「たまには一緒に俺の部屋で飲まねえか? いい酒が手に入ったんだ」
そうランディから誘いを受けたロイドは、ならばせめてつまみくらいは作ろうかと夕食後、キッチンで簡単な物を作ってトレーに乗せ、階段を上がるとコンコンとランディの部屋をノックする。
するとドアを開け、手に持ったトレーを見て顔を綻ばせたランディに入れと促され。お邪魔します、と律儀に断りを入れたロイドが部屋に足を踏み入れれば、こっちだ、とソファの方へと手招きされた。
なのでそちらに近づいて、手に持ったトレーをテーブルに置いたロイドはランディの隣に腰かけて。お招きありがとう、とにこにこと笑顔で礼を言えば、そんなの別にいいのに、と言いつつもランディも満更でもなさそうな顔をした。
「相変わらず気が利くな。お前が作ったんだろ? これ」
「うん。まあ、そんなに大した物じゃないけど」
「そんなに謙遜しなくてもいいだろうに。充分すげえよ、俺にゃ真似出来ねえ」
「あ、ありがと」
ランディの言葉に照れたのか、ほんのりと頬を染めてはにかんだロイドが何だか可愛く見えて、頭を振ったランディをロイドは怪訝そうに見る。なので何でもない、それよりそろそろ始めるか、と誤魔化すと、あいつは男だぞ、しっかりしろ、俺、とランディは自らに言い聞かせ。どれから飲む? とテーブルの上に並べたボトルを指させば、ロイドはそちらを向いて真剣な顔で選び始めたため、ランディはほっと息を吐いた。
それから2時間ほど後。
「――でさあ、ってお~い、ロイド? 聞いてるのか?」
「んん~、……きいてるよ、らんでぃ」
「大丈夫か? ……酔いが回って眠くなってきたのか」
支援課が発足してからしばらく経ち、かなり打ち解け、気心が知れてきた仲ということもあり、すっかりくつろいだロイドはランディの肩に頭を預けるようにしてもたれかかり、眠たげに目を擦っていた。
その様子を見たランディは、少しでも眠気を飛ばしてやろうとロイドの肩を揺さぶりながら部屋に戻れと促すが、まだ大丈夫だからと言い張ったロイドはまるで口説き文句のような事を言い出して、ランディを驚かせた。
「まだ、だいじょうぶだから。……ね、もっとらんでぃのはなし、きかせて?」
「大丈夫ってお前、もう呂律が回ってねえじゃねえか。ほら、今夜はもうお開きにしようぜ? 明日も仕事だしな」
「やだ! ……らんでぃのこえ、すきだから、もっときいていたいんだ。だめ、か?」
「っな!? ……さてはだいぶ酔ってるな? まったく、んなこと言って誤解されても知らねえぞ?」
「ごかい? なんのだ?」
だがロイドには自分が何を言ったのか自覚はなく、きょとんとした顔で小首を傾げる。
そんなロイドになぜか無性に腹が立ったランディは、ロイドの頬をむにっと掴むと真顔で引っ張り始めた。
「ら、らんでぃっ!? いひゃい、いひゃいっへっ」
「うっせ。お前があんな事言うから悪いんだよ。罰としてしばらく揉まれてろ。……つか意外に柔らけえのな、お前のほっぺ。ちょっと癖になりそうだぜ」
このまましばらく離してもらえそうにないと悟ったロイドは涙を浮かべた目でランディを見上げる。その表情は主人に裏切られた犬のようで、うっ、と呻いたランディは思わずロイドの頬から手を離し、解放されたロイドはひりひりするほっぺをなでながら酷いじゃないかと文句を言う。
なので懲りたなら部屋に帰れとランディが言えば、却って意地を張ったロイドは帰らない! と言うとグイっとグラスの中の水を呷り、完全に居座る態勢に入ってしまい。
テコでも動きそうにない様子に仕方ねえなと肩を竦めたランディは他愛ない話を始め、それから30分ほどで寝落ちたロイドの頬をつつきながらため息をついたのだった。
「……あ~あ。だから部屋に帰れって言ったのに。しっかし、無防備な寝顔だな。それだけ信頼してくれてるって事なんだろうが、俺はそんな出来た人間じゃねえんだぞ? ……男だが、やっぱ可愛い面してるよな。あんな事ばっか言われちゃ、そのうち本気になっちまうかも。……食われちまっても、知らねえからな?」
「……んんぅっ」
「っはは。さて、今夜はベッドはこいつに譲って、俺はソファで寝るとしますか。……おやすみ、ロイド。良い夢を」
なお翌朝、前の晩の自分の醜態にランディのベッドの中で悶えるロイド君とそれをからかうランディという光景が発生すると思われます。拙宅のロイド君は基本お酒はそこそこ飲めるけど酔うと少し積極的に、そして大胆になってランディを翻弄して、その記憶はバッチリ残っているため翌日羞恥に悶えたりシーツにくるまってみの虫状態になってる事が多いです。自分で言うのもなんですが可愛いですね!