完全犯罪 ●
はぁ。はぁ。
荒い吐息。震える身体。暗い山の中。その者は必死に土を掘る。その傍らには頭から血を流した死体が、夜空に目玉を見開いていた。
――そんな、昼下がりの刑事ドラマのワンシーンを、ソファの伊緒はドーナツを齧りながら眺めている。
そのすぐ傍のちゃぶ台では、奉一がUGN関連の書類の確認をしていた――偶に眉間を揉みながら。隻眼は書類を向いているが、耳はたまに刑事ドラマの音声を拾っていた
「山に死体を埋めるのって定番ネタじゃん?」
おもむろに、テレビを見たまま伊緒が言う。ちょうど死体に土がかけられていく――じゃっくじゃっくとシャベルの音。奉一は無言だが意識をちょっと伊緒に向けて、言葉の続きを促した。彼はドーナツを飲み込み、こう言う。
1973