涼しくなる私「そろそろ髪でも切ろうかな…」
「え”っ”」
ひとりごとのように雑誌をめくりながら呟いた言葉。そんな私の言葉にこの世の終わりのような声を数馬は上げたかと思うと気が付くと私のすぐ近くに来ていて驚きのあまり私は息を吞み込んでしまう。
「ほんとか!?」
「……え?」
「だ、だから髪を切るって……」
「ああ、うん。最近ずっと長かったし気分転換にいいかなって…数馬は嫌なの?」
「い、嫌っつうか……いや、俺は嫌なのかも……」
ぶうつぶつと呟いて数馬は一つの結論を出す。
「自分勝手で悪いって思うんだけどさ…俺、ちゆきの髪をいじってるとき好きなんだよな。インスピレーションが湧くってのもそうだけど…俺だけが許された特権って感じがして」
困ったように、恥ずかしそうに数馬は笑って言う。
「…短い私は嫌い?」
「好きだ!」
間髪入れず答える数馬に思わず笑ってしまう。
「わ、笑うなよ!好きなのはマジなんだし!」
「うん、知ってるし分かってるよ」
そして笑って数馬の手を握る。
「ね、数馬。数馬に切ってほしいな私の髪」
「……ちゆきってこういうとき甘え上手だよな」
「数馬にだけだよ」
「…そりゃ光栄」
「甘えたな私は嫌い?」
「好きだよ!」
「ふふ!」
「はぁ~~……惚れた弱みってこういうことだよな」
そんなことを言う数馬を見て思う。数馬が私の髪を触るのを好きなように私だって触られたりするのが好きなのだ。私よりも大事にしてくれるのが嬉しくなって、長くなった髪を見て口実を作ってしまった。
髪を切ってもらった一緒にデートに出かけよう。涼しくなった気持ちで数馬とするデートはきっと楽しいに違いないから――。
-Fin-