ミラクルメイカーは現れた「満月ってヤツはどうしてこうも主張が激しいんだか」
それを背負っても仕事をやりおおせる超一流の怪盗も今日ばかりはうっとうしげに空を仰ぐ。
「そんでどーして、こんなに、似てんのかねぇ……」
ひとつでもこんなに眩しいのに、ふたつあってはほとんど目がつぶれるほど。そんな光をジョーカーは幾年にもわたって浴びてきた。
月に一度の満月は、いつだってそれを思い出させる。
「今度はどこでドジ踏んでんだか」
一番弟子に対するには意地の悪い言葉を、ぽんと放るーーまさか受け止められるとは思いもよらず。月が影に遮られ。
「ちょっと! ドジ踏んでるって決めつけないでくださいよ!」
言葉が降る。忍者姿の少年はムササビの術を使い滑空し、なんとその手にはジョーカーが狙っていたお宝が握られていた!
「あーっ! それはオレの!」
「ジョーカーさん遅いんですもん。お先にっス〜」
「なっまいき言いやがってー!」
ビル街の乱立するここではスカイジョーカーは呼び出せない。何かないか、奇跡の糸口は! 忙しなくあたりを見まわし、弟子を見上げるその顔には、それまでの退屈そうな色はひとつもない。
待ち人が来たりて去りゆくならば、捕まえるのが怪盗だ。
「宝を奪って、今日の晩ご飯と明日の朝飯も作らせてやる!!」
「もうちょっとカッコいい宣言出来ないんスか!」
聞き慣れたツッコミがこれ以上離れる前に。ジョーカーは潤んだ瞳をひとつ閉じ。