薄幕 考えごと、しているのかな。
ソファに腰掛けた僕は、隣に座るKKを眺めてそう思った。
咥え煙草で資料を睨みつけているKKは、時々苛ついた様子で頭を掻いては紫煙を吐き出している。ローテーブルの上の灰皿には、吸い殻で小さな山が出来ていた。捨てに行かなきゃなと思いつつも、僕はKKから目を離したくなくてそのままになっている。
いつの間にか、室内は煙草の煙が充満していた。換気をした方が良いのは明白だけれど、窓を開けるのは寒い。近所の桜が蕾を開き始めるほどに昨日までは暖かかったのに、今日は寒かった。花冷えというやつだろう。だから僕は窓を開けるのを躊躇っていた。
空気清浄機なんて立派なものは、この部屋にはない。閉め切った部屋の中で行き場を無くした紫煙がKKの周りを漂い、彼の姿を隠そうとする。疎らな濃さのベールは、蛍光灯の光をあちらこちらに屈折させて、その向こうにいるKKの姿を幻想的に見せている。
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