ハロウィンとか相談所(2)「調味市長?」
そこには、普段はテレビか街頭ポスターでしか見る事の無い人物が立っていた。「なんで市長がウチに?」という疑問は一切顔に出さず、霊幻は得意の営業スマイルを浮かべる。
本来なら「さ、弟子2号。市長にお茶の準備を」と言いたいところだろうが、あいにく人魂型のエクボでは役に立たない。まぁ、仮に体を借りた状態であったとしても「誰が弟子2号だ!!」とへそを曲げられてしまっただろうから、結局「霊幻がお茶を用意する」という未来に変わりは無いのだが。
「早速ですが、どのようなご用件で」
学校の祝辞だって代理人が読むというのに、市長直々という事はよっぽどの事情に違いない。
市長はゆっくりとお茶を一口飲み下すと、来訪の理由を霊幻に告げるべく口を開いた。
「実は、今年、市をあげてのハロウィンイベントを行う事になりまして」
「……はぁ」
もっと「市役所に霊が出て困る」とか「住民から同じような内容の申し出が相次いでいる」等を想像していた霊幻は、つい間の抜けた返事をしてしまう。
「そこで、○○監修という事で是非とも霊幻先生のお名前をお借りしたくーー」
緊張しているのか、市長は残りのお茶を一気に飲み干した。
「はは~ん」
市長に見えないのを良いことに、エクボは残り少ない貴重な資源生い茂る市長ヘッドに腰掛ける。これが悪霊では無くハエだったとしたらツルリと滑り落ち落ちていたかもしれない。
「コイツはお前さんの記者会見観てココに来たな」
全国的な知名度、本物と感じざるを得ない当日のアクシデント。これ以上ネームバリューを持った人物は調味市中を探しても他にいないだろう。
『ま、実際はコイツに霊力なんてないし、仕事は繁盛どころか今だって暇をもて余してたんだがな』とはエクボの心の声である。
「先生はお忙しいでしょうから、先生ご推薦の方でも……なにぶん、こういった分野に知り合いがおりませんもので……」
そこで霊幻はーー