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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
    pixiv⇨https://www.pixiv.net/users/68325823

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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第二部14話
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の14話です。
    ついに女王は姫を下働きに貶めることにした。その背後にある想いは……。
    (本文約1500文字/コラム「ハントマンは何者か?」約2000文字)
    今回はコラムの方が長くなってしまいました😅

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部⑭話「女王の決意」 美しき女王グリムヒルデは、スノーホワイト姫を修行させるため離宮へと移した。離宮では姫の身分は隠し、ボロを着せ、召使いの仕事の中でも最も卑しい仕事……床掃除やゴミの始末、水くみなどをやらせることにした。
     王城に置いたままでは、姫を召使いの身に落としたことがひと目でわかってしまう。それでは姫に同情するものも多く、良からぬ噂の元にもなるだろうという考えからだった。
     おおやけには「姫はお心がすぐれず、静養のために引きこもっている」ということになっていた。
     離宮へ姫を連れて行ったのは、女王の腹心の部下ハントマン。彼は、ボロをまとった姫を伴い、ひっそりと宵闇よいやみにまぎれて城を出た。そして離宮に着くと、召使い頭に「新しい下働きを連れてきた。てて無し子を女王陛下が哀れんで、職を与えよとのありがたいお申し出である」といって姫を送り込んだのだった。
     もちろん姫は、身分を言ってはならないと固く口止めをされていた。お前のためだと言い含められた姫は、それを信じて言われたことを素直に守ったので、離宮では誰一人として、このボロをまとったみすぼらしい少女が亡き王の娘、王座継承第一位の姫だとは気づかず、「下働きが増えた」としか思わなかったのだった。

     女王は、姫を送り出すと、ディアヴァルと共に自室の窓から馬車を見送った。月明かりの中、次第に遠くなる馬車の後ろ姿は、ほどなく闇の中へと溶けて消えた。それでもしばし、遠く馬車の去った方角を見つめて立つ女王の姿は気高く荘厳そうごんですらあったが、一抹の寂しさがにじんで見えた。やがて、女王はふっと息を吐くと、窓を締め、杖の上のディアヴァルをとまり木へと移した。
     そして女王は問わず語りに話し始めた……。
    可愛い子マイ・ディア、あの子は行ってしまったわ。私がそうさせたから。……お前は私が冷たい母だと思うかしら?」
     ディアヴァルは、一生懸命練習した人間語で「ノー! ノー! ノー!」と言った。
    「……ありがとう。こんなこと、せずに済めば良かったのにね。……でも、私は母である前に、この国をべる女王としてしっかりしていなくてはならないの。後継者を立派に育て上げるのは玉座に座る者の勤めなのよ。国を導くものが愚かだったら、その代償を民草たみくさが払う羽目になる。それだけは避けなくてはならないのよ」
     そう言いながら、女王は自分のてのひらに目を落とした。
    「私は庶民の出だから、姫が知らない人の裏表もたくさん見てきたわ。それが今でも役に立っている。私は姫の育て方を間違えた。もっときちんと姫と向き合い、私の手で育てるべきだった。忙しさにかまけて召使いに教育を任せきりにし、父をなくした可哀相な娘に母をなくした私の痛みを重ねて甘やかしてしまったのよ。ああ……。愛しい我が君、私はなんと愚かだったのでしょう!!」
     そういうと女王は両手で顔を覆い、椅子の上で深くうなだれた。
     ディアヴァルは、そんな時いつもするように、黙って女王の椅子の背に飛び移り、そっと女王の髪の毛をくちばしでいてあげるのだった。
     しばしの静寂が部屋に流れた。打ちひしがれた女王はやがて起き直り、いつものように姿勢を正した。
    「今からでも遅くない。過ちはつぐなわなければなりません。このままでは亡き我が君に顔向けが出来ない。あの方の一粒種ひとつぶだねをこんなにも愚かに育ててしまった……」
     そう言うと、女王は深々とため息を付いた。
     ディアヴァルは何も言わず、そっと女王に寄り添うのだった。



    【コラム:ハントマンについて】
    今回は豆知識ではなく、ちょっとした疑問について書いてみます。
    題して「ハントマンの謎」。
    ハントマンって謎の存在ですよね。原作アニメと民話で共通の登場人物ですが、お城の女王さまが、なんでただの狩人と知り合いなのでしょう。ましてや汚れ仕事を頼めるほど信頼してるってどういう関係なの?と思いませんか。
    もともとの民話にしろ、Dアニメ版にしろ、おとぎ話なのでそういう疑問は掘り下げられていませんが、気になるものは気になる!
    ハントマンって何者なの?!
    考えてみた仮説は、2つ。順にご紹介します。

    1つ目は、ハントマン=隠密おんみつ説。
    隠密というのは、江戸幕府の密偵です。時代劇ファンにはおなじみですね。
    Wikiって見ると、下記のように書いてあります。

    「隠密は南北朝時代から存在したが、隠密が「忍びの者」すなわち忍者として活躍したのは戦国時代で、戦乱の終息に伴い幕府や諸大名 に属した。江戸時代初期(寛永初年頃)まで伊賀忍者や甲賀忍者の一部は、幕府に登用され隠密としての職務をつかさどったが、幕府の組織や職制が固まるにつれ(中略)城中の警備任務中心へと変貌していった。
    その後の幕府において隠密は、3代将軍家光時代に御側配下の「監察機構」[、8代将軍吉宗時代に御側御用取次おそばごようとりつぎ配下の「御庭番おにわばん」が機関として創設された。
    また、町奉行の同心が行っていた三廻さんまわりのうちに江戸市中の風説を調査する「隠密廻おんみつまわり」が存在していた。 」
    Wikipedia「隠密」:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%A0%E5%AF%86

    色々な役職が出てきますが、この中では「御庭番」が一番イメージが近いかも知れません。またちょっと引用してみます。

    「御庭番(おにわばん)は、江戸時代の第8代将軍・徳川吉宗が設けた幕府の役職。将軍から直接の命令を受けて秘密諜報ちょうほう活動を行った隠密を指した。
    諜報活動といえど、実際には時々命令を受けて、江戸市中の情報を将軍に報告したり、身分を隠して地方におもむき情勢を視察していた程度だといわれている。(中略)一般にはいわゆる間者かんじゃや忍者の類だったとする御庭番像が広まっており、時代劇や時代小説などではそのような描写が数多くなされている」
    (Wikipedia「御庭番」:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E5%BA%AD%E7%95%AA)

    簡単に言っちゃうと、スパイですね。政府の犬ってやつ。
    これなら女王の命令の元、汚れ仕事も引受けて滅私奉公めっしほうこうしても違和感はないですね。

    もう一つの仮説としては「森番もりばん」を上げたいです。
    民話の白雪姫もDアニメ版白雪姫も、Wikiってみてもハントマンは狩人としか書かれていないのですが、森に詳しく貴人が用いることもある。これって森番かもしれないぞ?と。
    ところがこの「森番」検索してもWikipediaでは「森林官」に転送されてしまう。違うそうじゃない。近現代じゃなく中世を知りたいんじゃ!
    そこで、見つけたのがこちらのブログです。

    ・実は嫌われ者だった森番
    http://medival.seesaa.net/article/461279090.html
    こちらを拝読すると、もともとは民草の共有地だった森を支配者層が専有してしまい、その権益を護るために配置した下級役人が森番なのだそうです。

    以下引用します。
    「初期は特に所有権が存在していなかったり、近隣の村などが所有権を有してましたが時がたつにつれ領主や王が所有権を主張、それに関する法律などができました。
     例:イギリスの「森林法」など
     そして森林の巡視じゅんしを行う委員会や裁判所などが整えられたのです。森番もその組織の一役割にすぎませんでした。
    森林長官→林務官→樹木管理官→森番という順列でしたので地位としては低いものでした。与えられた役割は密漁者の取り締まりや所有者が狩りや祭りで訪れた際の獲物の保護などを担当していました。」

    この下級役人である森番は、実は嫌われ者だったとのこと。密猟の取締といっても、元はと言えば地元住民の共有地だった森から彼らを締め出してしまったわけですから、イメージが悪いのも当然ですね。しかも色々とズルをして役得も得ていたとのこと。ますますイメージが悪くなってしまいます。
    時代劇の岡っ引きと実際の岡っ引きの違いみたいな感じでしょうか。
    現代のレンジャーとは大違いですね!

    森に詳しく、神出鬼没、汚れ仕事も引き受ける森番。
    そこに隠密要素を一つまみ!
    ハントマンって、そんな存在なのかもしれませんね。
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    😍😍😍
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部23話。
    後のクロウリー学園長=大鴉のディアヴァルの物語、美しき女王編の23話。七人の小人たちが小屋へ戻ってくる!女王の扮する老婆は危機を告げるディアヴァルに促されてその場を逃げ出したが…。(本文約2600文字/今回、豆知識はお休みです)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部㉓話「老婆と七人の小人たち」 ディアヴァルにかされて、老婆にふんした女王は森の中へと走り込んでいった。
     ディアヴァルが空に舞い上がって偵察してみると、木立の隙間からちらちらと、小人ドワーフたちが転んだり滑ったりしながらも家を目指して走っているのが見えた。あいつらあんなに足が短いくせに、なんであんなに早いんだ? それなのに、老婆の姿の女王は早く走ることが出来ない。早くも息をはずませて、苦しそうに走っている。ディアヴァルは女王の直ぐ側まで舞い降りると、枝から枝へと飛び移りながら女王の後を付いて行った。
     女王は森の踏み分け道を走って戻っていく。その後ろから、大声で叫ぶ怒った小人ドワーフたちの声がかすかに聞こえ始めた。このままでは追いつかれてしまう! どうすれば良いのだろうか? ディアヴァルは女王のそばを離れ、小人ドワーフたちの方へと戻っていった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第二部1.5話「出会い」後編
    構想が固まらず止まっていた二部ですが強引に再起動。試運転的に出会いシーンの続き、王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の出会いを書きました。
    アニメ版「白雪姫」には無いシーンで「みんなが知らない白雪姫」の筋立てとも違っていますが書きやすい方向に進んでみます。最後にカラス(鳥類)の豆知識(異種族恋愛事情)付き。豆知識は恒例にしたいです☺(本文1327文字)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部1.5話「王との出会い」(第一話前半はこちら⇨https://poipiku.com/3625622/6059932.html)


     大鴉おおがらすのディアヴァルは、美しい乙女の姿に見惚みほれていた。
     なんと美しい髪の毛。瞳も、顔も、何もかも完璧な美の化身としか思えない。いくらでも眺めていることができる。
     彼のこれまでの生涯で、こんな気持ちになるのは初めてのことだった。
     心臓がドキドキして胸が苦しく身体は熱くなって、クロウタドリの様に歌いたいような、ハヤブサの様に飛翔したくなるような、得も言われぬ心地がする。
     この奇妙な心地は何なのだろう。まるで何か魔法にでも掛かったみたいだ。そう思っているその時、乙女の家の門の前に立派な馬に乗った男が供を何人も連れて通りかかった。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第4話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第4話です。
    今回は王妃グリムヒルデと白雪姫の仲睦まじいティータイムにディアヴァルがお邪魔します。こんなにも仲睦まじい二人がなぜあんなことになってしまうのか、それは今後のお楽しみ…。(本文1940文字)

    ※今回の豆知識はWIRED誌から、鳥の「名付け」について。そう、鳥たちも「名前」を持っているのです……!
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部四話「小さなお茶会」 華やかな結婚式から数日後。王城の庭園で虫を漁っていたディアヴァルは、新王妃グリムヒルデと小さな女の子がやってくるのに気がついた。女の子は、結婚式でドレスの裳裾もすそを持っていたあの子だ。参列者からは姫と言われていた。年の頃は6歳かそこらだろうか。どうも人間の子どもの年齢はわかりにくい。
     グリムヒルデは、幼い姫の手を引いて庭園の東屋あずまやをめざしているようだ。片手にはバスケットを下げている。
    「東屋についたらおやつを頂きましょうね」と、グリムヒルデは小さな姫に声をかけた。
    「はい、おかあしゃま!」と元気よく姫が答える。
     ディアヴァルには、その声や口調は、見た感じの年齢より少しばかり幼く感じられた。だがその幼さは姫をより愛らしく見せているとも思った。
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第8話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第8話です。
    王妃と再会したディアヴァルは、ずっと側にいて欲しいと言われて幸福に酔いしれるのだった。そこへ誰かがドアを開けて入ってきた…。(本文約1630文字/豆知識は今回はお休みです。支部移植字に話数が減る予定なので今回はそれを見込んでの調整です)
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部八話「命名」 ディアヴァルが王妃グリムヒルデに背中を撫でられて恍惚こうこつとなっていたその時、部屋のドアがキィっと開く音がした。
     誰か来た?! まさか追い払われたりはしないだろうか。王妃に魔女の疑いがかかってしまったりしたらどうしよう……。
     そんな心配が頭の中を駆け巡る。
     だが、次の瞬間、部屋に飛び込んできたのはスノーホワイト姫だった。
    「おかあしゃま、あのね……」
     そう言いかけた姫の顔はたいそう寂しげで、ディアヴァルはこんな小さな女の子がこんなにも寂しげな顔をするなんて、と胸を痛めた。が、次の瞬間、姫の顔がぱっと輝いた。
    「あっ!! カラスしゃん!! カラスしゃんだ!!」
    「そうよ、カラスさんが遊びに来てくれたのよ」
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    銀鳩堂

    PROGRESSヤンクロ第2部第3話
    後にクロウリーが学園長となるカラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第三話です。
    今回は王とグリムヒルデ(後の美しき女王)の結婚式のシーンです。
    本文約1450文字+カラス豆知識約740文字のおまけ付き。今回の豆知識はカラスがお互いを確認する方法「コンタクトコール」についてです(資料リンクあり)。
    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部三話「結婚式」 五月のよく晴れた朝、王城は晴ればれとした雰囲気に包まれていた。
     城のすべての尖塔に美しい三角旗がはためき、城門は春の花々を編み込んだ花綱で飾り立てられて開放されている。城門からは次々と来客が流れ込み、城はかつてない賑わいに沸き立っていた。
     今日は、この国の王が新たな王妃をめとる、その結婚の式典が催されるのだ。城の庭園は民草にも開放され、たくさんのご馳走と飲み物が振る舞われる。
     麗々しい式典のクライマックスは、正午の結婚の誓いだ。国の最も高位の聖職者がやってきて王と新たな王妃の誓いに立ち会い、この結婚に祝福を与えることになっている。
     その場には、もちろんディアヴァルも訪れていた。なにせ不吉とされてしまうカラスの身、あまりおおっぴらに姿を表すことはしなかったけれど、物陰から人々を観察し、ちらりとでもグリムヒルデの姿が見えないかと期待していたのだ。
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