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    昔書いたやつ⑳

    #朝菊
    chaoChrysanthemum

    ドSな先生の落とし方 暑い暑い夏。俺は中3で、受験生だ。
     なのに、この暑い中では、勉強をやる気が起きないし。
     取り敢えず、出来た宿題を担任に渡さないといけない。
     ……あのドSな担任に。

    「本田先生ー、いますかぁー」
    「……」
     返事が無い。だが、確実に本田は居る。
    「本田せーんせーい!」
    「……何ですか。もう少し静かにしてくれませんか」
     ほら、やはり居た。
    「何で、こんな暑い時に貴方に会わないといけないのですか。新手の嫌がらせですか。帰って下さい」
    「ちょっ、俺は宿題を出しに……!」
    「ああ。そうですか、カークランドさん。では、少しコーヒーを買って来て下さいな。今、忙しいので」
    「嫌だ」
    「お金は渡しますから」
    「そういうことじゃなくて!」
     明らかに本田は忙しそうに見えない。彼はいつもそうだ。そして、俺は本田の下の名前を知らない。
    「な・ん・で!俺が先生の使い魔にならないといけないんですか!」
    「私の下僕ですから」
     ああ、まただ本田は。中1の時もこうだった。

    「なぁ、アーサー」
    「……何だフランシス」
    「俺達の担任、誰だろうね?セクシーな女人がいいなぁ」
    「あぁ、そうだな」
     そんな感じで、適当に俺は相槌を打っていた。そりゃあ、男だし、女がいいに決まっている。
     と、思っていたら、俺達のクラスの先生を紹介するみたいだ。
    「私が1年Bの担任、本田です」
     その見た目に反して結構声が低い。男みたいだ。ただ、本田は男性にしては華奢。サラサラの黒髪に、瞳は黒真珠の様だ。
    「……あの?本田せんせー、下の名前は何ですかー?」
     と、言ったのはフランシス、ではなく俺。
    「教えません」
     本田はきっぱりと言った。この場で言うのもどうかと思ったが、どうしても俺は聞きたかったのだ。それに皆、そう思っていると思うし。
    「血液型は?」
    「教えません」
    「誕生日は?」
    「教えません」
    「何でですか」
    「気に入りました。貴方は今日から私の下僕です」
    「はぁ!?」

     ……みたいな回想は置いておくとして(良くない)。この三年間、本田に振り回されていたなぁと思う。だが、本田の強化の社会は、驚くくらいに分かりやすい。それがとても悔しい。
     本田は、結婚しないのだろうか。話からして、30歳は超えていると思うが。まあ、俺が嫁に貰うからいいか。

    「本田先生、下の名前、何ですか」
    「教えません」
     あの時と同じ回答。
    「ヒントは?」
    「あげません」
     無いのかよ。
    「……女みたいな名前?」
    「……っそんな訳、無いでしょう」
     本田の眉が少し動いた。成程、女みたいな名前か。
    「花の名前?」
    「どうでしょう」
     教えてくれたらいいのに。
    「……菊」
    「……っ!何で私の名前……っ!」
     いつものどSで冷たい本田ではなく、顔が赤くなり取り乱している。可愛い。
    「菊……か。良いんじゃねえの?」
    「恥ずかしいでしょう!こんな女みたいな名前!」
    「菊……先生?」
    「名前で呼ばないで下さい。カークランドさん」
    「ドSな菊も良いけど、こっちの可愛い菊も好きだなぁ、俺は」
    「敬語を使いなさい」
     今の菊は、可愛い。もしかしたらこれが本当の菊の姿なのかもしれない。俺はチュッとわざと音を立ててキスしてやった。
    「~~っ!」
     ペロッと舌を出す。狼みたいだ、俺。
    「卒業するまで菊先生の下僕ですから」
    「……いいでしょう」
     冷静さを戻した菊が言う。

    「貴方は私の下僕です」
    「えぇ、勿論」
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