愛を重ねて 撮影合間の休憩中、スマホが震えトークアプリを開くと予想通りあいつからのメッセージが来ていた。
『街中で玲央発見!』
と言うメッセージと共に送られた写真を見て思わずにやけそうになる。そろそろ貼り出すと聞いていた広告のポスターと共に一緒に撮っている姿ははしゃぎすぎてまるで子供のようだった。
「はしゃぎすぎだ、ばーか…と」
送ると怒ったようなむくれたようなスタンプが帰ってきて吹き出してしまいそうになる。
「あー…ほんと、いいな」
モデルという仕事上色んな人の視線に晒されそれを気にしないわけにもいかない俺はこういう無邪気なところによく救われていると感じる。
そしてそんな笑顔に頬を緩めつつもあることを伝える決意をする。
と、スタッフに名前を呼ばれ仕事に戻ることを伝えスマホを荷物の中へと戻し、ライトの元へと向かっていった。
***
翌日が久々に休みが重なったある日俺は覚悟を抱きつつあいつの家へと訪れていた。久々に過ごす二人きりの時間に喜びを感じつつも就寝前の時間、あることを伝えるために呼び止めた。
「こっち、」
頭にクエスチョンマークを浮かべたままベッドの上の俺の隣に腰掛ける。
「どうしたの、玲央?」
「……話が、あるんだ」
「……ハッ、も、もしかして…!」
「別れ話とかそんなんじゃねぇから!」
「よ、よかった〜…すごく真剣な顔してるから焦っちゃったよ」
「なんで別れるんだよ!…俺がお前のことどんなに好きなのかお前は知ってるはずだけど?」
「ふふっ、うん、知ってる」
「……何、ニヤついてんだよ」
そうやって頬を摘むがこいつはニヤつくだけでそれがまた俺を喜ばせていく。
頬から手を離すとゆっくりとその手を握った。
「えっと、さ……」
「うん」
「仕事とか色々あってお前にはすげー我慢させたし、苦労させたけど…」
「無理はしてないよ。これまでもこれからも」
「ははっ、そうだよな…お前はそういうよな。でも、俺が我慢できない、もう…人の目とか気にしねぇで会いたいしデートしたいしイチャつきたいって思ってる」
「玲央…そんなこと、思ってたんだ」
「柄に合わないのは分かってんだけどさ…これが俺の本音だ。で、事務所にもずっと相談しててそれで許可が降りたから、言わせてもらう」
「…うん」
「俺と…結婚、してくれ。おんなじ家で寝て起きて、一緒に暮らしたい…って思ってる。お前の家族に、なりたい…どうだ?」
そう聞いてしまうのは俺の弱さからだったがそんな俺の言葉にこいつは一度俺の名前を呼ぶ。呼ばれて反応するとそんな俺に珍しくこいつからキスをされて俺の身体は硬直してしまう。
「!」
「…玲央、好きだよ」
「っ、」
「好きだから、大好きだから、だから、よろしくお願いしますっ」
そう言って満面な笑みを浮かべたまま抱きついてくれるこいつの行動に嬉しくなって、たまらなくなって、愛おしくなって、抱き返したままそのままベッドに俺はこいつを押し倒していた。
「よろしくってのはこっちのセリフだっつーの」
キスをするとその触れた唇の合間に息を漏らすこいつの声にそそられてしまう。
「ん、……は、……っ、」
衝動的に口付けをして、その行為が嬉しくてたまらない。
「あー…ほんと、幸せだ」
「うん、私も」
手を絡め、くすくすと笑いあう。
「…いいか?」
「いいよ」
恥ずかしがらずに受け入れられたことに喜びが増し、口付けを俺は更に深め、幸せすぎる二人の夜は過ぎていったーー。
-Fin-