甘え、頼ること「む…?」
草薙の隣に座り本を読んでいると肩に少しの重みを感じその方向へと視線を移すと草薙の頭が俺の肩にもたれかかっていた。
「草薙…」
最近ロキやバルドルに振り回されたり板挟みに合って大変そうだった様子を思い出す。きっと疲れていたのだろう。それならば俺たちのために走り回ってばかりいる草薙のために何にでもなろう、と視線をまた本に移す。
そうして、本を読み終え閉じた時だった。空は漆黒に染まり俺の肩にもたれかかっていた草薙がみじろぎをした。
「ん…?」
「起きたか、草薙」
「…?………えっ?!と、トールさんっ…!?」
「ああ、俺…だが…」
「えっ、あの…わ、わた、私…どうしてその…」
「疲れていたんだろう、眠ってしまって俺の肩にもたれかかってきたんだ」
「そ、それは大変申し訳なく…」
「そんなに謝らなくていい。疲れていたんだろう、いつも俺の連れがすまない」
「い、いえ…これも皆さんのためですから…」
そう言って笑みを浮かべる草薙の顔には少なからず疲労が見られる。少しマシになったとはいえまだ目元には隈が残っていた。
「……」
「え!?」
そして俺は無意識のうちに隈を指でなぞってしまっていたらしく、草薙が驚いた声を上げた。
「ああ…悪い。…草薙」
「は、はい!?」
「…俺でよければ相談相手でも…何か困ったことがあった時も力になろう。…それが連れが迷惑をかけていることへのせめてもの罪滅ぼしだ」
「そんな…」
「…お前は人に甘えることを知るべきだ。勿論それは神相手にだってしていいことだ。他は知らないが…俺は頼ってくれる方が嬉しい」
「…ありがとうございます、トールさん」
「…ああ。部屋まで送ろう」
「ありがとうございます」
そうして二人並んで草薙の寮の部屋へと向かう。俺としては神に囲まれ大変な計画に巻き込まれたか弱い人間である草薙を気に掛けただけだった行動だったが温かい何かが俺の中に生まれる。その理由は今の俺には知る由もないことだった。
-Fin-