支度(ギュネアム)ー い、ーきろ
声が聞こえる。心地いい声。
ーおい、ーうすぐ朝ーだぞ
でもどんどんうるさくなってくる。ゆっくり寝させてくれ。
ー起きてるだろ絶対
起きてない起きてない…
「ふふ、あと30ぷん…」
「やっぱり起きてんじゃねーか!」
ガバッと勢いよく布団を取り除くと、下着姿で丸まっている彼が目に飛び込んでくる。うっ…朝から心臓に負担がかかる…。なんでこんなだらしない大人を好きになったのか…。
「少佐!いい加減自分で起きてください!」
「うーーん……………あ…たきかわくん?」
「誰だよ!ギュネイだ!!アンタを起こしに来たギュネイ・ガス准尉!!」
「わかってるわかってる…」
「全然わかってないだろ」
こんなやりとりを毎朝やっているが、不思議と嫌ではない。…疲れるが。
初めは、何で俺がと文句を言っていたが、よく考えたらこんな上司の姿を他の奴らに晒したらどうなか…。少なくとも、俺は我慢しているぞ、いろいろな!偉いぞギュネイ・ガス!(やけくそ)
すると、アムロがのそのそと起きてきて、目を擦りながら着替えに手を取る。
「おはよう」
「おはようございます」
「今日は朝礼の後、大佐と会議です。さっさと支度しますよ」
「…………小鳥さん、おはよう」
「嫌だからって話を逸らすな」
2回目の挨拶を壁に向かってやったアムロに対して、遠慮なく脇腹にチョップを入れる。年寄りには優しくしろよって痛みに唸りながら言ってるが、無視して『アムロの』支度に取り掛かる。
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「……ギュネイってさぁ」
「あ?」
トイレ掃除の当番仕事をしていると、同じ当番だった同期が話しかけきた。デッキブラシで床を掃除していた手を止める。
「護衛の仕事って、少佐の世話役もするのか?」
「は?」
「だってさぁ、毎朝起こしに行ったりスケジュール管理とかもしてさぁ…」
「それは仕事とかじゃねーけど…」
考えてみると、確かにそうだ。うん。
「………そういえばそうだよな」
「だろ?」
「俺が好きで世話焼いてるみたいになってるもんな」
「周りはそう思ってるかもだぜ」
「冗談やめろよ!…よし決めた、明日は普通に朝礼出る」
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ー朝礼10分前ー
「なぁ…ギュネイ」
「あ?」
「昨日あんなこと言ったけどさぁ、少佐…起きてくるのか?」
「今日は絶対行かない。自業自得だ」
「でも、少佐来なかったら、もちろん少佐は怒られるだろうけどさ、ギュネイも大佐に怒られるんじゃないか?」
「知らない。俺の仕事は少佐を起こす事じゃない」
「まぁ、間違いなく護衛は降ろされるだろうなぁ〜」
「………………………」
ーーバンッ!
「起きろアムローーーーーッ!!!!!!」
今日も朝からいつもの護衛官の声がネオ・ジオンに響いた。
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(結局起こしに行ったじゃん)
(うるせ)
(護衛降ろされるの、そんなに嫌だったか?)
(そ、そんなのじゃねーよ)
(じゃあアムロ少佐のこと好きなのか?)
(な、なっ、なな、なななな、なななんでそうなるんだよ!)
(わっっっっかりやすいなぁ…)