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    はまおぎ

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    はまおぎ

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    ご+う。
    アイス買ってこ、なんて提案するあたりは歌先生もそれなりに気安く思ってる、のかなー、どうかなーっていう。

    寄り道 五条の前を歩く庵は、数歩離れても聞こえてくる鼻歌がご機嫌ですと伝えてくる。足元がブロック舗装の歩道だったころには、右に二歩、左に四歩、また右に今度は五歩と予測の立たない動きを見せていた。ブロックのふちを踏まないという謎の制限をかけていたようで、一歩の幅が狭くてなかなか進まず、五条のコンパスで合わせるのは相当に難儀なものだった。
     アスファルト舗装の歩道を行く今、庵の一歩の幅は大きくなったが右に左に予測の立たないブレは変わりがない。人の通りは少なかった。自由に歩かせつつ、歩道幅の半分を目安に半袖から伸びる腕を引くなり黒髪の流れる背中を押すなりして交通安全を促している。
     庵の本日の宿を目前にして、ふらり、といった調子で庵の歩みが指向性を持った。大きく右にズレていく。車道とは反対側だからいいが、まさか私有地ではあるまいなと見れば、背の高い看板が二十四時間営業を告げていた。
    「アイス! アイスかってきましょ」
     駆けるとはまではいかないが、庵のスピードが上がる。さっきまでのブレが噓のように店の入り口へ一直線だ。
    「ちょっと酔っ払い、勝手に店入んないでよ」
     声をかけると、勝手に入らなければいいとでもいうのか庵は店の入り口前でぴたりと足を止めた。店には入らないままにまぶしい光を浴びて、振り返って五条を待っている。入り口そばの喫煙スペースでタバコをふかす若い男性二人が目に入れば、五条はスピードを上げざるを得なかった。同期の握るメスが脳裏にチラつく。
     五条と並んで入店した庵がカゴもとらずに向かったのは宣言通りにアイス売り場だった。
    「どれにしようかしら。たっぷりみかん、ソーダバー、バニラモナカチョコぞうりょうちう」
    「好きにしな」
     アイス程度ならカゴもいらないだろうと五条も手ぶらでアイス売り場へたどり着く。庵は商品パッケージの大文字を回りきらない滑舌で読み上げていた。端から端まで全種類のパッケージを拾い読んでいるあたり、迷っているのではなく、多分、ただ読んでいるだけだ。
    「たくさんたべると、おなかこわすじゃない」
    「胃腸の心配より先に肝臓の心配したら?」
    「かんぞう。あ、ビールのむ?」
     あ、てなんだよ。肝臓からビールって思考は一本道なのか。
     五条のツッコミも待たず、庵は不意にくるりと身を翻して移動しようとした。ふらふらと心もとない動きばかりのくせに、こういうときばかり俊敏だ。酒飲みの血がなせる技なのだろうか。
    「なんでだよ、飲まないよ。アイス食べるんだろ」
    「そうだアイス」
     五条が腕を引いて目的を思い出させれば、庵も素直にアイス売り場に向き直った。さほど迷う素振りもないまま腕を伸ばして、一つのパッケージを取り出す。
    「ソーダにしーよう」
    「こら、レジこっち。酒売り場には行かない」
     五条はモナカを引き上げた。庵の手からソーダアイスをピックアップして、二つまとめてお会計だ。ビニール袋は断り、コンビニを出て喫煙スペースとは反対のスペースで食べていくことにする。
    「みて、ごじょのめ」
     庵がパッケージから取り出した空色のアイスキャンディーを、横にして五条の方へ掲げている。庵の側から見たら五条の目元を覆う形で青が横切っていることだろう。
    「色の話してる? 僕の目、そんな白くくすんでないから。もっと透き通ってキラッキラだから」
    「もんくいうな」
     いー、と庵が威嚇をしてくる。知ってますか世間の皆さん、この人これで僕より三つ年上なんですよ。
     そのまま口を開けた庵はアイスにかぶりついた。しゃく、と音が立つ。目を閉じて、んんんとうなっているのは、味わっているということなのか。
    「人の目って言いながらかじりつくアイスの味はどう?」
    「おいしーでーす」
    「あっそ」
     ならそのまま、おとなしく食べきっちゃって。
     家入、七海、伊地知と、五条、庵に分かれてタクシーに乗るつもりだった。それが叶っていれば早かったのは分かっている。今ごろは庵を宿に放り投げたあとで五条自身も帰宅できていただろう。三人の乗ったタクシーを見送った後で「わたし、あるく」と有言実行で歩きだした庵を追って今がある。まあ、こちらの行程でも宿まではあと少しだ。
     五条もモナカの袋を開ける。庵の食べるペースはそれほどでもないが、酔っ払いだ、またいつ唐突に動き出すか分からない。口を開けて、いつもより大きめのひと口でモナカにかじりついた。

    (2112021142)
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