十四、手の甲(敬愛) 咳き込むと血の味がした。傷はあちこちにあって、どれが一番深いかわからない。周りを見てもにたりよったりだ。隊長の大包平は傷よりも痛い顔をしていた。
小竜はマントを正し、大包平の足元に跪いた。
「小竜?」
小竜は微笑むと大包平の手を取る。そして、小竜はその手の甲に口づけた。ごつごつした大包平の手の甲に小竜の薄い唇が触れる。
小竜はゆっくりとした動作で立ち上がる。
「たとえ、帰れなくなっても、俺はキミの采配を信じるよ」
小竜はまっすぐに大包平を見つめる。
信じると言われた。なら、それに報いなくてはならない。
「必ず、全員連れて帰る」
大包平ははっきりとそう言った。瞳に光が戻っている。
もう大丈夫。小竜は視線を大包平と同じ方へ向ける。黒い土煙が向こうから迫ってくる。
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