきなりそう宣言された。
    ちなみにビシっと僕を人差し指で示す決めポーズつきで。

    「えっと、どういう、ことですか」
    「あなたは選ばれたのよ♡今日からは、こちらの方の、お・よ・め・さ・ん♡やあぁん良いわねえー!お幸せにぃー!♡」
    「こちらの方、って……」

    黒い応接ソファーの向かい側を差し示されて恐る恐る視線を移していく。誰かいるなんて全く気付かなかった。一体どんな人が……。

    「って、猫さんんんんんんん!!!」

    気付かなくても仕方無かった。
    黒い皮張りのソファーと一体化したような真っ黒い猫がそこには鎮座していた。

    ……いや。

    気付かなかったのはやっぱりおかしかったかもしれない。

    大きい。

    明らかに僕より大きい。

    しかもちゃんと人間みたいに座ってる。

    「あ、」

    しかもじっと見られていた。
    硝子玉みたいな黒い瞳に、僕の緑色が映って綺麗だ。鋭い眼差しなのにどこか優しいような不思議な色をしている。

    「じゃあ早速二人で区役所に行ってきてね♡」
    「区、役所、ですか、」
    「そー♡婚姻届♡出して来てね♡」

    ……婚姻届。

    「えーーーーー!!!!!!!!」



    ───────



    「僕が妻、妻?僕が……え?妻?」

    婚姻届の妻の欄に名前を書いた僕は頭を抱えていた。
    区役所に行ったら普通に婚姻届を渡されて、普通に書いて、普通に提出したら、普通に受理されて、それから新居や必要な家具、家電をもらった。
    母さんに電話すると「どこに出しても恥ずかしくない立派な嫁になるのよ!」と激励された。

    え?なんで?
    どうなってるの?

    「えーっと、イレイザーヘッド、さん?」

    婚姻届の夫の欄に書かれた名前(あの猫の手で器用にペンを持っていた、すごい)でようやく名前を知った。
    でも知っているのは名前だけだ。

    ちゃぶ台を挟んで黒猫さんと正座で向かい合う。黒猫さんは僅かに首を右に傾けただけだった。

    「あ、えっと、どうして僕なんかを……選んだんですか」

    もっと他にたくさん、いくらでも選びようがあるのに。

    「僕なんか、が、選ばれた理由が、分かりません、もっと他に、」

    膝の上でぎゅっと拳を握る。
    今まで僕が選ばれることなんて一度も無かった。
    学級委員だって、リレーのアンカーだって、発表会の主役だって、いつも別の誰かが選ばれていた。
    これからも僕が選ばれることなんてない。
    そう、思っていたのに。

    「あ、」

    黒猫さんが無言で立ち上がる。
    じっと見下ろされて、僕は急に怖くなった。

    「ご、ごめんなさい、こんなこと聞いて。でもきっと僕は、あなたに見合うような人間じゃなくって、きっとそのうち僕に飽きて……っ」

    言っているうちに涙が溢れて来て、僕の拳の上にぽろぽろと落ちていった。
    泣き虫。
    こういうとこも嫌いだ。
    弱虫で、泣き虫で、取り柄もなくて。
    ぐしぐしと腕で目元をこすっていたら、急にふわりとしたものに包まれた。

    「わっぷ」

    目の前が真っ黒だ。
    しかもふかふかで温かい。
    ぽんぽん、と柔らかい肉球で背中をトントンされてようやく、それが黒猫さんなのだと気が付いた。

    「わ、わ、ど、どうしたんですかっ」

    身体全部が黒い毛並みの中に沈み込んでしまいそうだ。人をダメにするクッションってこんな感じなのかもしれない。

    「あの、あの、えっと、慰めて、くれてるんですか、」

    黒猫さんは何も言ってくれない。
    もしかして喋れないのだろうか。
    尚も背中をトントンし続けてくれる黒猫さんの体毛の中で、僕の涙はいつの間にか止まっていた。
    恐る恐るその身体にしがみつくと、黒猫さんもぎゅっと抱き締めてくれる。
    何故だかとても安心する。

    「あの、」

    名残惜しいけど身体を離して見上げた黒猫さんの瞳には、やっぱり優しい色が滲んでいた。

    「ふつつかものですが、よろしくお願いします」

    こうして僕たちの結婚生活が始まった。

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