吸入が下手くそな一織・医パロその日、風邪を引いたと天の外来に訪れたのは、陸を伴った一織であった。
「私一人で、っく、大丈夫、っけん」
「もー、俺もそこまで弱くないから咳くらいしても大丈夫だってば」
そういいながら賑やかに診察室に入ってきた二人を天は一睨みして黙らせた。
「君たち、ここが病院なの分かってる?」
「っけん、九条、せんせ、からっこん、言ってくださ、っごほごほ」
話してる間中咳込んでいる一織は、陸に背中を摩られているのにも関わらずそう言いだした。
「君、そんな状態でよく陸に帰れなんて言えたね」
半分呆れながら天がそういうと、陸も苦笑い気味だ。
「っこほ、うつったら、」
「はいはい。ほら、診察するからこっち向いて」
まだなお陸に文句を言おうとしている一織をやや強引に天の方へ向けさせると、こんこんとせき込みだした。
「陸、どれくらいからこんな感じ?」
「少なくとも昨日の夜はもうこんな感じ。気づいたらせき込んでて、夜間に行こうか悩むくらいはひどかったよ」
「そう……」
「熱が上がってきたのは夜中くらいかな。そのころはたぶん、熱高すぎて一織も記憶ないんじゃない?」
「知りませんでした……」
「そんなにひどかったなら夜間に来ればよかったのに」
「うーん。でも咳がひどかったから、やっぱり天にぃに見てもらった方がいいかな、って」
「げほ、っこほ、は、ふ、ぅ、」
「ちょっと落ち着いた?」
「は、い」
「あまり吸えてませんね……もう一回しましょうか」
「鼻から吸って口から吐くんだよ」
「やってるつもりなんですけど」
「出来てないねぇ……慣れてないからかな?」
「そりゃ、陸君に比べれば、ねぇ」
「とりあえず、もう一回しとこうか。多分今のままじゃあんまり効果ないし」
そう言ってもう一度吸入を受けさせられたが、陸も見ていた看護師も苦笑い気味だ。
「ちょっと、何にそんなに時間かかってるの?」
「天に、九条先生」
「? 吸入、そんなに長時間は指示してないはずだけど」
「一織、吸入下手くそで、あんまり吸えてなかったみたい。ちょっと効果弱いかも」
「吸入が?」
「そうそう」
「一織、前開けるよ」
有無を言わさず一織の服の前をはだけさせた天は、首にかけていたステートを一織に当て、苦笑いした。
「あぁ、うん。なるほどね。確かに、あんまり吸えてないね」
呼吸状態が変わっていないのだという天は、どうしようかな、と思案しているようだった。
「」