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    sh14302595

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    ジョハチ

    #ジョハチ

    膝枕ふに、ふに……
    ほど良い弾力だった。

    手に引かれるまま横向きに寝転がってすぐ頭を置くところとして定めたそれは、ジョーカーの頬を受け止め跳ね返す。反動が強かったのだろう、ぺちんと頬をはたかれハッとしたジョーカーが恐る恐る頬を離し、また近づくとそれは今度はやわくジョーカーを受け止めた。

    「なにこれやわらけえええ〜〜……」

    声すら頬から下へと吸い取られるかのようだ。体は既に陥落し、顔がだらしなく緩む。
    そんなグズグズになったジョーカーを、彼の弟子のハチが得意そうな顔で見下ろしていた。何を隠そう、ジョーカーが枕にしているそれは、ハチのふとももなのだ。

    『ハチはいつまで経ってもお子ちゃま体型だなぁ』
    ことの始まりは、ジョーカーのそんな心ない一言だった。
    ふたりが出会ってから数年が過ぎたがハチの成長期はいまだに訪れず、ハチは抱えやすいサイズのままだった。
    ジョーカーからすれば弟子としてジョーカーに継ぐミラクルメーカーへと順調に成長しているハチだ。成長のスピードはともかく、ジョーカーの思考を読んだり、トリックを自ら考え状況を打破しようとしたりと、着実に変化を遂げている姿は誇らしくもあり、さみしくもある。だからこそハチの肉体の変化のなさは、ジョーカーにとって便利7割、嬉しさが3割であり、その複雑な心がひと言に表れてしまった。
    しかしハチもそんな屈折したジョーカーの愛を数年受けてきた身だ。ひどいっスよ! の言葉は嘆きではなく、抗議としてジョーカーに届けられた。
    『見た目は子どもかもしれないけど、オイラ、筋肉はすごいんスから!』
    確かめてみてください! 
    そう言って、ハチはジョーカーの頭を傾け自身のふとももに乗せさせた、というわけ。

    「どうっスか、オイラの筋肉は! すごいでしょ!」
    「いや筋肉ではないだろ。でもすごい…きもちいぃ〜〜……」
    気持ちのいい湯に浸かった時の声が、声帯よりもっと奥から出てくる。
    実際忍の末裔として忍術学園で学んだハチは身体能力は折り紙付きで、年に見合わない怪力だって持っている。大腿筋が鍛えられているのも当然、また、力を入れていない時の筋肉はやわらかいものだが、ジョーカーは頑なに認めない。
    「落としますよ」
    ハチがじっとりと目を向けてようやく、ジョーカーは慌てたようだった。
    「やだ!! 落ちる時はお前のふともももいっしょだからな!」
    「どんだけ気に入ってるんスか」
    まるで子どものような駄々をこねるジョーカーに、ハチも気が抜けて少し笑ってしまう。思わず弟妹たちにするように、真下の柔らかな髪を掬ってはさらさらと流せば、もっとと言わんばかりにハチの手のひらへぐりぐりと頭がねだってくる。
    「まったく、ジョーカーさんは仕方ないっスねえ」
    ジョーカーと過ごしたこの数年間はあまりに濃くて、まるで何十年とジョーカーと過ごしたような気がする。だからハチには、ジョーカーの頑固さの裏にある不安も、さみしさもお見通しだった。
    (そんなにこわがることないのに)
    言葉にするとジョーカーは怯えてしまうので、かわりにハチはくふくふと笑った。ハチがどんなに成長して変わっていっても、こうしてジョーカーと共に過ごす時間は変わらない。だって、ここがハチの家で、帰る場所だ。
    結局ジョーカーは筋肉と認めなかったし、ハチはそれを笑みと共に許したのだった。



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    sakikuryo

    REHABILI高杉社長について書きたい咲紅さんはあの川の土手にいっせいに彼岸花が咲く頃、国道にかかるしろい歩道橋の上で認めざるを得なかった変容についての話をしてください。

    #さみしいなにかをかく #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/595943
    社長+ぐだ謎の時空の謎のレイシフトだと思ってふわっと読むことを推奨
    社長+ぐだ
    ぐだの性別はふわっと不問

    ==
     股の下をくぐって大型車が何台も行き来するというのは、ことによると吹っ飛ばされそうな心許無さを感ずるものらしいが、その点、高杉は状況をいくらでも楽しむ度量があった。酔狂と言い換えてもいい。直接触れたわけでもないのに、アスファルトの振動が柱を伝って、片側二車線道路を大きく跨いだ歩行者用の橋を震わせる。
     歩道橋のさびた手摺を掴み、うわあ、と小さく呟いたマスターはと言えば、ワイバーンに追われている時よりも、ともすると、危機感めいたものを横顔に湛えている。おかしなやつだ。高杉はそう思って、しかしふと、よく知っているからこそ怖いこともあるのだろうと思い直した。ピストルを不用意にべたべた触るのはピストルが何なのか知らないからだ。絵巻の中の妖怪にできることだってたかが知れている。高杉にとっては呪いの類よりも刀のほうが、生々しく死を感じさせるものだったし、あるいは畳に敷かれた布団のほうがおぞましく生を鈍らせるものだった。自分より百年か二百年、後の世に生まれたマスターなら、巨大なイソギンチャク以上にお四トントラックが恐ろしいことだってあるのだろう。
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