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    昔書いたやつ⑭

    #朝菊
    chaoChrysanthemum

    ご主人様とメイドさん
     薔薇で囲まれた大きな屋敷に探偵のアーサーがいた。そしてそこで使えているたった一人のメイドの菊。大きな屋敷にはその二人しかいなかった。その二人だけで十分だ。
    「旦那様、今日も何かの事件ですか」
    「ん?ああ。殺人事件だ」
    「そろそろ私を頼るのは止めて下さいませんか?旦那様は謎を解いていないというのに」
    「解いているけど?お前がいっつも口出ししてその結果、お前が言った答えが正解だっただけだが」
    「旦那様は頭は良いですが馬鹿ですから。発想能力が無いんです」
    「誰が馬鹿だって?」

     こんな感じだ、また。俺はいっつも菊に振り回されている。でもなぁ……。嫌いになれねーんだよな。顔は俺好みだし、闇みたいな艶のある綺麗な髪と瞳。そして、すげーいい匂いがする。
    「あの、旦那さま?顔が赤いですけど、熱でもあるんですか?」
    「へっ?き、気のせいだ、ばかぁっ」
    「そうですか。分かりました」
     くすくすと俺をからかうように笑う菊。……ヤバイ、凄く可愛い。
    「菊」
    「はい?」
    「どこにも行くな。ずっと傍に居ろよ、菊」
    「……私は旦那様以外の居場所なんてありません」
     笑っているけれど、陰のある笑顔だった。
     そうだ。
     菊の見方は俺しかいないんだ。菊は俺が守らないと。一人ぼっちの菊を。
     だって菊は俺のものなのだから。



     俺は18歳の時、家を出ていった。跡取りとか興味が無かったからだ。
     名門貴族のカークランド家の長男として生まれた俺は、跡取りになる為の勉強をさせられていた。
     でも、俺はしてみたい職業があった。そう、探偵だ。

     俺の最初の仕事は、ルートという青年からの依頼だった。友人のフェリシアーノという少年が奴隷になってしまったらしく、フェリシアーノを取り返して欲しいというのだった。
     俺は、取り敢えずフェリシアーノという少年が働かされている屋敷へと向かった。ルートという青年と共に。
     家の中には、死にかけの少年少女がいて、はっきり言って気持ち悪かった。
     取り敢えず、家の主に交渉し、フェリシアーノという少年を開放してもらえることになった。勿論、俺が金を積んで。
    「ルートっ!」
    「フェリシアーノ!」
     そして俺は、フェリシアーノという少年がいたところに小さな少女?が座っているのを見つけた。
     黒い髪と瞳。小さく華奢な体。
     俺は見惚れてしまった。そして思わず言ってしまったのだ。
    「この黒い髪の子もついでに!」

    「お前、名前は?」
     家に帰り、黒い髪の子を綺麗に洗い、洋服を着せた。少しだけ笑って、とても可愛かった。
    「菊、です」
    「俺はアーサーだ。アーサー・カークランド」
    「アーサー、さま」
     きゅっと俺の服を掴んでくる菊。やばい、可愛すぎる。
    「そ、そういえば、何歳なんだ?菊」
    「私、は12歳、です」
    「12!?てっきり7歳かと!……そういえば、服、俺の小さい時の服だが、いいか?後で可愛い服を買ってやるからさ」
     寝る時のネグリジェとか必要だろう。後は髪飾りも必要だな。
    「いえ大丈夫です。アーサーさま。私は、男ですから」
    「……?」
    「分かってて、いっしょにおふろに入ってくれたのではないんですか?」
    「いや、7歳くらいだから、女の子でもいいかと思って」
     だから!俺は見ないようにしたのだ。俺は見ていない。
    「……そういえば、前にいたところでも、間違えられましたね……」
    「だってこんな見た目で12歳の男の子なわけねーもん」
     それにしたって、6歳下か……。
    「……菊、俺がお前の為に頼んだ服が届いたら、お前は俺の側にいてくれるだけでいい。メイドになってくれ」
    「めいど……?ですか」
    「あぁ、前の場所のようなことは絶対しない。だから、な?」
    「はい、アーサーさま」
     菊はこの日から俺のメイドになった。



     こんにちは私、アーサー様……いえ、旦那様のメイドをしております菊です。私と旦那様の日常話、聞いて下さいますか?
     
     旦那様は、私を助けて下さった恩人です。私の世話もして下さいました。まあ、料理はアレですけど。ですが、知らなかったことを沢山教えてもらいました。美味しい紅茶の淹れ方とか。
     環境も良くなり、背も大分伸びました。旦那様との目線も少しだけ近くなりました。……と言ってもまだ、旦那様の方が10㎝も高いけれど。
    「菊、今日は素直だな」
    「そっ、そんな訳……っんっ」
     時々、旦那様は突然私にキスをしてくる。何かあって、ムシャクシャして入らっしゃる時に。それもバードキスではなくディープキス。旦那様のテクにより、私の身体はたちまち力が入らなくなってしまう。
     でも、それでもいいのです。期待なんかしていないのですから。
     何故なら私は、旦那様、家アーサー様の事が。
    「んっ、あ、アーサー様……!」
     好きなのですから。



     最近の菊は可笑しい。いや、仕事はちゃんとしているし、行動や口は相変わらず可愛げが無いが。菊の、仕草とか、顔も美人になってきている気がする。可愛くなっている気がする。いや、元々顔は普通の女よりも可愛いんだが、いっつも仏頂面だったんだよな……。時々見せる照れ顔とか、困った顔とか、キスした時に涙目になっている顔とか。可愛い、だよなぁ……。
     それに小さいし、華奢だから、押し倒してしまえば、思うがままだ。でも、武術を少し教えたこともあってそれは通用しない。逆にこっちが負けてしまうだろう。
    「菊」
    「はい?何ですか。どいて下さい。身動きができないのですが……」
    「嫌だ。それに、本気で嫌なら抵抗してみろよ。……なぁ、菊?」
    「……っ!」
     菊の弱い耳元でそう囁いた。ビクッと細い体が震えているのが分かる。
    「の、いてください……っ。アーサー……旦那様……っ」
     菊は俺が大事に大事に育ててきた存在で。可愛げが無いとかそういうのは全部俺の影響な訳で。それはつまり俺色で染まっているということだ。気付きたくなかったけれど、気付かない訳にはいかない。
     菊は可愛くない訳がない。そして俺好みに育ててしまったのだ。無意識のうちに。
     だから俺は菊の事が好きになってしまうのだ。



    「ん、んんっ……」
    「菊、キスだけで立てなくなるのか?」
    「黙ってて下さい……っ」
     起こっているが菊は涙目だった。頬は桜色に染まり、呼吸も荒い。しかも体の力が抜けている。俺が支えてやらないと、立っていることすらままならない。
    「こんな抵抗しないなら、菊の処女を奪っちゃおうか」
    「……私、男です」
    「知ってる。でも菊は女より可愛い」
    「……っ!」
     菊の耳で囁き、菊の服のボタンを外していく。しかし、そう簡単には菊を抱けないようだ。何故ならピンポーンとベルが鳴ったからだ。
    「ちっ……」
    「良かった……」
     出てみると、いたのは弟のアルフレッド、そして嫌いなフランシス。
    「旦那様……?何、固まって……」
    「菊、お前は出るな」
    「何故ですか」
    「客人にお前は要らない」
    「そうですか……」
     そう言って、菊は後ろに下がった。俯いていて顔はよく見えなかった。
    「アーサー、その言い方は拙いんじゃない?」
    「そうだぞ、ちょっとだけしか見えなかったけど、とってもキュートじゃないか!そう、広いんだ!」
    「誰が何と言おうと、勝手だろうが。それに……」
    「それに?どうしたんだい?」
    「いや、何も」
     菊は俺のものだ。だから、屋敷に閉じ込めて、俺以外の人間に会わせないようにしてきた。だって、菊は誰からにでも好かれてしまう。あの容姿の菊を守りたいと思ってしまうのは男の本能なんだ。
     本当に、好きなんだ。



     結局、弟のアルと腐れ縁のフランシスが帰るまで、菊には姿を見せるなと言っておいた。
     だって、俺だけの菊じゃなくなってしまうだろう?
     俺は、最低だ。菊の気持なんか全然。俺は、何て自分勝手なのだろう。菊は、こんなにも俺の事を考えているのに。
    「旦那様……」
    「き、菊……!?」
     俺が「来るな」と言って自分勝手な行為をしたから仕返しなんだと分かっていても、客人がいる時、いやこいつ等かいる時に、何で。
    「おー、何かアーサーの好みっぽいメイドちゃんだね~」
    「とってもキュートなんだぞ!」
    「おま……っ、何でこんな時に……!」
    「大丈夫ですよ。私の世界には旦那様しかいませんから」
     淡々と低い声で言った菊だが、自分の言った言葉を思い出し、みるみる顔が真っ赤になっていった。
    「わ、私は……っ、そ、そそそそういう意味じゃないですから……っ!」
     そっか、と俺は理解した。
     俺は菊が好きで。菊も俺が好きなんだ。
    「菊、俺はお前にしか興味ないからな」
    「な、何言ってるんですか……っ、旦那様……っ、お客様が見てますから……っあっ」
     華奢な菊の身体を抱き寄せ、俺はキスをしていた。
     ……身体が勝手に。
    「~~っ!」
     菊が言葉にならないような悲鳴を上げる。これ以上ないくらい顔を真っ赤にさせて。
    「アーサー、時々お前凄いな」
     ぽつりとフランシスが何か言った。俺には聞こえなかったが。
    「お前ら、俺の菊に手ェだすなよ?」
    「はいはい、分かってるって~」
    「えぇー!俺は仲良くなりたいんだぞ!」
    「ダメだ」
    「アーサーのケチ!」
    「ある、お前は俺の弟だろうが」
    「旦那様、私はお茶を淹れてきますので」
    「あっおい!菊!」
     俺達が両想いだった。こんなにも幸せなことがあるだろうか。いや、無いだろう。
     俺の恋人は可愛いメイドの菊だ。
    終わり

    おまけ
     そういえば何で俺の菊がメイド服を着ているのか疑問だろう。過去の話で俺が菊にメイド服を着せたというのは知っていると思うが、何故だか分かるか?
     理由は2つ。1つは俺の趣味だ。……引くんじゃねーぞ!まあ、その服が好きという訳ではないぞ、断じて。菊はメイド服がとても似合うと思ったからでな……。2つ目の理由にもなるんだが、メイドプレイというものを……って閉じるなよばかぁっ!してみたかったんだ!だって俺だって男だから!
     ……開き直ったなコイツ、とか思っただろ。
    「旦那様ー?」
    「うわぁっ!?」
    「……何やっているのですか?」
    「いやー、別に……。あ、そうだ」
    「?何がですか?」
    「よし、これから愛の成せる技を見せるからな!よく見とけよ!!」
    「誰に向かって言っているのですか?」
    「いや!俺の独り言だ!」
    「??さらに意味が分かりません」
    「よし、じゃあ始めようか!」
    「だから何をですか……って何を脱がせているのですか!?」
    「よし、ヤろうか」
    「ダメですよっ」
    「こうして、俺達は愛のセッ」
    「言わなくていいです!」
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