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    プ、12歳まで孤児で路上生活してたなら、食べ物を大事にしそうだよね、という話(両片思いだけどほぼミ→プなミラプト)

    #ミラプト

    つまり、満場一致ってこと?誰にでもミスはある。それは完璧なレジェンド、ミラージュことエリオット・ウィットとて例外ではない。例えば朝食のサニーサイドアップを焦がしてしまうとか。歯磨き粉と洗顔フォームを間違えて口に含んでしまうとか。ドロップシップの搭乗時間を勘違いして危うく遅刻しかけてしまうとか。
    「君が寝坊なんて珍しいね。明日は雨でも降るのかな?」
    「雨どころか槍が降るかも知れないよ〜早起きのウィットが寝てて、いつも寝坊するアタシが起きてるんだから〜!」
    だから寝坊じゃないんだって!そう反論する気さえ起きず、悪意のないパスファインダーと悪意しかないランパートに迎えられてミラージュは出航時間ギリギリにドロップシップに駆け込んだ。個人スペースのソファにどっかりと腰を下ろせば、同僚たちの物珍しげな視線がチクチクと肌に刺さる。注目されるのは好きだが、こういう注目のされ方は好きじゃない。鬱陶しいその感覚に無視を決め込んで、手にしていた大手コンビニエンスストアのレジ袋の中からサンドイッチを取り出してため息をひとつ。透明なフィルムに覆われたそれは、いつもなら買わないものだ。具も少なく生地もパサついたコンビニエンスストアのサンドイッチなど、料理好きのミラージュの口に合うはずがない。それでも朝食はしっかり摂らなければならないというポリシーが、家で朝食を炭に変えてしまったミラージュに常ならぬ選択をさせたのだった。
    「重役出勤とはいいご身分だな。」
    今日の一戦目はデュオだ。味方はラップトップを小脇に抱えてやってきた憎たらしいのに憎めないこの男。憎めないどころか、最近では彼に対する好意を明確に自覚してしまっている。そんなまさか、俺はヘテロのはずだろ?出会い系サイトにだって恋愛対象は女性だって書いたじゃないか。じゃあなんでアイツの一挙一動で心がこんなにお祭り騒ぎになるんだ?今だってアイツに声をかけられた途端この有り様だ。わかってんだろ兄弟!
    そんなデコイたちの脳内会議が事あるごとにはじまって、朝からミスの連続だ。しかしその原因であるクリプトに、お前のせいだぞ、なんて面と向かって言えるはずもなく。これが重役の朝飯に見えるか?とおどけてミラージュは封を切ったサンドイッチを一口食んだ。やはり不味くもないが美味くもない。口の中の水分が持っていかれる感覚にミラージュが眉を寄せていると、クリプトは隣に腰を下ろすなり、ずいとラップトップの画面を見せてくる。パーソナルスペースがストームポイントくらい広大な彼にしては珍しい。いや、それは流石に言い過ぎか。
    「今日の作戦だ。食べながらでいい。頭に叩き込んでおけ。」
    今シーズンからローテーションに復帰したオリンパスのマップと新たなランドマーク、降下場所による勝率、リングの縮小パターン等々。画面には様々なデータと今日の降下予定ポイントおよび移動ルートが示されている。
    「さすが準備万端だな。」
    「誰かさんが遅刻してくれたからな。一人で落ち着いて作戦を練ることができた。感謝しておかないと。」
    ぐ、と乾いたパンが喉に詰まる。慌ててレジ袋からミネラルウォーターのペットボトルを引っ張り出して呷る様を、隣の男は悪辣な笑みを浮かべて見ているに違いない。誰のせいでこんなことになったと思って、とミラージュは口を開きかけてギョッとした。その時になってやっと、クリプトが目の下に立派な隈をこさえていることに気が付いたのだ。
    「…お前、これ、寝ないで考えたのか?」
    「いや、これはついでだ。新しく追加されたフェーズドライバーについて調べていたんだ。今のところアイテムローラーの抽選に干渉することは難しそうだが、ハッキングで起動音を消すことはできるかも知れない。あの爆音がなくなれば敵に見つかるリスクが抑えられるだろう?安全且つ効率的にハイティアアイテムを集めることができるわけだ。」
    「つまり寝てないってことだな。」
    いつもより饒舌で心なしかテンションが高いのは徹夜明けだからか。得意気に鼻を鳴らすクリプトに納得すると共にため息が溢れた。この男を筆頭に、レジェンドの中にはやれ調べものだやれ実験だと、何かにつけて徹夜をする悪癖を持つ者が少なからずいる。自分も技術者の端くれではあるものの、彼らを徹夜に走らせる異常な集中力というか執念のようなものは、やはり天才のそれなのだと感じざるを得ない。コイツの場合、性格的な問題の気もするが。
    「そんなんで今日の試合大丈夫かよ?」
    「一日くらいどうということはない。」
    「朝飯は?食べたのか?」
    「朝は食べない主義だ。」
    これだから頑固で不健康なおっさんは。唯一の味方のあまりのコンディションに危機感を覚えて、ガサガサとレジ袋を漁ってカップヨーグルトと使い捨てのスプーンを押し付ければ、クリプトはその目をぱちくりと瞬かせる。クソ、可愛い顔しやがって。隈がなかったら完璧だった。
    「それ、やるから食え。ヨーグルトくらいなら食えるだろ?本当は俺のデザートにするつもりだったんだが仕方ない、寝不足な上に栄養不足で頭が回らないおっさんがいちゃ困るからな!」
    一瞬ムッと眉間に皺を寄せてカップヨーグルトを突き返そうとしたクリプトだったが、そのパッケージを見て手が止まる。かわいいかわいいネッシーの絵柄が入ったそれを、お前が突き返せるわけがないことはお見通しだ。
    「………いただこう。」
    渋々カップヨーグルトを受け取ったクリプトに満足して、ミラージュは食事を再開する。蓋にネッシーの絵柄の入ったヨーグルトなんて、大の大人が買うには少々気恥ずかしいものを手に取ったのは他でもない、彼のことが脳裏を過ぎったからだ。気付いたら会計を済ませてしまっていたそれが役に立ってよかった。そんなミラージュの安堵を露知らず、クリプトはペリペリと慎重にヨーグルトの蓋を剥がしていく。なんてことはない行為のはずなのに、隣の男はいつになく神妙な面持ちで、ちょっと面白い。そんなにネッシーの絵柄が傷付くのが嫌か。澄ました顔で人を小馬鹿にする男の、子供っぽくて微笑ましい一面。ずっと見ていたいくらいだったが、蓋をカップから剥がし切る時に勢い余ってクリプトの口元にヨーグルトが飛んだところで慌てて目を逸らした。今のはよくない。邪な熱を持った頬に残りのサンドイッチを無理矢理押し込んで、誤魔化すようにモシャモシャと咀嚼に集中する。こういうのなんて言うんだっけな…そうだ、煩悩爆散!
    ミラージュが煩悩と戦う一方、クリプトはティッシュで口元を拭う素振りを見せた後、おもむろに外した蓋の裏に付着しているヨーグルトをスプーンで刮ぎはじめた。蓋に対して角度を付けてスプーンを滑らせながら、カップの中に白を落としていくこと一回、二回、三回。見慣れないその作業はミラージュの視線を奪うのに十分だった。
    「…なんだ、文句でもあるのか。」
    じとりと睨まれてミラージュはハッとする。いつのまにかガッツリ見てしまっていたようだ。
    「い、いや!別に!ただ、意外だっただけで…」
    「意地汚くて悪かったな。」
    「そういう意味じゃ…」
    しどろもどろになるミラージュと少しきまりが悪そうに目を伏せたクリプト。微妙な沈黙が流れる中、クリプトは綺麗になった蓋をローテーブルに裏返して置き、静かにヨーグルトを食べはじめた。カップの中の白を悉く浚っていくその食べ方を見て、そういえばと思い出す。意外なんかじゃない。パラダイスラウンジで食事をした彼の皿はいつだって、ナッツの一欠片も残さず綺麗に浚えられて戻ってきたじゃないか。料理人冥利に尽きるその皿を見て、天才ハッカー様の人間らしい一面にほっこりすると同時に、純粋に好ましいと思ったのだ。不遜に見えて義理堅く、律儀なこの男が好ましいと。今は何を言っても墓穴になってしまいそうな気がするけれど、それだけは伝えたい。
    「お、俺は…好きだぜ!お前のそういうとこ!」
    意を決したようなミラージュの声に、スプーンを動かしていたクリプトの手が止まる。円な瞳をさらに丸くしてこちらを見るその表情は、まるで不思議なものでも見るかのようだ。あれ、俺、何か変なこと言った?もしかして噛んだ?それともシップの飛行音で聞こえなかったか?だんだんおろおろとしはじめるミラージュの目の前でふ、と花が綻んだ。
    「意地汚いところが好きだなんて、変わってるな。」
    くすくすと。こんなに柔らかく笑う彼を、初めて見た気がする。思わぬ花笑みに心を奪われて、キュッと胸が窄まるような心地がした。目の前の男から目が離せなくなって、世界から音が消える。あれだけうるさかった頭の中のデコイたちも、いつのまにかどこかに行ってしまったようだ。つまり、満場一致ってこと?
    「知ってるか?食べ物を大事にするヤツに悪いヤツはいない、ウィット家の家訓だ。つまりお前も…それなりにいいヤツってことさ!」
    「それはどうも。俺の家の家訓もそんな感じだった。」
    「奇遇だな!この奇跡に乾杯したいくらいだ。ということで今度、家に来ないか?店で出す試作品とかさ、食べてほしくて。」
    「俺に食レポを期待するのか?だが、いいだろう。それで今日の寝坊は忘れてやる。」
    「だから寝坊じゃないんだって!」
    ああもう認めよう、この男のことが好きなんだと。自分の気持ちに素直になった途端、あっという間にプライベートでの約束を取り付けていて我ながらびっくりする。クリプトが徹夜明けの深夜テンションのまま深く考えず了承してくれたのも僥倖としか言いようがない。
    惚れた方が負けだなんて誰が決めた。最後に惚れさせた方が勝ちなんだよ。首を洗って待ってなクリプちゃん。
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