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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    呪専ご+う

     カラフルな傘と傘の間に見慣れた黒い制服を見つけて、遠目にその姿をなぞる。雨粒にけぶる景色の中でぼやける白い髪に気づいたところで、五条が傘も持たずに降りしきる雨の中をてくてくと歩いているのだという認識に至った。
     思わず駆け寄った庵は、五条に声をかけるより先に横から折りたたみ傘を差し出してしまった。
     五条は一度チラリと傘を見上げて、柄をたどって庵を見る。そして鼻で笑った。
    「傘なんかなくても濡れねえの、俺。歌姫は知らねえかな? 無下限呪術っていうんだけど」
    「知ってるっつの」
     呪術界に生きて、五条家の無下限呪術を知らない人間がいたらモグリだ。がなりたてそうになるのを食いしばって声音を抑える。この男、こちらの逆鱗を避けて発言することはできないのだろうか。
    「これは気持ちの問題」
    「気持ちィ?」五条が吐き捨てる。
    「こっちの寝覚めが悪くなるって言ってんの。アンタが濡れなくたって、雨は降ってんのよ」
     小雨とは言えない雨の中、傘も差さずに歩いている後輩を傘の中から見過ごすというのは、単純に居心地が悪いのだ。例えこの男が無限の隔たりをまとって雨粒を寄せつけないことを知っていたとしても、一般的には見た目に哀れが過ぎる姿を目にしておいて知らぬ顔で通り過ぎるということが、庵にはできなかった。
    「だから、これは別にアンタのためじゃない。私自身のため」
     二十センチの身長差がある相手に傘を差しかけるのは軽めの折りたたみ傘であっても腕に負担がかかるのだと、庵は初めて知った。不自然な角度を保つ二の腕が、こわばっている。
     傘を握る指先がかじかんでいるのも相まって、持ち上げている傘が風に煽られ、一度大きく傾いてしまった。慌てて手元をしかと握り直す。びたびたと、揺れたはずみに露先から落ちたのだろう大きめの水滴で肩が濡れるのを感じる。
    「こんな折りたたみ傘じゃ、相合い傘なんかしない方がマシなんじゃねえ? 二人して濡れ鼠になるわ」
     そう言った五条に、傘を取り上げられた。
    「仕方ないでしょ、これしか持ってないんだもの」
     庵が反論を返しきらないうちに、行くよ、と五条が歩きだした。傘の守りから外れないように、慌てて庵も踏み出す。
    「高専に帰るとこだったなら、アンタも駅に行くってことで構わない?」
    「あそこの角まででいい」
     まだ言うかと、喧嘩を買うつもりで傍らの後輩を見上げても、真っ直ぐ前を向いているばかりの彼とは目があわない。五条の視線を追うように前方の景色へ目を向ければ、彼が示した角に見えたのはコンビニの看板だった。
    「ビニール傘、買うから」
     それでいいんだろと言う五条の言葉に毒気を抜かれてしまう。身構えていた庵は、なんとか「……よろしい」とだけ言葉を絞り出した。

    (2110220521)
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