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    らんじゅ

    すぎさく運命論者兼杉下に囚われる者
    色々捏造をする
    とみとが、うめ、らぎ辺りも描くかも
    パスは大体「」の中の英訳です

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    らんじゅ

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    ㌦軸🌲🌲🌲🌲
    はらぺこで不機嫌なミヤビがミヤコの指をしゃぶる話

    #三連の地獄
    #エルミヤミヤ

    はらぺこ怪獣ミヤビ ミヤビは酷く苛立っていた。理由は簡単、はらぺこだからだ。しかしミヤビの現在地は渋滞の最中のロケバスである。普段から大量に食べて目一杯動くミヤビのためにスイートハニーエンジェルことハルカがタッパーいっぱいにおやつを持たせてくれているのだが、それを消費しきってなお抜けられない渋滞に捕まっていたのだ。傍らにはウトウトと船を漕ぐシア。通路を挟んだ反対には何やらSNSのチェックをしているミヤコ、その前にはもはや彫刻ではないかと見紛うエルケが美しく静かに寝息を立てていた。

    「せんぱい……」
    「ん〜?」
    「そっち行っていいっすか」
    「いいよ、どした?」
    「口寂しいので指貸してください」
    「指」

     ミヤコの頭上ではてなが弾ける。『口寂しいから指を貸せ』の意味がいまいちわからないうちにミヤビはそそくさとミヤコの隣の席に移動した。

    「指……食べるの……?」
    「食べたら無くなっちゃうでしょ……」
    「そっか……じゃ、どうするの……?」
    「猫のミヤビは指しゃぶるんでしょ……」

     のっしりとミヤコに寄りかかると、ミヤビはぱくりとミヤコの指を口の中に入れる。にゅるりと舌で指を撫で、尖り気味の犬歯でやんわりと噛んだ。ミヤコが息を呑めば歯を離しじゅぅ……と吸いついて、また甘噛みを始める。ほんの僅か、ミヤコの背に快感が爪を立てた。

    「……みやび……それえっちな気分になっちゃうよ……」
    「ならないでください」
    「だ、だって……」
    「ならないで」

     ムスリと顔を顰めるミヤビはミヤコを咎めるように少しばかり強めに指を吸う。舐めて、噛んで、吸って、ミヤコの指をふやかし反対の手はにぎにぎと指を絡めて握り込んだ。すっかり子猫のベッドになってしまったミヤコは眉を目一杯下げて微弱な刺激に困り果てている。

    「みやびぃ……」
    「〜」
    「ねぇ……流石に寝てるシアの横ではさぁ……コンプラ的にさぁ……」
    「先輩が気持ちくならなければいいでしょ!」
    「じゃあ指離して?」
    「や!気持ちくならないで!」
    「どうしろっちゅーねん」

     空腹を紛らわすために意地でも口に何かを含んでいたいミヤビと気持ちいいことは大好きであるがコンプラ的に今絶対流されるわけにはいかないミヤコとのささやかな攻防が繰り広げられていた。ミヤコが指を引こうとすれば歯を当ててキリ、と力を込め、握られている方の親指ですりすりとミヤビの肌を摩ってやればとろりとミヤビの目が溶ける。ちぱちぱと微かな水音と衣擦れの中で途方に暮れるミヤコの耳にクスリと笑う吐息が入ってきた。

    「先輩?笑ってないで加勢してください?」
    「ふふ、ごめんごめん……可愛くてつい」

     前の席で眠っていたエルケはのそりと身体ごと後ろを振り返り、手を伸ばして不機嫌な子猫の眉間に寄ったシワを伸ばす。ミヤビはパシリとエルケの手を取ると、ミヤコの手と同じようにしっかりと握った。

    「おやおや、赤ちゃんになっちゃった」
    「も〜ハルカくんにおやつたっぷり持たせてもらったんじゃないの〜?」
    「〜!」
    「食べちゃったんだね……あ、そうだ、いいのあるよミヤビ」

     エルケはするりとミヤビの手から逃れると何やら鞄をゴソゴソ探り、手のひらに収まるくらいの何かをにこにこと差し出す。

    「はい、おしゃぶり」

     正確にはおしゃぶりの形をしたキャンディである。口に入れるところがキャンディになっているという面白お菓子であった。ミヤビがおしゃぶりに夢中になっているうちにソッと指を引いてみれば簡単にミヤコは解放されホッと息をつく。

    「え〜やば、これ買う先輩想像できな〜い!どんな顔して買ったんすか」
    「え?通販だからこの顔」
    「ヤバ!真顔!」
    「なんか面白そうだったから……哺乳瓶もあるよ、ミヤコも食べな」
    「あざ〜す!ミヤビよかったね〜♡」

     ぢゅくぢゅくと相変わらずミヤコに寄りかかってキャンディを舐めるミヤビはほんの少しだけ機嫌が治ったように思える。ミヤコはニマッと笑ってスマホを取り出してぱちん、と片目を瞑り、未だ不機嫌のままおしゃぶりを咥えるミヤビと写真を撮った。ミヤビはイヤイヤとむずがり顔を背けるが背けた先にもう一つスマホが構えられており、無情にも再び車内にシャッター音が響く。

    「ンン……?(シア……?)」
    「……起きたら愛らしすぎる光景が広がっていたので……これは撮らねばならぬと……思いまして……」
    「アッハ!シアに見られちゃ永久保存だねこりゃ!」
    「シアもおしゃぶりどうぞ〜」
    「あ、あざす……まだ渋滞してんすね……どんくらい寝てたんだろ……」

     キャンディを受け取りあふ、と欠伸をひとつ落としてシアは幾度か瞬きをする。ミヤコは斜め上を見てしばし考えを巡らせるとぽそりと呟いた。

    「この時間勿体なさすぎる……動画でも撮ります?カメラ積んでますし長尺撮れますよ」
    「ン〜そうだね、いつもショートだけど……ネタは?」
    「これっす」

     大真面目に掲げるはおしゃぶり。シアはハッとしてパッケージを開けて口に含んだ。後日公開されたEMMCがおしゃぶりをしながらお菓子やおもちゃの雑談をする動画はどえらい再生数を叩き出し、各々のSNSにもおしゃぶりをした写真が投稿されて大バズした。


    はらぺこ怪獣ミヤビ 了
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