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    Teba_Somewhere

    @Teba_Somewhere

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    Teba_Somewhere

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    診断メーカーで出た最初と最後使うやつ。女の子二人で旅行に行くだけなのになんかヤバいぐらい主人公がひねくれていますが、ミュミュはこういうでこぼこコンビが好きです。

    レウカディアン ずっと子供でいたかった。そうすれば、少なくとも他人の気持ちを事細かに知りたいなんて思わなかったろう。つくづく碌でもないなと攻め立てるように、冬の空は寒さを突き刺してくる。
     十年来の友達と、それも二人きりで何処かに行こうといわれて、子供っぽくはしゃいでいたのは言うまでもない。出発前に母親に茶化されたので、大いにブチギレて来たのは己の心を正当化するのと、困ったほどに他人の友人を貶す性質に嫌気が差したからである。
     そんな黒い感情も、持ってるだけ無駄だと感じるくらいに、変わったなあという気分に心が一新される。それと同時に、自分の変わらなさに自意識が変わるような気さえしてきた。気を取り直して、駅まで向かう車の中で、今までのことやこれからのことを話していると、「かわいい」と世事のつもりで言ったハズが、数分後には本気になっているもんだから、自分でも呆れてくるのがよく分かった。
     あの頃の純粋さはどこへやら、自信を無くし、本来伸びるべきだった能力をすべて引きこもりに割いてしまったせいで、すでに周りには雲泥の差を開かせていた。さらに、どこで手に入れたか、それに見合わないプライドと負けず嫌いもすこぶる影響しただろう。最近は、だいぶ己の非があるところを認められるようにはなってきたが。
     それでもなお、届かないのだ。だから親が怖くてと言おうものなら「好きなようにすればいい」なんて簡単に言ってくれる。然るに、怖がっておきながら、現状に満足していると諭されたわけである。もちろん、この隣にいる自信の塊は、そんなひねくれた言い方をしないのだが、受け取り手がこうもひねくれているが故にそう思わなければ「今まで通りに」会話ができる気がしなかったからだ。この小旅行ですら、猜疑心が靄のように相手の顔あたりに掛かってきては、とてもじゃないが自分の怠惰な目に映していい筈がない、といつもの人見知りが心を跋扈する。それなのに、

    「サングラス見てみてよ、ちょっと光が収まるでしょ?」

     なんていうもんだから、つくづくこいつには適わないな、と内心海に身を投げたくもなった。それでもまだ、自分が眼鏡を掛け始め、かなり薄いサングラスをかけた経験があったために、すんなりと相手のサングラスを覗く気にはなれたのだが。

    「おーほんとだ。いいなあ。」

     この時ほど自分の語彙がないことを恨んだことはない。当たり障りのない会話にしようとそういう返事しかしなくなっていた自分を呪いたいくらいでもある。これでは何年女をやってるんだといわれてもどうしようもない。かといって、そんな素っ気ない返答だけだと話を聞いてないと思われそうではある。そんな葛藤をしながら出した答えが「いいなあ」なのだ。
     いいなあと言うくせに何もやらないと思う方がいるかもしれないが、それどころではないのである。だから、買えばいいのにという返答がくると宿題をやっていないけどやったと言わないと怒られる、というような状態になるのだ。いかにも、自分はひねくれていて、そのくせプライドと人に嫌われたくない気持ちだけが強いのである。
     それでもなお、こうして旅行に行こうと誘ってくれるのがどれほど乾いた心に沁みたかは言葉では表せない。そんな性分であるから、旅行が終わった時にはすでに心の中にいた乙女心は年の暮れにもかかわらず元気に活動し始めていた。
     だからもう終わりなんだ、なんて己のときめきに逃避をしては、この厳冬が過ぎるのを待つしかないのだ。朱夏のごとき恋心は、差すような寒さで落ち着けてこそ大人だろうと思うから。
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